統計速報(1月24日発表分)

 昨日の米在庫統計はベアな内容であった。原油稼働率の悪化が継続したことから季節要因を上回る在庫増加となり、ガソリンも需要の減少が顕著であり在庫増加となった。ディスティレートは在庫減少となったが、足許の価格下落に伴う駆け込み的な需要(特にヒーティングオイル)があったためと考えられる。米国経済の先行き不透明感が高まっていることから、徐々に実需減少の可能性も高まってきている。詳しく見てみよう。

 原油は生産が小幅増加、輸入が稼働率の大幅に低下したP1で減少したことから全体でも減少、稼働率が季節要因で減少したことから、予想を上回る在庫増加となった。これで在庫は2週連続で増加することとなった。生産は5,042KBD(+29KBD)と小幅増加。ハリケーン被害を免れてきたことから2007年を通じて原油生産は極めて安定している。輸入は10,156KBD(前週比▲233KBD)と再び減少。稼働率の低下したP1、P5での輸入が各々前週比▲440KBD、▲132KBDとなったことが影響した。結果、総供給量は15,198KBD(前週比▲204KBD、▲1.4MBの在庫減少要因)となった。稼働率は季節的には低下してもおかしくないタイミングであったが、市場予想は前週比変わらずを予想していたが、今回は季節サイクルどおり低下することとなった、大消費地を抱えるP1,P3,P5での稼働率低下が顕著であった(各々▲5.5%、▲0.7%、▲1.7%)、結果、全体の稼働率は86.5%と先週から0.6ポイント悪化、過去5年の最低水準の稼働率となった。稼働率の悪化は+0.7MBの在庫増加要因となる。需給合わせて前週比▲0.7MBの在庫減少となる。結果、在庫は前週比+2.3MBの289.4MB(過去5年平均レベル263.9MB)となった。今回の在庫統計での在庫増加は、2月に向けての稼働率低下に伴い在庫が増加する季節要因に従ったものであり、予想を上回る在庫増加となったものの原油に関してはそれほどサプライズなないようではなかった。FSCは在庫増加と稼働率悪化の両要因で、19.2日と先週から0.2日改善、但し、このコラムで在庫水準のレベルを判断する基準となる過去5年の平均レベル(19.4日)には到達していない。先々の米国の実需減少観測を鑑みた場合、原油に関して言えば有事のバッファが存在する環境になってきたと考えられる。この状況が継続すれば、来月のOPEC総会での増産は最大消費国米国の需要減少と在庫増加を鑑みれば、見送られる公算が高いと考えられる。このことは、OPECが世界GDP成長率が3.0%を上回るレベルを維持している場合、供給に関して強気のオペレーションを採りがちであることからもその可能性が高い。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は15.7MB(▲0.9MB)と2週連続で減少している。

 ガソリン在庫は予想を大幅に上回る増加となった。生産は稼働率の大幅悪化の影響で得率が前週比+0.3%と改善したものの、全体で8,965KBD(前週比▲13KBD)と小幅な減少となった。輸入は1,228KBD(前週比+290KBD)と大幅に改善。過去5年の同じ週の最高レベルである1,035KBDを上回っている。稼働率の悪化したP1での輸入が+310KBDと増加した影響が大きい。結果、総供給は10,193KBD(前週比+277KBD、前週比で+2.0MBの在庫要因)となった。需要は4週平均ベースで9,168KBD(前週比▲121KBD、過去5年の最高水準9,184KBDを若干下回るレベル。+0.8MBの在庫増加要因)となった。季節要因でこの時期ガソリンの需要は緩やかに減少するのだが、例年(過去5年平均)では▲1.6%のところ、▲1.3%の減少にとどまっている。直近需要ベースでは8,964KBD(前週比▲152KBD、過去5年の最高水準9,060KBDを下回る)となっており、米国の、4週平均の過去5年の減少レベルを上回る▲1.7%の需要減少となっている。これは2週連続の大幅な需要減少である。やはり、サブプライムローン問題の影響で実需が減速し始めている可能性が高くなってきた。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比で+2.8MBの在庫増加となる(先週の在庫増加が+2.2MBなので、+5.0MBになる)が、計算どおりガソリン在庫は前週+5.1MBの220.3MBと3週続けて在庫増加となった。在庫増加の内訳は、RFG, Conventional, Blending Component, RBOBすべて増加している。地区の内訳は、P3以外の地区全てで増加している。時期的に需要の減少とともに在庫が緩やかに増加するタイミングであるが、在庫の増加ペースは+2.4%とまだ例年のペース(+0.6%)を大幅に追い越すに至った。この結果、FSCは24.0日と前週比+0.9日と大幅に改善、過去5年の平均水準(23.9日)を小幅上回ることとなった。今後、米国の輸送需要が減少に転じる可能性は高く、徐々にFSCは改善していくことが予想される。今回の統計は、一応季節サイクルの中での在庫増加と見ておいて良いのだが、直近需要の減少速度が過去の平均を上回り始めたことも鑑みれば、先週に続き明確にベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫は予想に反し、大幅な在庫減少となった。供給量が大幅に減少した一方で、需要が回復したためである。生産は、稼働率が悪化し、得率も悪化(▲0.8%)したことから4,104KBD(▲153KBD)の大幅減少となった。製品生産の内訳はULSDの生産が2,941KBD(前週比▲85KBD)、ヒーティングオイルが547KBD(▲64KBD)と減少。輸入はヒーティングオイルの輸入が前週比▲99KBDと大幅に減少したことから全体で242KBD(前週比▲67KBD)となった。この結果、総供給は4,346KBD(前週比▲220KBD、前週比▲1.5MBの在庫減少要因)となった。需要は例年通りの季節サイクルで減少しているが、4週平均ベースで見た場合の需要は4,282KBD(前週比▲76KBD、+0.5MBDの在庫増加要因)。尚、需要の減少ペースは例年の▲0.1%を上回る▲1.7%となっている。直近需要が4,347KBD(前週比+131KBD)と大幅に増加しているが、直近の価格下落の影響もあって駆け込み的に需要が増加した、と考えておいたほうが適切だろう(ガソリン同様、中長期的には需要は減少傾向にある可能性が高い)。供給・需要の在庫増減要因を合計すると前週比で▲1.0MBの在庫減少(先週の在庫増加が+1.2MBであったので、+0.2MBの増加)になるが、この計算どおりとならず在庫は▲1.3MBの128.5MBの在庫減少となった。在庫減少の内訳は、ULSDが▲0.6MB、ヒーティングオイルが▲0.4MBとなった。殆ど全ての地区、全ての製品で幅広く在庫が減少している。FSCは需要要因で30.0日(前週比+0.2日)と小幅改善。過去5年の最低水準(28.7日)を上回っている。ラニーニャの影響で寒暖不安定であるが引き続きシーズン品であることもあり、価格の上昇に関わらず(重油へのシフトの可能性はあるものの)ヒーティングオイルの需要が減少することは当面なかろうが、ガソリンと同様、ディーゼル・ULSD等の輸送燃料の需要動向がポイントになってくると見られる。