ハリケーンシステム

(商品市況概況)
「金融安定化法案否決の影響」
 昨日のコモディティ価格は大暴落。巷では米金融安定化法案否決の影響で下落した、とのコメントが目立つが下落の経緯を見てみると、法案否決の前から下落が始まっている。フォルティス等、欧州金融機関の業況も悪化し始めていることを背景として、米金融安定化法案が不十分なのではないかとの味方が強まり、リクイデーションの動きが前もって発生したためと考えられる。特に、米投資銀行の経営悪化時に発生した著しい市場流動性の低下の悪夢が、ファンドや市場参加者の頭をよぎったのだろう。その後、米金融化安定化法案は否決。今後どのような対策が講じられるのか現時点では白紙であるが、少なくとも金融市場の先行きに関しては、政治的にどのような決着を見るかにかかっている。当面は安全資産として金が物色されることになると考えられる一方、実需の影響も大きいエネルギーや非鉄金属(工業用金属)の価格は下落余地を試す動きになる事が予想される。
 現在、「想定していなかった事態」が発生している。日本では解散総選挙が間近に迫っているがその前にやらなければならないことが出てきているようだ。

(経済関連ニュース)
・米金融安定化法案、米下院で否決。民主党過半数が賛成、共和党は3分の2が反対票を投じた(日本時間午前3:00)
・9月ユーロ圏 小売業景気指数 46.2(前月改定47.7)。
・8月米個人消費支出 前月比変わらず(前月改定+0.1%(速報比▲0.1%))、市場予想+0.2%。
・8月日本鉱工業生産 前月比▲3.5%(前月改定+1.3%)。
・米シティバンクワコビアを買収。
フォルティスベネルクス3国政府の公的支援を受けることに。

・ドルは対主要通貨で暴落。米下院で金融安定化法案が否決されたことが材料視され、暴落。その後行き過ぎの修正が入り買い戻しが入ったが、米株の大幅下落の影響もあってドルを嫌気する動きが続き、結局大幅安で引けた。対円でもドルは急落。海外市場の混乱が続くとの味方から、キャリートレードアンワインドが加速した模様。
日本株は続落。米金融市場の混乱が続く中、景気の悪化懸念もあいまって輸送関連や鉄鋼、機械株等幅広く売られた。アジア株も軒並み大幅に提げている。米国株は史上最大の下げ幅(下げ率ではない)。米下院で金融安定化法案が否決されたことが市場の失望売りを誘った。

穀物市場サマリー)
・大豆価格は続落。米金融安定化法案の実効性に疑問符が付く中、欧州金融機関の業況も悪化し始めたことから株価が調整、穀物価格も調整を余儀なくされた。またその後、米下院で同法案が否決されたことから下げが加速した。イールドカーブは略全ゾーンパラレルに低下している。

・トウモロコシ価格も続落。大豆と同様、景気悪化懸念と昨晩の米金融安定化法案否決の影響によるもの。穀物市場は時間的にこの法案否決の影響を織り込んでいる。イールドカーブは全ゾーンパラレルに低下している。
・小麦価格も下落。そもそものファンダメンタルズが弱い中、米金融安定化策が否決されたことや、世界景気の悪化等が嫌気された。イールドカーブは全ゾーン大幅低下。

非鉄金属関連ニュース)
・NY金は上昇。可決する見通しであった米金融安定化策が米下院で否決されたことからドルが暴落、安全資産として金が物色されることになり大幅な上昇となた。東京時間に入ってからも金は大幅に上昇している。政治的な問題の解決に相場が左右され易いのはコメントしたとおりであるが、今回の法案否決によって次回の修正案がどの段階で提出され、どの段階で可決するかが不透明になってしまったため、ドル安と安全資産への逃避の動きから当面堅調な動きになろうか。
 NY銀は下落。米金融安定化法案が否決されたことでドル安が進んだことから買い余地はあったものの、工業品の色彩の強い銀はむしろ景気悪化に焦点が当たり、結局大幅な下落となった。

・NYプラチナは続落。取引序盤から米経済統計の悪化を受けて軟調な推移が続いていたが、米金融安定化法案否決の影響でドル安の進行よりも景気悪化に焦点が当たり、プラチナは大幅に水準を切り下げる展開となった。10日移動平均線を割り込んでいることもテクニカルに売りを入れ易くしたようだ。本日は1,000?を挟む攻防が予想される。
 中期的な見通しについてプラチナは、低い水準で安定すると考える。世界経済への影響が大きい米景気の悪化、GM、フォードといった自動車産業の景況感悪化に反映される自動車販売の減少に伴う触媒需要の減少観測を受け、このコラムで指摘してきた需要減少のリスク要因の影響が大きくなってきている状況であるためだ。また、米金融安定化法案が否決されたことでさらに金融機関を中心に業況の悪化が予想される。南アフリカの生産が不安定なことはもはや材料にならなくなってきている。しばらくは経済の混乱が続くと見られることから軟調な推移gあ続こうか。
 NYパラジウムも下落した。今後パラジウムの価格は軟調に推移すると考える。プラチナ価格が自動車向け需要の減少観測とドル高の進行で下落しているため、代替品として需要が減少すると見られるためだ。また、非常に多い地上在庫(弊社見積もりではチューリッヒに8百万オンス、ロシアに10百万オンスの地上在庫があると見ている)が、価格の上限を押さえることとなろう。
・LME取引の期間が延長される。

(エネルギー関連ニュース)
・特になし。

(非鉄金属)
 昨日の銅価格は大幅に下落した。欧州にまで金融機関の経営悪化の波が広がる中で、7,000億?の金融安定化策では不十分では、との味方が広がる中、欧州・米州の経済統計が悪化したことから手仕舞い売りが加速した。この下落の過程で9月18日の安値である6,625?を割り込んだところから下げが加速し、一気に6,500?の心理的節目を割り込むこととなった。尚、LMEは夜間の米下院の金融安定化法案否決は時間的に織り込んでいない。コンセントレートの継続的な不足や中国の需要が高い固定資産投資に見られるように堅調である等のファンダメンタルズの強さもあって下値は堅いと見ていたが、予想だにしない金融危機の広がりを受けてしばらくは下落圧力が強まることになろう。引き続き各国政府の対応には要注意である。LME在庫は▲1,250Mt減少、(FSCは3.8日)、(キャンセルワラント率は2.6%)。売買高は11,140枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近を中心に大幅に全ゾーン低下している。C-3(Cash vs 3M Fwd)は21?バックとバック幅を縮小した。
 昨日の亜鉛価格は大幅に下落した。欧州まで金融機関の経営悪化の波が広がる中、米の金融安定化策では不十分との味方が広がり、株価の下落を映じて亜鉛価格も大幅な調整となった。欧米経済指標の悪化も下げに拍車を掛けたようだ。LME在庫の減少やドルの下落は殆ど材料視されなかった。結果、亜鉛は主要なチャートポイントを全て下抜けして水準を切り下げた。コスト割れの生産者が増加していると考えられることから1,600?を下回る水準までの下落を想定していなかったが、政治を巡って想定していなかった事態が発生しているため、この水準を割り込む可能性も短期的には視野に入れざるを得ない。LME在庫は▲1,125Mt減少、FSCは4.7日(キャンセルワラント率は3.6%)。売買高は5,443枚。イールドカーブは期近を中心に全ゾーンパラレルに低下している。C-3は28?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の鉛価格は大幅に下落した。欧州まで金融機関の経営悪化の波が広がる中、米の金融安定か策では不十分であるとの見方と、株価の大幅な調整といったマイナス材料を受けてセンチメントが悪化、手仕舞い売りで大幅に水準を切り下げることとなった。亜鉛と同様に主要なチャートポイントは全て下抜けした。LME在庫が減少を継続しているが、昨晩に関しては全く材料視されなかった。今後も景気の悪化とともに自動車向け需要が減退すると予想される一方で、在庫の減少が続いていることから現状水準での高止まりが続くことになると考えていたが、想定しない事態になっているため、しばらくは下値を探る動きになりそうだ。LME在庫は▲1,175Mt減少、(FSCは2.7日、キャンセルワラント率は4.0%。)。売買高は1,938枚。イールドカーブは期近の下げ幅が大きく、ベアスティープニングしている。C-3は19?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日のアルミ価格は大幅に下落した。米金融安定化法案の効果は大きくないと見たファンドの売りや、各国株価の調整といったセンチメントの悪化材料を受けてアルミ価格は大幅な調整となった。LME在庫が増加していることも地合いを悪化させている。この結果、昨年複数回トライしている2,400?の攻防ラインをトライする動きとなった。将来は中国からのアウトフローが減少する懸念もあって、下落局面では安値拾いの買いも入りやすく一本調子の下落にはならないだろうとのスタンスであったが、今まで想定していなかった事態が政治主導で発生しているため、下落余地が広がっていると考えられる。当面、政治主導で予断を許さない状況が続くことになろう。LME在庫は+2,200Mt増加、(FSCは12.0日)。(キャンセルワラント率は1.3%)。売買高は10,111枚。イールドカーブは期近を中心に低下し、ベアスティープニング。C-3は50?コンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。
 昨日のニッケル価格は下落した。LME在庫が1,000Mtを超える増加となる中、米金融安定化法案の実効性に関して懐疑的な見方が広がる中、各国株価が金融不安を背景に大幅に調整したことが地合いを悪化させた。LME在庫は+1,254Mt増加、(FSCは12.9日)、キャンセルワラント率は1.6%。売買高は1,199枚。イールドカーブは期近を中心に大幅に全ゾーン低下している。C-3は235?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の錫価格は下落した。米金融安定化法案の効果を疑問視する動きが広がる中、欧州金融機関の業況も悪化したことから各国株価が調整、センチメントの悪化と実態経済の先行き見通しの不透明感の高まりから錫も調整を余儀なくされた。結果、10日移動平均線でサポートされたもののやはり投機の影響を受けにくい非鉄金属であることから、需給のタイトさを映じて下げ幅は限定された。インドネシアや中国の生産輸出状況に改善が見られない中(インドネシアは悪化)、ファンダメンタルズを材料にしっかりとした推移が続くと考えているものの、米金融安定化法案が否決されたことで下げ余地を探る展開にならざるを得ないだろう。LME在庫は▲20Mt減少、(FSCは5.8日)、キャンセルワラント率は11.54%。売買高は460枚。イールドカーブは全ゾーン略パラレルに低下している。C-3は85?バックとバック幅を縮小した。

(エネルギー)
 昨日のNY原油は大暴落した。金融危機が欧州金融機関に波及する中、市場の流動性低下を嫌気したポジション調整の売りが欧州時間の早い時間から入り、10日移動平均線を割り込んだところから下げが加速、10?を超える下落となった。その後、米下院で米金融安定化法案が否決されたことも材料となったが、この時点で原油価格は96?台まで下落しており、今回の法案否決が材料になったわけではなさそうだ。昨日の下落はその前から「米金融安定化法案がそもそも7,000億?で足りるのか?これで景気悪化が落ち着くのか?」といったことを疑問視する投資家のリクイデーションの動きが前もって発生していたためである、と考えられる。米国原油・石油製品需給はタイトな状態であるものの、状況が大きく変ってしまった。イールドカーブは期近が低下しベアスティープニングしている。Brentも期近の下げ幅が大きくベアスティープニング。直近限月の騰落率はWTIは▲12.3%、Brentは▲11.3%。
 石油製品も大幅に下落。RBOBも欧州時間の早い段階から下落を始め、10日移動平均線を割り込んだところから下げが加速、一気に先週の休んである233?を試す動きとなった。在庫水準が危機的なレベル(FSCベース)にあることから価格は高止まりし易いと見ていたが、政治主導で状況が一変してしまった。イールドカーブは期近の下げ幅が大きいが全ゾーン低下している。直近限月の騰落率は▲12.6%。ヒーティングオイルも下落。こちらもRBOBと同様の相場展開で、10日移動平均線を割り込んだ辺りから下げが加速した。イールドカーブは期近の下げ幅が大きいが全ゾーン低下している。直近限月の騰落率は▲9.3%。ICEガスオイルは下落。イールドカーブは期近を中心に全ゾーン大幅に低下。直近限月の騰落率は▲4.9%。

(ひとりごと)
ハリケーンの被害でちょくちょくメキシコ湾が脅かされる。
2008年は夏場の1ヶ月間、ほとんど稼働しないって時があった。
すごいことである。
その時、とある外国人の友人(エネルギー業務に携わる)に質問されたことがある

「日本はたくさんハリケーンが来ると思うのだが、被害は出ないのか」

と。
「赤道近辺でハリケーンが発生するので日本に到達するときには勢力が弱まっており、メキシコ湾程の被害は出ない」

が答えなのだが、私は日本の建築基準は厳しく堅固にできているので影響が少ない、と説明したくて説明したのだが
如何せん適当な英語が思いつかない、でついつい以下のように言ってしまった

「日本のビルは『アンチ・ハリケーンシステム』が付いているので大丈夫なんだ」

と。
そしたら当然のごとく以下のような反応が


友人「アンチ・ハリケーンシステム!?すごいな、どんな設備何だ?日本の建物にはみんなついているのか?」
私「ついている(といっても、堅固にできてます、って意味で言ったつもりなんだが)」
友人「すごいな!!それはソニー製か?トヨタ製か?」
私「鹿島建設や、大林組製です...」

あああああああああ...すみません。
またとんでもないことになってしまいました。
欧米の投資家がハリケーンのシーズンに、建設関連株を間違って買っていないかと
実はこの数年私はビクビクしているのでした。
また、嘘をついてしまいました...