統計速報(2007年11月15日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア・ガソリンベア、ディスティレートブルの内容であった。原油は久し振りにP3を中心に稼働率が大幅に改善したことから、在庫大幅減となった。石油製品に関しても、サブプライム問題の影響が出たのか、例年よりも特に輸送関連油の需要動向(ガソリン)が不冴えであった。個別に少し詳しく見てみたい。
 原油は生産が略横ばいの中、輸入が増加製油所の稼働率は上昇したものの+2.8MBの大幅な在庫増加となった。ある意味良い形での在庫増加となった。生産は5,134KBD(+8KBD)と小幅増加。ハリケーン等の襲来が落ち着いたことから安定した生産が継続している。輸入は稼働率の回復したP3で大幅に増加、稼働率の低下したP1で減少となったが、全体ではプラスとなり10,487KBD(前週比+831KBD)と大幅に増加したことから総供給量は15,621KBD(前週比+839KBD, 5.8MBの在庫増加要因)となったが、稼働率が改善(+1.5%、▲1.8MBの在庫減少要因)したことから在庫は前週比+2.8MBの314.676MBとなった。P1の稼働率の回復が遅々として進んでいないが、クラックスプレッドの小幅改善といったプラス材料もあって規模の大きなP3の稼働率が大幅に上昇、過去5年の最高水準を上回る稼動状況となっている。FSCは在庫増加はあったものの、稼動率の上昇の影響により20.7日と先週から0.1日悪化している。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は13,421KBD(+11BD)と極めて小幅に増加している。足元のWTIカーブのディープなバックを形成する要因であることから注目しているが依然として在庫水準が低いことからこの状況は継続することとなろう。"

 ガソリンは予想に反し小幅な在庫増加となった。生産は稼働率の上昇はあったが、得率が低下(▲0.9%)した事から、全体で8,895KBD(前週比+2KBD、在庫増減要因とはならず)となった。輸入は1,014KBD(前週比▲117KBD、▲0.8MBの在庫減少要因)と過去最高水準の輸入から若干後退している。結果、総供給が9,909KBD(前週比▲115KBD、前週比で▲0.8MBの在庫減少要因)となった。一方需要は振るわなかった。直近ベースの需要では単週ベースで9,187KBD(前週比▲180KBD、過去5年の最高水準9,316KBD、過去5年平均9,071KBD)と大幅な減少となった。サブプライムローンの影響と、ガソリン価格自体の上昇が消費を鈍らせたと考えられる。ただ4週平均ベースでは9,321KBD(過去5年の最高水準9,391KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)と、過去最高水準近辺での推移が続いている。但し需要増加は前週比▲0.2%と、例年の▲0.10%を小幅下回った)。この結果、在庫は195.027MB(前週比+0.7MB)と小幅な在庫増加となった。冬場に突入したわけであるが、引き続きガソリンの生産水準は、在庫水準の低さもあって継続せねばならない状況が続いているが、足元の需要の減少が顕著であり、今後の輸送燃料需要の動向には十分注意する必要がある。結果、FSCは20.9日と小幅改善。ようやく過去5年の最低水準20.9日を回復した。但し、FSCベースで少なくとも過去5年水準(21.8日)を回復しなければ、有事のバッファがないと判断できる。今後はクラックスプレッドが若干改善していることもあって、在庫水準は徐々に回復すると考えられる。但し引き続き景気悪化に伴う需要減少の可能性には注意を払っておく必要がある。現時点のスナップショットで先行きを見通せば、まだ需要の減少が継続的なものであるが否かが不明なため、在庫水準の低さを背景としてガソリン価格の下落余地は限られる、ということとなろうか。

 ディスティレート在庫は予想を上回る大幅な在庫減少となった。内訳的にはULSDの在庫減少が顕著であり、ヒーティングオイル在庫の減少も顕著であった。生産は、稼働率の改善を受け、得率の小幅悪化(▲0.1%)はあったが4,217KBD(前週比+47KBD、+0.3MBの在庫増加要因)となったものの、輸入はヒーティングオイルが増加しているものの、ULSDの輸入減少が顕著で、210KBD(前週比▲60KBD、▲0.4MBの在庫減少要因)となったことから、総供給は4,427KBD(前週比▲13KBD、前週比▲0.1MBの在庫減少要因)と略先週と変わらずであった。その一方で需要も、直近需要が先週の例年のペースと異なる減少から増加に転じたことから(単週ベース4,520KBD(前週比+282KBD)、4週平均ベース4,298KBD(前週比+89KBD)、+0.6MBの在庫増加要因。尚、需要増加ペースは+2.1%、例年は+0.3%)、▲2.08MBの在庫減少となった。在庫減少の内訳を見てみると、ULSD、冬場を控えてヒーティングオイルの在庫を中心に全ての油種で在庫が減少している。ヒーティングオイル在庫は47,287KBと過去5年の最低水準である48,521KBを引き続き下回る状態が続いている。冬場を控えてヒーティングオイルの生産強化、輸入強化が進んでいる一方で、ULSDの生産があおりを食った格好となっている。先週指摘した、米国内の輸送需要の減少が起きている可能性についてであるが少なくとも今週の統計ではその傾向は確認できなかったものの、今後も輸送需要の動向には注意する必要があろう。結果、在庫は133.412MB(前週比▲2.0MB)、FSCは31.0日(前週比▲1.1日)と大幅に悪化している。在庫水準の過不足を判断する時の目処となる過去5年平均レベル(30.9日)を引き続き下回ってはいるが、今のところ暖冬予報であることや、米国経済の減速懸念からこの水準でも昨年のように大丈夫なのかも知れない。