在庫統計(10月11日発表分)

 昨日の米在庫統計はまちまちの内容であった。但し、石油製品の需要は総じて堅調であり、石油製品在庫の水準が低い中やはりアップサイドのリスクが残存していることを確認した統計であった、といえる。ディスティレートはULSD・ディーゼルの需要が堅調である。このことは「気温に関係なく消費されるディスティレートの需要が堅調である」事を示しており、ディスティレート全体の消費量は冬場の気温に関わらず大きく減少することはなかろう。引き続きクラックスプレッド水準が低いため生産は不安定に推移し、在庫の絶対水準やFSCが低い以上、ディスティレートは堅調な推移が予想される。では個別に少し詳しく見てみよう。

 原油は生産が前週比で殆ど変わらない中、輸入が減少したこと、稼働率が回復したことから、例年の動きと異なり在庫の減少となった。殆ど毎週そういい続けているが、原油在庫は輸入量の増減と稼働率の変動に振らされ、不安定な状況が継続している。生産は5,059KBD(▲5KBD)と小幅減少、輸入はP1,P4以外は大幅に減少し、合計で9,869KBD(前週比▲384KBD)と大幅に減少したことから総供給量は14,928KBD(前週比▲389KBD)と2週連続で減少となった。稼働率は前週比変わらずの予想であったが、87.8%と前週比+0.4%なり、電力障害等で稼働率が低下しているP5やP4を除いて稼働率は過去5年平均レベルを回復、例年よりも早いタイミングで稼働率が上昇し始めている。この結果、在庫は前週比▲1.7MBの320.1MBとなった。FSCは在庫減少・稼働率改善により20.9日と先週から0.2日分も低下した。クラックマージンが縮小しているものの、冬場を控えたディスティレート在庫積み増しをせねばならず、稼働率が改善したものと思われるが米経済の原則の可能性が高まっていること、暖冬予報であることから、さらに稼働率が上昇していくかどうかは微妙である。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18,592KBD(+199BD)と2週連続で増加。

 ガソリンは予想に反して大幅な在庫増加となった。生産は稼働率の上昇、得率の上昇(+1.3%)によって8,932KBD(前週比+234KBD、24KBD、+1.6MBの在庫増加要因)と大幅に増加、輸入も1,323KBD(前週比+169KBD)と増加したことから、総供給が10,255KBD(前週比+403KBD、前週比で+2.8MBの在庫増加要因)となった。需要は株価の低迷等の影響もあって例年をし上回るペースで減少(単週ベースで9,200KBD(過去5年の最高水準9,081KBD)、4週平均ベースで9,201KBD(過去5年の最高水準9,241KBD)、4週平均ベースの需要減少は前週比▲0.5%と、例年の▲0.1%を上回る。+0.3MBの在庫の増加要因)であったことから、予想に反し大幅な在庫増加となった。やはり例年よりも早いタイミングでの稼働率回復の影響が大きかったようだ。FSCは21.0日と先週から0.3日分増加したが、引き続き過去5年の最低水準21.7日に満たない。在庫の絶対水準はようやく過去5年の最低水準程度まで回復し、需要が例年を上回るペースで減少しているものの、FSCベースでは明らかに在庫の水準は低い。ハリケーンシーズンが11月末〜12月までずれ込む可能性が高い中、いくら去年もこの程度の在庫水準でピークシーズンを乗り切っているといってもさすがに在庫は少なすぎであろう。ガソリン価格が原油価格の高騰によって高止まっているため、悪戯に在庫水準を例年よりも高くするわけに行かないこと、ウィンターグレードへの移行が控えていることが在庫水準を低水準に据え置かせる要因となっており、決して安泰な在庫水準であるとはいえない。よって引き続き、ガソリンの中期的な見通しはブル、ということにならざるを得ない。

 ディスティレート在庫は略予想通り、小幅な在庫減少となった。稼働率・得率とも改善したことから生産が前週比+97KBDの4,171KBDとなったこと、輸入が主要消費地であるP1でヒーティングオイルを中心に増加したことから385KBD(前週比+193KBD)となったことから総供給が4,556KBD(前週比+290KBD)と増加したが、需要が例年と異なり大幅に増加(単週ベース4,467KBD(前週比+192KBD)、4週平均ベース4,210KBD(前週比+100KBD))したことから、結局、▲0.6MBと先週に続き在庫減少となった。在庫減少の内訳を見てみると、ULSD、ディーゼルオイルの在庫減少が顕著(おのおの▲0.7MB、▲0.9MB)であり、暖房需要というよりは輸送需要が堅調であることがうかがわれた。通常は冬場を控えて10月末ごろまで在庫積み増しが発生し、その後グレード変更を伴いながら在庫水準を削る展開になるのだが、今年もその例年通りのパターンとなっている。しかしながら需要が過去5年の最高水準を上回っている一方で在庫水準は略例年並の水準であり、FSCは32.1日(前週比▲0.9日)と過去5年の最低水準である32.3日をとうとう下回ってしまった。カーブがバックであることも在庫積み増しを阻害しているようだ。昨年は記録的な暖冬であったが、今のところ今年も暖冬の予報であり、このままで行けば一応冬場は乗り切れる、という結論に達するのだがやはり気温は水物。有事に対するバッファが少ない状態が続いていることは注意せねばならず、やはりどちらかといえばアップサイドのリスクを抱えていると言えよう。