統計速報(2007年11月7日発表分)

昨日の米在庫統計は原油・石油製品ともマイルドにベアな内容であった。原油は輸入の大きな振れと、稼動率が不安定なことが在庫動向に大きな影響を与えている。石油製品に関しても、サブプライム問題の影響が出たのか、例年よりも特に輸送関連油の需要動向が不冴えであった。個別に少し詳しく見てみたい。

 原油は生産が殆ど変わらず、輸入が2週連続で大幅に増加、製油所の稼働率が先週と同様低水準であったことからから、引き続き▲0.8MBと在庫減少となった。但し市場予想を下回る在庫減少であった。生産は5,126KBD(+12KBD)と略変わらず、輸入はP4,P5が減少したものの、P1-P3で増加し全体で9,656KBD(前週比+275KBD)と大幅に増加したことから総供給量は14,782KBD(前週比+287KBD)と2週連続の増加となった。目立った生産の増加がない中、引き続き輸入に頼らざるを得ない従来の仕組みが変わらない以上、輸入状況が米国原油在庫の増減に大きく寄与する状況が続くことになる。稼働率はP1以外は全て改善している。クラックマージンの縮小に伴い、稼働率の上昇はままなっていない。例年であればこの時期稼働率は上昇しなければならないはずだ。11月入りしてウィンターグレードへの変更が進む時期であるが、原油価格自体が高いことや石油製品価格が原油価格についていっていないことが、リファイナリの生産活動に悪影響を与えているように見える。この結果、在庫は前週比▲0.8MBの311.86MBとなった。市場予想を下回る在庫減少であったが、「悪い意味で」市場予想を下回った。FSCは在庫減少の影響により20.7日と先週から0.1日悪化した。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は13,410KBD(▲1.64BD)と4週連続で大幅に減少している。P2,P3の製油所の稼働率が例年を上回る水準を維持していることによるものである。この地区の在庫減少は期近のカーブのスティープ化を助長するため、直近限月価格の上昇要因になりえよう。

 ガソリンは予想に反し、小幅な在庫減少となった。生産は稼働率が前週比変わらなかったものの、得率が悪化(▲0.2%の59.1%)したことから、8,893KBD(前週比▲24KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)と小幅減少となった。輸入もP1での輸入量が、例年の最高水準程度まで低下したことから1,131KBD(前週比▲107KBD、▲0.7MBの在庫減少要因)となり、総供給は10,024KBD(前週比▲131KBD、前週比▲0.9MBの在庫減少要因)となった。需要は徐々にであるがサブプライムローン問題の影響が出てきているのか、例年を下回るペースでの需要増加となった。株価動向が不安定で、消費活動に悪影響が徐々に出始めていると考えておいたほうが良いだろう。直近ベースの需要では単週ベースで9,367KBD(前週比+12KBD、過去5年の最高水準9,499KBD)、4週平均ベースでは9,337KBD(前週比+42KBD、過去5年の最高水準9,388KBD、▲0.3MBの在庫減少要因)、需要増加は前週比+0.4%と、例年の+0.6%を下回る。この結果、在庫は194.313MB(前週比▲0.8MB)と在庫減少となった。稼働率が回復せず、輸入も減少したP1での在庫減少が顕著(▲530KB)であり、同地区への大規模供給地区であるP3でも▲590KBとなっている。現在のこの在庫水準は引き続き過去5年の最低水準(192.146MB)近辺で推移している。FSCは20.8日と先週から0.2日悪化、引き続き過去5年の最低水準21.2日に満たない状態。FSCベースで少なくとも過去5年水準(21.8日)を回復しないと有事へのバッファがないことを意味し、気温低下やハリケーン直撃といった不慮の出来事に対応できない。足下のガソリン価格の高騰が、在庫の保有コストを増加させるため、11月・12月の決算時期を控え在庫の積み増しを消極的なものにしていることが浮き彫りとなった。引き続き最終需要動向をにらみながら慎重に輸入を調整する、といった消極的なオペレーションが続くことが予想され、ガソリン価格の下支え要因となろう。

 ディスティレート在庫は予想に反し、増加した。内訳的には冬場を控えたヒーティングオイル在庫の積み増しが継続する中、ULSDの在庫が2週連続で増加した影響が大きい。稼働率は低下したものの、得率が0.3%改善し27.7%となったことから生産が4,170KBD(前週比+55KBD、+0.4MBの在庫増加要因、過去5年の最高水準4,182KBD)となった一方、輸入が略全地区で減少したことから270KBD(前週比▲55KBD、▲0.4MBの在庫減少要因)となったことから総供給が4,440KBD(前週比変わらず、在庫増加要因とはならず)となったことから、4週平均需要が4,208KBD(前週比▲57KBD、+0.4MBの在庫増加要因。例年の需要増加率は+1.0%、今週は▲1.3%)と減少したことから、先週に続き+0.1MBの小幅な在庫増加となった。この時期の需要減少は例年では見られない。但し直近需要は例年通り増加している(単週ベース4,238KBD(前週比+82KBD))。在庫増加の内訳を見てみると、冬場を控えてヒーティングオイルの在庫が増える一方(但し48,013KBと、過去5年の最低水準である48,856KBを引き続き下回っている)、ULSD在庫も増加(+286KB)したことが影響した。ULSDは総供給量が+56KBDと増加したが需要がむしろ減少したと見られ、引き続き米国内の輸送需要の減少が起きている可能性があることを示唆している。今後も、輸送需要の動向には注意する必要があろう。結果、在庫は135.377MB(前週比+0.98MB)、FSCは32.2日(前週比+0.5日)と改善し、やっと過去5年の平均レベル31.5日はを回復した。これにより、ディスティレートティレートに関しては在庫の懸念がない水準まで回復したと考えられる。今のところ暖冬予報であることや、米国経済の減速懸念からこの水準でも昨年のように大丈夫なのかも知れないが、ラニーニャの影響等で厳冬となる可能性もあり、供給が輸入に頼らざるを得ない状況が続いていること、欧州地区の製油所の生産回復の遅れが指摘されていることを考えれば、ディスティレート価格引き続き高止まる可能性が高いことを示してる。