2007年12月5日発表分

 今回の米在庫統計は原油ブル・石油製品ベアな内容であった。石油は期末を控えて在庫積み増しの動きがしにくい環境下でありながら輸入の増加に伴って大幅な在庫増加となっている。一方でクラックマージンが改善してきているガソリン・ヒーティングオイルの在庫は予想に反して大幅な増加になった。個別に少し詳しく見てゆこう。
 原油は生産が横ばいであったが、輸入が大幅に減少し、稼働率が先週と変わらずであったことから予想を大幅な減少となった。OPECの増産見送りが発表された後の明確な原油在庫の減少であり、ブルな内容であったと言える。生産は5,133 KBD(+16KBD)と略横ばい。輸入はP1(▲292KBD)、P3(▲527KBD)、P5(▲212KBD)で大幅に減少している。期末を控えて在庫の積み増しを手控える動きがあると見られ、稼働率が低下している地区で輸入量が減少している。結果、総供給量は14,507KBD(前週比▲964KBD, ▲6.7MBの在庫減少要因)となった。一方で稼働率は小幅な改善が予想されていたが前週比変わらず(P1、P3 、P5で悪化したが、P2,P4で改善)であったことから、在庫は前週比▲7.9MBの305.240MBとなった。今回の在庫統計での原油在庫減少はP4以外、すべての地区で減少している。FSCは在庫減少の影響で19.6日と先週から0.5日悪化している。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は15,900KBD(+671KBD)と3週連続で増加している。このことは現物渡しを選好するプレイヤーの減少を意味し、バック縮小に寄与するものと考えられる。

 ガソリンは予想を上回る在庫増加となった。生産は稼働率が横ばいであったが得率の改善に伴い(58.3%、前週比+0.5%)があったこともあり、全体で9,092KBD(前週比+72KBD)となった。輸入は1,169KBD(前週比+334KBD)と過去5年の最高水準である1,130KBDを上回った。結果、総供給は10,261KBD(前週比+406KBD、前週比で+2.8MBの在庫増加)となった。一方需要は略季節要因程度の減少となり、直近の需要が9,266KBD(前週比▲90KBD、過去5年の最高水準9,320KBDを再び下回る)、4週平均ベースでは9,258KBD(過去5年の最高水準9,206KBD)となった。この結果、在庫は200.6238MB(前週比+4.0MB)と予想を大幅に上回る在庫増加となった。内訳的には、Blending Componentが+2.9MBとなったほか、Conventionalが+1.2MB、RBOBが+0.9MBとなっている。地区的にはすべての地区で在庫が増加しているが、その大半がP1、P3での増加によるものである。引き続き米景気減速、ガソリン価格自体の高騰に伴う輸送燃料需要の動向には十分注意する必要があるが、先週に続き、米国内でのガソリン需要減少は確認できなかった。結果、FSCは21.7日と大幅に改善、過去5年の最低水準21.4日を回復するに至っている。但し、繰り返しコメントしているようにFSCベースで少なくとも過去5年水準(22.0日)を回復しなければ、有事のバッファがないと言ってよい。今回の統計は生産が増加、需要が略季節要因的な減少を見せたのみであり、ある意味健全な在庫増加であったといえる。但し少し長い見通しに関しては、期末を控えて価格高騰に伴う在庫保有インセンティブが低い中、同様に価格高騰に伴う需要減少が先々発生する可能性も否定できず、クラックマージンの回復の足取りが重いことも生産を阻害する要因となり得、歴史的低水準の在庫レベルが変わることはなかろう。引き続きガソリン価格は大きく下落するような環境にないといってよい。

 ディスティレート在庫も市場予想を上回る在庫増加となった。内訳的にはピークシーズンであるヒーティングオイルの在庫減少が顕著である一方、ULSD、ディーゼル在庫が減少した。生産は、稼働率が変わらなかったが得率が+0.3%と改善したことから4,345KBD(前週比+43KBD)となった。内訳的にはULSD、ヒーティングオイルの生産が減少したが、ディーゼルの生産増加がこれを相殺した。輸入はULSDの輸入が回復(+50KBD)、ヒーティングオイルの輸入も増加(+45KBD)の影響で、299KBD(前週比+96KBD)と2週間前の水準を回復したことから、総供給は4,644KBD(前週比+139KBD、前週比+1.0MBの在庫増加要因)となった。その一方で需要は直近需要が減少したが依然として過去5年の最高水準を維持していることもあって、季節要因的には若干需要が減少しても良い時期であるにもかかわらず4週平均ベースの需要は4,426KBD(前週比+4KBD、在庫増減要因とはならず)となったことから、在庫は+1.4MBの132.344MBと、予想に反して大幅な在庫増加となった。在庫増加の内訳を見てみると、ULSDが3週連続で+1.0MB、ディーゼルが+1.4MBと大幅な在庫増加となる一方で、冬場に突入したこともありヒーティングオイルの在庫が▲1.0MBと2週連続の減少となった。引き続きヒーティングオイル在庫は過去5年の最低水準にも達していない。FSCは29.9日(前週比+0.3日)と過去5年平均を引き続き下回っている。ラニーニャの影響で厳冬になる可能性は高く、FSCが過去5年平均を下回る有事におけるバッファが少ない状態であることから、引き続き需給を巡る環境は厳しいと言わざるを得ない。価格高騰に伴い、ディーゼル・ULSD等の輸送系燃料の需要が減少する可能性があると考えているが、今のところ有意な需要減少は確認されていない。今回の統計は予想比ベアな内容であったが、しばらくの間は高い原油・石油製品価格の水準が、在庫積み増しの阻害要因となると考えられ、趨勢として高値で推移するであろうとの見通しに変更の必要はなさそうである。