昨日の米在庫統計は市場予想比明確にブルな内容であった。ここ数週間どおり、原油輸入の大きな変動と稼働率の低迷に伴う石油製品在庫の減少が確認された。製品需要は季節性は維持しているものの、昨年と比べればマイナスの状態が続いており需要が強いとは言いがたいが、著しく高い原油価格が生産者の在庫積み増しを遅れさせ、かつ最終需要の弱さとクラックマージン(拡大はしているが原油の価格水準を考えると高いとは言いにくい)の低迷から稼働率の改善もままならず、需要が弱いにも関わらず需給が逼迫するという悪循環に陥っているといえる。ドライブシーズンが目前に迫る中、石油製品を中心に需給がタイト化する可能性が高まってきた。詳しく見てみよう。
原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少、稼働率が小幅改善したことから予想と略正反対の大幅な在庫減少となった。繰り返しコメントしているが、ここ数週間の在庫増減の大きな要因となっている輸入が大幅に減少したことが大きく影響した。生産は5,097KBD(+10KBD)と小幅増加(誤差の範囲)。輸入はP2を除く全ての地区で減少したことから全体で8,912KBD(前週比▲1,361KBD)となった。結果、総供給量は14,009KBD(前週比▲1,361KBD,▲9.5MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP1,P5で各々前週比▲5.4%、▲0.8%と火災や電力障害の影響による稼動率低下が見られたが、P2〜P4は各々+0.6%、+3.7%、+5.7%と大幅な改善となったことから全体で+0.7%の83.0%と大幅な回復となった。しかしながらこの時期の過去5年の最低水準である85.0%は依然として大きく下回るレベルであり、極めて低い稼働率が継続している。稼働率の改善は改善は▲0.8MBの在庫減少要因となる。供給量大幅減少、処理量の小幅増加で在庫は前週比で▲10.3MBの▲3.0MB(先週の在庫増加は+7.3MB)となるが、略計算どおりの前週比▲3.1MBの316.0MB(過去5年平均レベル312.3MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+0.1%であるが、今週は▲1.0%の大幅減少となった。FSCは在庫減少・処理量増加により前週比▲0.6日の21.6日となった。過去5年の平均である20.6日を引き続き上回る水準を維持しており、未だ米国原油在庫の水準は十分と言ってよいだろう。但し高すぎる原油価格や最終消費の不安定さや製油所の不慮のトラブルが散見されることから稼働率の改善が思わしくなく、引き続き原油在庫も週ごとに振れ幅の大きな内容となってしまっている。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.5MB(前週比+67KB)となった。
ガソリン在庫も予想を上回る在庫減少となった。稼働率の改善、得率の改善に伴う生産増加はあったが、4週平均需要が小幅なプラスとなったことから、在庫減少幅が先週から縮小したものの引き続き在庫減少となった。生産は8,896KBDと先週に引き続き改善し、再び過去5年の最高水準8,773KBDを上回った。輸入は前週比▲37KBDと小幅減少し、907KBDとなった。結果、総供給は9,803KBD(前週比+251KBD、前週比で+1.8MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,201KBD(前週比+39KBD、過去5年平均8,996KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,286KBD(前週比▲44KBD)となった。この4週平均の需要増加率(前週比+0.4%)は例年(+0.1%)を上回るレベルであるが、依然として需要の前年比割れは継続しており、11週連続の前年比マイナスとなった。米需要は明確に減速している状態であると言ってよいが、引き続き季節性が壊れるほどの需要の減少が見られているわけではなく石油製品価格の上昇にも関わらず健全な状態が維持されていると言ってもよかろう。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比+1.6MBの▲2.9MBの在庫減少(先週の減少▲4.5MB)となるのだが、実際は▲3.4MBの大幅な在庫減少となった。在庫減少増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが減少(Conventional ▲1.5MB、Blending Component ▲2.8MB)している。この結果、FSCは24.0日と先週から▲0.5日と大幅に悪化したが、依然として過去5年の最高水準である23.1日を上回る水準を維持しており、原油同様未だ、ガソリン需給は引き続きタイトとはいえない。しかし、このペースでの在庫減少が続けばドライブシーズンにガソリンが不足する可能性がないとはいえない。クラックマージンも改善してはいるが、原材料たる原油の価格水準を考えると決して高いとはいえない。ただしサブプライム禍の影響で需要が減少し始めており、今後のガソリン等の輸送需要(輸送需要は景気に直結)動向に更なる注意を払わねばならない統計である。先週と同様、市場予想比では極めてブルな内容であるが、絶対水準的には先週と同じくニュートラルな内容であったと考えておくべきだろう。
ディスティレート在庫も予想を上回る在庫減少となった。稼働率が改善、ジェット燃料の得率を奪う形でを得率も改善したことから生産が増加、しかしながら輸入が大幅に減少したことから総供給が減少、需要も堅調であったことから予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は、稼働率が改善、得率も+0.5%と改善したことから3,990KBD(+134KBD)と大幅な増加となた。製品生産の内訳はピークシーズンが終了したヒーティングオイルの生産が減少する一方、ULSD・ディーゼルの輸送燃料の生産が増加した。輸入も同じ動きが見られ、ピークシーズンの終了からP1,P3の輸入量が大幅に減少している。この結果、総供給は4,151KBD(前週比▲27KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は前週比+111KBDの4,317KBD(▲0.8MBの在庫減少要因)と、前週比+2.6%と大幅な増加である。前年比で▲0.8%とマイナスが続いているが、先週までは前年比5〜6%の前年比マイナスであったことを考えると、統計値のエラー(時々発生)か、本当に輸送需要が回復しているのかのどちらかであると考えられる。小職はどちらかというと統計値のエラーの可能性が高いと考えているが。全体のバランスでは前週比▲1.0MBの▲2.6MB(先週の在庫減少は▲1.6MB)となるところであるが、計算を上回る▲3.7MBの大幅な在庫減少となった。総在庫は106.0MBとなり、過去5年平均レベル110.0MBを下回った。在庫減少の内訳はピークが終了したことからヒーティングオイルの減少幅が大きいが今回の統計ではP3を除く全ての地区でディスティレート在庫が大幅に減少している。FSCも24.6日(前週比▲1.5日)と過去5年平均である26.4日を大きく下回っている。今回の統計はディスティレートは市場予想比・絶対水準ともブルな内容であったといえよう。