統計速報(10月17日発表分)

 昨日の米在庫統計はベアな内容であった。但し、石油製品在庫の水準が低く、稼働率の回復も緩慢であるなど、原油・石油製品を巡る需給環境に大きな変化はなく引き続き需給はタイトな状態が継続していることに大きな変化がなかったことが確認されており、大きく売り込むような統計ではなかったが、市場予想と略正反対の内容であったこと、原油・石油製品の絶対水準が高いことからファーストリアクション的には売りから入りやすい統計であったといえる。では個別に少し詳しく見てみよう。

 原油は生産が小幅増加、輸入が大幅に増加する中、製油所の稼働率が低下したことから略市場予想どおりの在庫増加となった。生産は5,102KBD(+43KBD)と増加、輸入はP4以外では先週と打って変わって大幅に増加し、合計で10,408KBD(前週比+539KBD)と大幅に増加したことから総供給量は15,510KBD(前週比+582KBD)と3週間ぶりに増加に転じた。稼働率は電力障害の影響から立ち直っていないP5の低下が顕著であり、P4を除いては殆どの地区で稼働率を引き下げる結果となった。但し石油製品在庫水準が例年よりも低いこともあり、冬場への突入を控えて比較的早いタイミングで稼働率が上昇して始めている。何回か指摘しているが、原油価格の上昇に伴うクラックマージンの縮小は、ウィンたーグレードへの変更の時期に差し掛かっていることもありやや横に置かれたとの印象である。この結果、在庫は前週比+1.8MBの321.9MBとなった。FSCは在庫増加・稼働率低下により21.1日と先週から0.3日分上昇した。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18,417KBD(▲175BD)と3週ぶりに減少に転じている。

 ガソリンは予想を上回る大幅な在庫増加となった。生産は稼働率の低下、得率の低下(▲0.1%)の影響で、8,864KBD(前週比▲68KBD、▲0.5MBの在庫減少要因)と大幅に増加、輸入も1,093KBD(前週比▲230KBD、▲1.6MBの在庫減少要因)と大幅に減少したことから、総供給が9,957KBD(前週比▲298KBD、前週比で▲2.1MBの在庫減少要因)となった。需要はサブプライムローン問題の影響等もあるのだろう、例年は緩やかに需要が増加するタイミングでもあるが略前週比、横ばいの結果となった。(単週ベースで9,253KBD(過去5年の最高水準9,242KBD)、4週平均ベースで9,202KBD(過去5年の最高水準9,210KBD)、4週平均ベースの需要増加は前週比変わらずと、例年の+0.1%をやや下回る。在庫の増減には寄与しない)であったが、結局在庫は195.8MB(前週比+2.8MB)と、2週連続の大幅な在庫増加となった。統計の内訳的には在庫が減少していないとおかしいのだが、何かしら統計数値の集計に齟齬があったものと考えられる。いずれにせよウィンターグレードへの変更が進捗し、在庫が増加しているものと見られる。FSCは21.3日と先週から0.3日分増加したが、引き続き過去5年の最低水準22.0日に満たない状態が続いている。少なくともFSCベースで過去5年水準を回復しないと有事へのバッファが少なく、供給途絶時のアップサイドのリスクが常に付きまとうことになる。ハリケーンシーズンが11月末〜12月初までずれ込む可能性が高い中、いくら去年もこの程度の在庫水準でピークシーズンを乗り切っているといってもさすがに在庫は少なすぎであろう。ガソリン価格が原油価格の高騰によって高止まっているため、悪戯に在庫水準を例年よりも高くするわけに行かないことが在庫水準を低水準に据え置かせる要因となっており、決して安泰な在庫水準であるとはいえない。よって引き続き、ガソリンの中期的にブルな見通しに変更する必要はないと考える。

 ディスティレート在庫は予想と裏腹に、比較的大幅に在庫増加となった。内訳的には冬場を控えたヒーティングオイル在庫の積み増しの影響が大きい。稼働率の低下の一方、得率が0.2ポイント改善したことから生産が4,172KBD(前週比+1KBD、在庫の増減要因とはならず)となったこと、輸入が略全地区で前週比減少したことから302KBD(前週比▲83KBD、▲0.6MBの在庫減少要因)となったことから総供給が4,474KBD(前週比▲82KBD、前週比▲0.6MBの在庫減少要因)となったが、直近需要が例年のペースを下回る増加に留まったことから(単週ベースでは大幅な減少4,163KBD(前週比▲304KBD)、4週平均ベース4,243KBD(前週比+33KBD))したこともあり、先週の在庫減少から転じて+1.0MBの在庫増加となった。但しガソリン同様、やや統計の集計に齟齬があったやに感じる。在庫増加の内訳を見てみると、ヒーティングオイルの増加が顕著であり、在庫積み増しが本格化していることが伺える。但し、現在のヒーティングオイル在庫の水準は過去5年の最低レベルである51,225KBに満たない。ULSDの需要は堅調であると見られ、今週も先週に続いて在庫が▲0.4MBと減少した。一方でディーゼルオイルは前週比+0.2MBと小幅な増加。生産輸入ともに減少している中での在庫増加であり、若干需要が減少していると見られる。通常は冬場を控えて10月末ごろまで在庫積み増しが発生し、その後グレード変更を伴いながら在庫水準を削る展開になるのだが、今年もその例年通りのパターンとなっている。しかしながら需要が過去5年の最高水準を上回っている一方で在庫水準は略例年並の水準であり、ヒーティングオイルに限って言えば例年よりも在庫が少ない。また、FSCは32.1日(前週比変わらず)と過去5年の最低水準である31.7日は上回っているものの、在庫水準の過不足を判断する時の目処となる過去5年平均レベル(33.8日)を回復するには至っていない。昨年は記録的な暖冬であったが、今年は一転ラニーニャの影響等で厳冬が予想されており、有事に対するバッファが少ない状態が続いていることは注意せねばならず、依然としてアップサイドのリスクを抱えていると言えよう。