在庫統計(2007年12月12日発表分)

[在庫統計]2007年12月12日発表分
 昨日の米在庫統計は原油マイルドにベア、ガソリンベア、ディスティレートブルな内容であった。石油は期末を控えて在庫積み増しの動きがしにくい環境下、輸入頼みの状態が続いており、略横ばいで推移している。この内容を市場がどう斟酌するか分からないが、サプライズの小さい在庫統計であったといえる。個別に少し詳しく見てゆこう。
 原油は生産は略横ばい、輸入が増加、稼働率が予想に反し大幅な低下となったことから、先週からは減少幅が縮小したものの予想に反し在庫減少となった。生産は5,117 KBD(▲16KBD)と略横ばい。輸入はP3(+313KBD)、P5(+350KBD)の増加が顕著であった。結果、総供給量は15,180KBD(前週比+673KBD, +4.7MBの在庫増加要因)となった。一方で稼働率はP1,P5以外の地区で大幅に低下したことから合計で88,8%(前週比▲0.7%)と、カトリーナ禍のあった2005年の最低水準である89.3%を下回ることとなった。クラックマージンは改善してきているものの、期末を控えた在庫圧縮の動きを受けて稼働率の改善が思わしくなかったものと見られる。結果、在庫は前週比▲0.7MBの304,518KBとなった。今回の在庫統計での原油在庫減少は稼働率の改善したP1、P5での減少が顕著であり、(各々▲1.9MB、▲3.3MB)それ以外の地区では大幅に増加している。FSC稼働率悪化の影響で19.7日と先週から0.1日改善している。稼働率の低下に伴うFSCの改善であり、あまり健全な改善とはいえない。因みに例年並の稼働率であれば3.7MB程度の在庫減少になっていたところである。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17,315KBD(+1,415KBD)と5週連続で増加している。P2,P3の稼働率低下の影響もあっての在庫増加である。繰り返しであるがこのことはイールドカーブバック縮小に寄与するものと考えられる。

 ガソリンは予想を上回る在庫増加となった。生産は稼働率が横ばいであったが得率が大幅に改善の改善に伴い(59.2%、前週比+0.9%。この時期の最高水準である58.6%を大きく上回る得率の水準であり、異例といえば異例)、全体で9,155KBD(前週比+63KBD)となった。輸入は985KBD(前週比▲184KBD)と、減少しはしたものの過去5年の最高水準である947KBDを上回る高い水準を維持。結果、総供給は10,140KBD(前週比▲121KBD、前週比で▲0.8MBの在庫減少要因)となった。一方需要は堅調で季節要因的にはほぼ横ばいとなる見通しであったが、直近の需要が9,348KBD(前週比+82KBD、過去5年の最高水準9,477KBDを下回るが水準は引き続き高い)、4週平均ベースでは9,298KBD(過去5年の最高水準9,264KBD、増加率+0.4%、過去5年平均±0.0%)となった。この結果、在庫は202,241KB(前週比+1.6MB)と予想を小幅上回る在庫増加となった。内訳的には、Conventional,Blending Component, RBOBとも増加している。その大半がP1、P5での増加によるものである。引き続き米景気減速、ガソリン価格自体の高騰に伴う輸送燃料需要の動向には十分注意する必要があるが、今週も米国内でのガソリン需要減少は確認できなかった。結果、FSCは21.8日と前週比+0.1日改善、過去5年の最低水準21.6日を上回る状態が続いている。但し、繰り返しコメントしているようにFSCベースで少なくとも過去5年水準(22.2日)を回復しなければ有事のバッファがないと言ってよく、ヒーティングオイルのピークシーズンでありながらガソリン生産強化に軸を置かねばならない状況が続いているといえる。期末を控えて価格高騰に伴う在庫保有インセンティブが低い中、同様に価格高騰に伴う需要減少が先々発生する可能性も否定できず、歴史的低水準の在庫レベルが続くことに変わりはなかろう。予想比ベアであったとはいえ、大幅にガソリンが売り込まれる内容ではなかったといえる。

 ディスティレート在庫は市場予想に反し、減少した。内訳的には引き続きピークシーズンであるヒーティングオイルの在庫減少が顕著である一方、ULSD、ディーゼル在庫が増加した。生産は、稼働率が大幅に低下、得率もガソリンやケロシンの得率上昇のあおりを受けて27.4%(前週比▲0.5%)と悪化したことから4,234KBD(前週比▲111KBD)となった。内訳的にはディーゼルの生産減少が顕著である。輸入はULSD、ヒーティングオイルの輸入が減少したことから全体でも170KBDと、過去5年の最低水準である232KBDに到達していない。結果、総供給は4,404KBD(前週比▲240KBD、前週比▲1.7MBの在庫増加要因)となった。その一方で需要は直近需要が増加し4,340KBD(前週比+88KBD)となったが、4週平均ベースの需要は4,381KBD(前週比▲45KBD、▲0.3MBの在庫減少要因)となった。結果、やはり生産の減少が響き、在庫は▲0.84MBの131,534KBと、予想に反して在庫減少となった。但し多少の振れはあるものの概ね期末を睨んで在庫の水準は大きく動かないことから、大騒ぎするような在庫減少ではない。クラックマージンの改善に伴うガソリン得率の引き上げによって生産が減少したことによる在庫減少であり、ある意味ネガティブな在庫減少であったといえる。在庫減少の内訳を見てみると、P1,P2,P3での在庫減少によるもので、製品ごとの在庫減少は殆ど全てヒーティングオイルの減少による在庫減少であった。依然、ヒーティングオイルの在庫は42,595KBと過去5年の最低水準である54,681KBを下回る状況が続いている。結果、FSCは30.0日(前週比+0.1日)と小幅改善しているが、過去5年平均を下回る状況が継続している。ラニーニャの影響で世界各地が異常気象でありどちらかといえば厳冬になる可能性が高く、FSCが過去5年平均を下回る有事におけるバッファが少ない状態であることから、引き続きディスティレートは振れの大きな展開が続くことになろう。今回の統計は予想比ブルな内容であったが、しばらくの間は高い原油・石油製品価格の水準が、在庫積み増しの阻害要因となると考えられ、趨勢として高値で推移するであろうとの見通しに変更の必要はなさそうである。