良いお年を

(経済関連ニュース)
・1-11月中国鉱工業企業利益 前年比+36.7%。
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比▲7.6%の603.8、借換指数▲8.5%の1,915.3、購入指数▲6.6%の394.5。
・米週間新規失業保険申請者数 前週比+1千人の349千人(前週改定348千人(速報比+2千人))、市場予想340千人。雇用のトレンドはベア目に推移。
・11月米製造業耐久財受注 +0.1%・除く輸送機器▲0.7%(前月改定▲0.4%(速報比変わらず))、市場予想+2.0%。
・26日、トルコ軍がトルコ南東部でクルド人武装組織(PKK)と衝突、兵士8名を殺害。
パキスタン ブット元首相暗殺される。
・11月日本コアCPI 前月比+0.4%と2ヶ月連続でプラスに。
・11月日本鉱工業生産速報 前月比▲1.6%、市場予想▲1.7%。
・米国株式は暴落。11月耐久財受注が思わしくない内容であったことや、パキスタンのブット元首相が暗殺されたことも売り材料視された。為替はドルが軟調。米景気の減速懸念とパキスタン情勢の悪化により(昔は有事のドル買いが起きたものですが...)。

穀物市場サマリー)
・大豆は下落。略年末を控えたポジション調整程度の取引に終始したと見られ、10日移動平均線のサポートラインを下値としてしっかりの展開が継続。
・トウモロコシも上昇。ファンダメンタルズが強い上、ブット元首相暗殺の報を受けたエネルギー価格の上昇により、連れたかとなった。
・小麦は下落。アルゼンチンのパンパ地区での清算が4.8百万Mtと、前年比+25%となったことなどから需給緩和観測が広がった。テクニカルにサポートされていた10日移動平均線を下回ったこともあって総じて軟調な推移が続いている。

非鉄金属関連ニュース)
・貴金属はまちまち。金はパキスタンの元首相暗殺の報道を受けて有事の金買いがおきた。その後もドル安の進行やエネルギー高もあって総じて堅調な推移であった。銀は軟調。金価格の上昇もあって連れ高になるかと思われたが、年末を控えた手仕舞い売り圧力の方が大きかったようである。
・プラチナは軟調。南アの生産開始観測を受けて軟調に推移したが、金価格の上昇もあって結局10日移動平均線のサポートラインを下回るには至っていない。パラジウムは小幅高。年末を控えたポジション調整の取引が中心であった模様。

(エネルギー関連ニュース)
・米在庫統計 原油▲3.3MB、ガソリン+0.6MB、ディスティレート▲2.8MB、稼働率+0.3%
・米Colonial Pipelineはメキシコ湾から米東海岸へのガソリン油送を制限すると発表。ガソリン需要が堅調であるため、パイプラインのキャパシティをオーバーしてしまったことなどが要因。通常はリファイナリの稼働率が回復し、生産が回復する時期であるが稼動が回復していないことから(下記統計の詳細をご参照)。
・Valero Texas City製油所(230KBD、テキサス、P3)、電力障害によって稼動が停止していたが再開。

(商品市況概況)
「まちまち」
昨日の商品価格はまちまち。エネルギー価格はパキスタンのテロ騒ぎで中東を巡る軍事的緊張の高まりから買いが入り大幅に上昇、非鉄金属は逆にこのニュースを受けた株価の調整、景気の後退懸念で売られた。貴金属は有事の金買いが堅調、ソフトはエネルギー高を受けて総じて堅調な推移であった。
 今後については、欧米金融機関の著しい信用悪化懸念が後退してはいるものの、それとは別に米景気の減速の可能性は引き続き高く、加えて軍事的緊張の高まりといった更なる不安定材料が市場に投入されたことで、エネルギーはポジティブ、非鉄金属はネガティブの状態がしばらく続くことになろうか。ただし非鉄金属事態の需要は最大消費国中国の需要が引き続き旺盛であることから大幅な価格調整は余り想定していない。

(非鉄金属)
 昨日の銅価格は上昇した。クリスマスのロングホリデー後の買いが継続し。50日移動平均線レジスタンスラインをトライする展開となった。しかしパキスタンのブット首相が暗殺されたことに伴う株安や米機械受注の内容が不冴えであったことから引けにかけて売られ上げ幅を削る展開となった。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは4.0日)、(キャンセルワラント率は2.5%)。欧州で在庫が減少、米国で在庫が増加している。売買高は6,661枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近を中心に上昇し、ブルスティープニング。C-3は42?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の亜鉛価格は上昇した。クリスマス休暇期間の上昇を取り戻すべく買いが先行したが、爆弾テロ問題や米株価の調整といったマイナス材料を受けて、寄り付き対比で行って来いの展開であった。LME在庫は前日比変わらず。FSCは2.6日(キャンセルワラント率は6.6%)。売買高は3,713枚。イールドカーブは全ゾーン略パラレルに上昇している。C-3は17?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の鉛価格は下落した。クリスマス休暇の間の上げ分を取り戻すべく高寄りして始まったが、パキスタンのテロを受けた株価の大幅調整といったマイナス材料を受け、引けにかけて大幅に弱含んで引けた。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは1.9日、キャンセルワラント率は7.9%)。売買高は455枚。イールドカーブは全ゾーンパラレルに低下。C-3は9?バックとバック幅を縮小した。
 昨日のアルミ価格は上昇した。取引序盤は堅調に推移していたが、パキスタンのテロ問題を受けて急落、その後も米国時間に発表された経済統計が米国経済の先行きの不透明感を高める内容であったことから更に売り込まれた。目先10日移動平均線が強いレジスタンスラインとなっている。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは9.0日)。(キャンセルワラント率は2.9%)。売買高は7,324枚。イールドカーブの形状は期近が下落、期先が上昇している。C-3は53?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日のニッケル価格は上昇した。ロングホリデー明けで買いが入ったが、パキスタンのテロ問題を受けた株価の急落といったマイナス材料を受けて上げ幅を削る展開となった。結果的に30日移動平均線が上値として意識される展開となっている。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは11.9日)、キャンセルワラント率は2.0%。売買高は569枚。イールドカーブは全ゾーンパラレルに上昇している。C-3は330?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の錫価格は下落した。高よりした後、他メタルと同様の材料を受けて水準を切り下げる動きとなった。結果的に10日移動平均線ラインでサポートされて引けている。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは12.1日)、キャンセルワラント率は4.74%。売買高は230枚。イールドカーブは全ゾーンパラレルに低下。C-3は125?コンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。

(エネルギー)
 昨日のNY原油価格は大幅に上昇した。パキスタンのブット元首相が暗殺されたことにより、域内の緊張が高まると見られたことから金とともに買いが入った。パキスタンは新聞でも報道されているが核を保有しているためこの地区の政権が転覆し、武装組織等に乗っ取られた場合軍事的緊張が高まる可能性が高い。加えて米在庫統計もブルな内容であったことから上げが加速した。イールドカーブは期近を中心に全ゾーン上昇している。Brentも自爆テロ、米在庫統計を受けて上昇している。イールドカーブは略全ゾーンパラレルに上昇している。
 石油製品も上昇。RBOBも自爆テロを材料として堅調な推移となっていたが、米在庫統計が予想比ブルな内容であったことから上げ速度が加速、一気に直近高値であった248.81?を上抜けしてしまった。イールドカーブは全ゾーンパラレルに大幅に上昇。原油に比して在庫水準が低いことや、季節外れに需要が旺盛であることからパイプラインのキャパを超えて油送がままなっていないことなども手伝い、前日比+1.7%の大幅上昇となった。ヒーティングオイルも上昇。材料は略同じである。引き続き30日移動平均線を下値として堅調な推移が続いている。イールドカーブは期近を中心に上昇し、ブルスティープニング。ICEガスオイルも上昇。欧州は地中海地区まで気温が大幅に低下しており、域内需給が逼迫しているものと考えられる。イールドカーブは期近が上昇、期先が低下している。


(ひとりごと)
またしても痛ましい事件がおきた。
人間である以上、ある程度の衝突は仕方がないことだと思うが、人を殺して良い道理がない。

2007年は本当に激動の年でしたが、来年こそ、本当に良い年で、皆が笑顔で過ごせる年になって欲しいと
心から願っています。

新しい会社に移ってからは3ヶ月程度ですが、レポートをご愛読頂きありがとうございました。
来年も頑張って分析を深め、
頑張って雑感ネタを探して行こうとおもっておりますので、引き続きご愛読いただければと存じます。


最後になりましたが、年末年始、風邪など召されませぬよう。
良いお年を。

[在庫統計]2007年12月27日発表分
 昨日の米在庫統計はブルな内容であった。稼働率の改善がままならない中、需要は全ての製品で堅調であることが材料である。原油を含めた全ての石油製品のFSCが大幅に悪化しており、製品在庫の水準の低さがエネルギー価格のアップサイドリスクを高めているといえる。少し詳しく見てみよう。
 原油は生産が略横ばい、輸入が濃霧の解消で影響で前週比大幅に回復したが、稼働率の回復によって(とはいっても過去5年の最低水準をやっと満たした程度)、結果的に予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,117 KBD(+7KBD)とここ数週間とほぼ同じ水準を維持。輸入は9,805KBD(前週比+694KBD)となった。濃霧解消によってP3(+274KBD)の輸入が回復したほか、P5(+255KBD)も前週の減少分の約半分を回復した。結果、総供給量は14,922KBD(前週比+701KBD,+4.9MBの在庫増加要因)となった。稼働率は輸入の回復やクラックマージンの回復、冬場を控えた製品生産の強化の必要性もあってP1,P2,P3で回復、全体で88.1%(前週比+0.3%)と、過去5年の最低水準である88.0%をかろうじて上回った。期末を控え、価格高騰に伴う需要減少→価格下落による損失計上を回避せん、とする動きが生産を緩慢なものにしているようだ。結果、在庫は前週比▲3.3MBの293.6MBとなった。今回の在庫統計では原油在庫はP3での減少が殆どであったといえる(▲3.4MB)。FSCは在庫減少と稼働率改善の2要因で、19.1日と先週から更に0.3日悪化、過去5年平均レベルを下回る「有事のバッファがない状態」に至った。OPECの増産見送りに伴う在庫減少は深刻であるといえ、ラニーニャの影響で世界的な厳冬となっている以上この在庫水準は心もとない。万一稼働率が例年並の91.4%に回復したとすればそれだけで3.3MBの在庫減少要因となりえることには引き続き注意したい。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17,496KB(+66KB)と7週連続で増加している。このことは繰り返しになるが、イールドカーブバック縮小に寄与するものと考えられる。

 ガソリン在庫は増加したが予想を下回る在庫増加であった。生産は稼働率が改善したものの得率が大幅に悪化(58.6%、前週比▲0.9%。2002年以来の高水準であることには変わらない)、全体で9,004KBD(前週比▲108KBD)となった。輸入は高い水準は維持しているものの在庫水準がFSCベースで過去5年水準を回復していることもあり、先週に続いて減少し1,015KBD(前週比▲93KBD)となった。結果、総供給は10,019KBD(前週比▲201KBD、前週比で▲1.4MBの在庫減少要因)となった。需要は例年の増加ペース(+0.5%)を下回る+0.2%の増加率にとどまった。ここ数週間の動きと同様、調達価格の上昇がダイレクトに小売価格に反映されていないことを映じて比較的堅調な推移が続いており、4週平均ベースの需要は9,337KBD(前週比+23KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)となった。直近の需要は9,446KBD(前週比+159KBD、過去5年の最高水準9,491KBDを下回るが水準は引き続き高い)。この結果、在庫は205.9MB(前週比+0.6MB)と予想を大きく下回る在庫増加に留まった。ここしばらくは予想を下回る在庫増加・上回る在庫減少、といった状態が続いている。ひとえに需要が堅調な中生産がおぼつかないことが要因である。在庫増加の内訳は、Conventional, RBOBが減少している。地区の内訳は、P2,P3で減少したほかは先週に続いて増加している。小売価格が大幅に引き上げられていない中需要が堅調であり、生産・輸入の減少に伴い在庫増加が思わしくなかったことによる在庫減少である。ここしばらくの在庫統計を見ていると、需要の大幅な増減がない中、供給動向によって在庫増減が左右されているのが明確である。稼働率の回復が不冴えである以上、輸入動向が在庫の増減に大きく影響を与える情況が続いているといえる。FSCは22.0日と前週比変わらずで、過去5年の平均水準を下回っている状態。これも繰り返しコメントしているようにFSCベースで少なくとも過去5年水準(22.5日)を回復しなければ有事のバッファがないと言ってよく、寒波襲来といった需要の増加(ヒーティングオイルの需要増加に伴い、ガソリンの生産が犠牲になる可能性)や、季節的な濃霧発生といった輸入の阻害要因が発生した場合には、対応が十分できるレベルではない状況であることは忘れてはなるまい。

 ディスティレート在庫は予想を上回る大幅な在庫減少減少となった。季節的には冬場が本格化する1〜3月に向けて在庫が増加する時期なのだが、これで3週連続で在庫減少となり、在庫の絶対水準でも過去5年平均を下回るに至った。生産は、稼働率が改善したものの得率が悪化したため、(28.0%。過去5年の最高水準は26.8%)となったことから4,294KBD(▲21KBD)となった。ただし過去5年の最高生産水準(4,294KBD)は上回る水準となっている。今回は先週犠牲になったケロシンの得率が改善(+0.4%)したことから、ガソリン・ディスティレートの得率が悪化している。重油の生産が増えていることは気温低下に伴う電力向け需要によるものであると推察される。製品生産の内訳は、先週から大きな変化はない。輸入はULSD・ヒーティングオイルの輸入が減少(▲76KBD、▲31KBD)したことから全体で143KBD(前週比▲106KBD)と大幅な減少となった。欧州の気温低下の影響もあってP1の輸入が顕著に減少している。この結果、総供給は4,437KBD(前週比▲127KBD、前週比▲0.9MBの在庫減少要因)となった。需要は直近需要が先週の反動か小幅減少したが4,652KBD(前週比▲40KBD)と過去5年の最高水準4,284KBDを上回る水準を維持している。気温低下の影響でヒーティングオイルの需要が増加していることに加え(P1,P3で在庫減少)、ULSDの在庫減少(P1以外の全ての地区で在庫減少)を見るに輸送需要も堅調であるものと推察される。この結果、4週平均ベースの需要は先週からペースが鈍化したものの4,484KBD(前週比+81KBD、▲0.6MBの在庫減少要因)となった。結果、在庫は▲2.8MBの126.6MBと大幅な在庫減少となった。引き続きヒーティングオイル在庫は過去5年の最低水準である53.8MBにも達していない。FSCは28.2日(前週比▲1.1日)と大幅に悪化、ついに過去5年の最低水準(28.7日)を下回るに至った。気温低下に伴う暖房需要の増加に加え、輸送需要も堅調であることから生産が過去最高水準を維持しても不足の状態が続いており、引き続き明確にブルな統計であったといえる。年末〜年初の気温の影響にもよるが稼働率の改善なくして在庫の増加はないといえる。