2007年10月31日発表分

 昨日の米在庫統計は原油ブル・製品ベアな内容であった。原油は輸入の大きな振れと、稼動率が不安定なことが在庫動向に大きな影響を与えている。これに加えて新たにコメントすることは、クッシング在庫が大幅に減少していることだ。石油製品に関しても、サブプライム問題の影響が出たのか、例年よりも特に輸送関連油の需要動向が不冴えであった。個別に少し詳しく見てみたい。
 原油は生産が殆ど変わらず、輸入が大幅に増加、製油所の稼働率も低下したことから、先週よりは減少量が減ったものの引き続き▲3.9MBと市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,114KBD(▲8KBD)と小幅減少、輸入は稼働率の回復したP5での増加が顕著であり全体で9,381KBD(前週比+278KBD)と大幅に増加したことから総供給量は14,495KBD(前週比+270KBD)と先週は減少したものの再び増加に転じた。稼働率はP2,P3以外は全て低下しており、クラックマージンの縮小に伴い、稼働率の上昇がままなっていないことが浮き彫りとなった。例年、この時期は稼働率が回復する傾向にあるにも関わらず予想外の稼動低下となった。この時期、ウィンターグレードへの変更が進む時期なのであるが、思うように生産が進んでいないようである。この結果、在庫は前週比▲3.9MBの312.68MBとなった。FSCは在庫減少はあったものの、稼動率の低下の影響により20.8日と先週と変わらずであった。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は15,050KBD(▲257BD)と3週連続で大幅に減少している。このことは期近のカーブのスティープ化を助長するため、直近限月価格の上昇要因になりえよう。

 ガソリンは予想に反し、大幅な在庫増加となった。生産は稼働率の低下はあったが、得率の小幅な改善によって8,917KBD(前週比▲81KBD、▲0.6MBの在庫減少要因)となった。輸入は1,238KBD(前週比+400KBD、+2.1MBの在庫増加要因)と大幅に増加したことから、総供給が10,155KBD(前週比+319KBD、前週比で+2.2MBの在庫増加要因)となった。需要は徐々にであるがサブプライムローン問題の影響が出てきているのか、例年を下回るペースでの在庫減少となった。先週のコラムで指摘したとおり、先々週末に株価が大きく下落した影響をうけて株価が不安定に推移したことから、直近ベースの需要では単週ベースで9,355KBD(前週比▲18KBD、過去5年の最高水準9,511KBD)と減少に転じている(尚すでにコメントしているが、4週平均ベースでは9,295KBD(過去5年の最高水準9,283KBD)、需要増加は前週比+0.6%と、例年の+1.0%を下回る。+0.4MBの在庫増加要因)この結果、在庫は195.1MB(前週比+1.3MB)と在庫増加に転じた。ウィンターグレードへの変更が進捗し、徐々に在庫が増加していると考えられるが在庫水準は引き続き過去5年の最低水準(194.3MB)近辺で推移している。FSCは21.0日と先週と変わらず、引き続き過去5年の最低水準21.8日に満たない状態が続いている。FSCベースで少なくとも過去5年水準(22.1日)を回復しないと有事へのバッファがないことを意味し、気温低下やハリケーン直撃といった不慮の出来事に対応できない。但し現時点ではウィンターグレードへの変更が進む時期であり(規制のあるP1,P5では在庫が増加に転じている)。但し今回の在庫増加はむしろ輸入の増加の寄与度が大きいといえ、引き続き原油価格高騰を受けたクラックマージンの縮小に伴い稼働率の回復が遅れていることから輸入だのみの不安定な状態が続くことになろう。よって引き続き、ガソリン価格は高止まりすることとなろう。

 ディスティレート在庫も予想に反し増加した。内訳的には冬場を控えたヒーティングオイル在庫の積み増し継続する中、先週大幅に減少したULSDの在庫が増加に転じた影響が大きい。稼働率は低下したものの、得率が1.4ポイント改善したことから生産が4,115KBD(前週比+169KBD、+1.2MBの在庫増加要因)となったこと、輸入がP1で大幅に増加したことから325KBD(前週比+90KBD、+0.6MBの在庫増加要因)となったことから総供給が4,440KBD(前週比+259KBD、前週比+1.8MBの在庫増加要因)となったうえ、直近需要が例年のペースと異なり減少に転じたことから(単週ベース4,156KBD(前週比▲120KBD)、4週平均ベース4,266KBD(前週比▲30KBD)、▲0.2MBの在庫増加要因。尚、需要増加ペースは▲0.7%、例年は+1.8%)、先週とうってかわって+0.8MBの在庫増加となった。在庫増加の内訳を見てみると、冬場を控えてヒーティングオイルの在庫が増える一方(但し47,373KBと、過去5年の最低水準である47,493KBを引き続き下回っている)、ULSD在庫も増加(+336KB)したことが影響した。生産・輸入ともULSDは増加したもの、それを上回る在庫増加となっており、ガソリン需要の減少と共にULSDの需要減少していることは、米国内の輸送需要の減少が起きている可能性があることを示唆している。今週の統計だけで結論は出せないが、輸送需要の動向には注意する必要があろうか。結果、在庫は135.3MB(前週比+0.8MB)、FSCは31.7日(前週比+0.4日)と改善しているが引き続き、過去5年の最低水準である29.3日は上回っているものの、在庫水準の過不足を判断する時の目処となる過去5年平均レベル(32.3日)を引き続き下回っている。今のところ暖冬予報であることや、米国経済の減速懸念からこの水準でも昨年のように大丈夫なのかも知れないが、ラニーニャの影響等で厳冬となる可能性もあり、有事に対するバッファが少ない状態が続いていることは変わらない。需要の動向にもよるが、ディスティレート価格引き続き高止まる可能性が高いことを示してる。