ノーベル賞

(商品市況概況)
「とりあえず買い戻し」
 昨日のコモディティ価格は買い戻しで上昇して引けた。各国中央銀行が金融不安を払拭する目的で資金供給や政府管理を強化したり、金利を引き下げる等の景気安定化策を講じる中、大きく売り込まれていたコモディティにはさすがに買い戻しが入っている。先週末お休みであった中国勢が市場に戻ってきていることも、安値拾いの買いを助長しているように見える。
 コモディティ価格は通貨・政治・実態経済・商品固有のファンダメンタルズの4要因で変動しているのはこのコラムでコメントしている通りであるが、足許最も影響が大きいのが、政治と通貨の影響であろう。 
 IMFが2009年の経済成長見通しを3.0%に下方修正するなど、少なくとも年内は商品価格には下押し圧力がかかり易い。また、価格下落は良いのだが価格下落に伴うコスト割れ生産者の減産が価格下落にも関わらず供給環境を悪化させると見られ、一定の価格下支え効果が期待される。

(経済関連ニュース)
南部陽一郎小林誠益川敏英の3氏、ノーベル物理学賞を受賞。
アイスランド中銀、非常事態を宣言、ロシアに40億クローナの融資を要請。対ユーロへのクローナ相場の固定を決定。
バーナンキ議長、景気が悪化し、インフレ懸念が後退する中利下げの可能性を示唆。
IMF「世界経済成長率は2009年に重大な下降期に向かう。」 2009年の世界経済成長率は3.0%、米国は0.1%、日本は0.5%に。
・9月インドネシアCPI 前年比+12.14%(前月+11.85%)、市場予想+11.96%。これを受けインドネシア中銀は5ヶ月連続で政策金利を引き上げ、9.25%に。
・8月英製造業生産 前月比▲0.4%、市場予想▲0.2%。
・8月独製造業受注指数 前月比+3.6%(前月改定▲1.3%(速報比+0.4%))、市場予想+0.5%。予想を大きく上回る伸び。
・ECB オルドネススペイン中銀総裁「相当な世界的金融危機に直面」、クアデンベルギー中銀総裁「利下げの可能性を否定できない」
FRB、CP購入制度の導入を決定。企業の資金繰り悪化対策。
オバマ大統領「当選したら、エタノールの使用を加速する。バイオ燃料政策は原油依存度の低下に寄与している。」

・ドルは対ユーロで小幅下落。バーナンキ議長が追加利下げを示唆したことや、売られすぎが一巡し買い戻しが入ったためと考えられる。円も対ドルで下落。ここ数日の急速な下げを嫌気して買い戻しが優勢となった。
日本株は大幅に続落、場中一時、10,000円を割り込む展開となった。米金融不安に端を発する世界的な金融不安の高まりを切っ掛けとする世界的な景気悪化懸念が極めて強くなっていることからキャッシュ化の動きが相次ぎ、輸出関連、金融、素材等幅広く売られた。米国株は大幅に続落。クレジットクランチの波が広がる中、銀行や不動産といった銘柄が売られた。バンカメは減配と増資発表などが嫌気されて大幅安、MSやJP等も売られた。

穀物市場サマリー)
・大豆価格は小幅上昇。ドル安の進行や、アルゼンチン農家の関税に関する政府抗議が再開したことが材料視された。ただし9?を下値に値ごろ感からの買いが入っただけのように思える。イールドカーブは期先が上昇し、ブルスティープニングしている。
・トウモロコシ価格は下落。取引序盤は堅調な推移であったが、景気後退やより割安な小麦へのシフトなどが起きていることから需要のサポートがなく、水準を切り下げる動きとなった。イールドカーブは殆ど変わらず。期先のみ小幅場低下している。
・小麦価格は上昇。価格の大幅下落に伴う割安感から、家畜向けの需要が増加するとの期待もあって小幅上昇した。大豆、トウモロコシとも同じであるが、「大騒ぎ」するほどの材料が出ているわけではなく、収穫の増加見通しと需要の悪化見通しで調整が続いている状況。イールドカーブは全ゾーン小幅上昇。

非鉄金属関連ニュース)
・NY金は上昇。世界景気の悪化を背景に各国中央銀行が利下げを実施、代替通貨としての金の需要が高まったためと考えられる。また、久しぶりにドルが反転下落したことも支援材料となったようだ。
 今後については、1990年台以降、最も急速な速度で進行するドル高が金価格の下押し材料になることが予想されるが、米景気の悪化と金利の引き下げ観測の強まりもあってこのままドルが一本調子で強含むことは考えにくく、一定の下支え効果をもたらすと予想する。当面は上にも、下にも行きにくい相場展開になるのではなかろうか。
 NY銀も上昇。金の上昇に連れる形となった。しかしながら工業品である銀は株価の大幅調整に伴う景気悪化の影響の方が大きく、上昇率は金程ではなかった。
 先週のCFTCポジション報告によるNon-Commercialポジションは、金はロングが141,026(前週比 ▲15,786)、ショートが23,240(前週比 ▲12,556)となったことから、ネットで117,786(前週比 ▲3,230)となった。銀はロングが30,405(前週比 ▲15,786)、ショートが12,069(前週比 ▲12,556)となったことから、ネットで20,696(前週比 ▲7,559)となった。

・NYプラチナは反発。各国中央銀行が利下げを行う中、代替通貨として金が選好された。1,000?の節目を下回るレベルではレベル感から安値拾いの買いも入り易い。
 急速に進行するドル高と経済状況の悪化を受けて、プラチナ価格を前回見通しから修正した。中期的な見通しについてプラチナは、低い水準で安定すると考える。世界経済への影響が大きい米景気の悪化、GM、フォードといった自動車産業の景況感悪化に反映される自動車販売の減少に伴う触媒需要の減少観測を受け、このコラムで指摘してきた需要減少のリスク要因の影響が大きくなってきている状況であるためだ。引き続き、2008年、2009年のプラチナ需給は各々181キロオンス、458キロオンスの供給不足の状態になると考えているが、供給不足は地上在庫で相殺されることとなろう。長期的な観点に立った場合、米当局が環境面に配慮しディーゼル車の使用を推進、普及率を引き上げる見通しであり、AngloPlatの見通しでは普及率が5-8%であればさらに300キロオンス〜500キロオンスの需要増が見込まれる。
 NYパラジウムは下落。今後パラジウムの価格は軟調に推移すると考えているが、中期的には地合いは改善すると見ている。環境規制の高まりから引き続きプラチナ・パラジウムの需要は堅調に推移すると見られるためである。しかしながら、チューリッヒ、ロシア、その他の地区の地上在庫が各々8百万オンス、10百万オンス、2百万オンス程度あると見られることや、ドルが上昇サイクルに入っていることが価格の上昇を抑えることになろうか。

(エネルギー関連ニュース)
・米在庫統計市場予想 原油+2.2MB、ガソリン+1.5MB、ディスティレート▲0.9MB、稼働率+6.0%
リビアOPECによる減産を呼びかけ」

(非鉄金属)
 昨日の銅価格は上昇した。5,500?の節目に近づくレベルでは安値拾いの買いニーズも根強く、5,500?を挟む攻防となった。また、ドル安が進行していたことから欧州時間にかけて買いが優勢となっていたのだが、LME在庫が欧州で急増し、急落。その後も引き続き安値拾いの買いの動きが継続し結局前日比プラスで引けている。休み明けの中国勢の買いが期待されていたが、「安値では買おう」というスタンスのようだ。米金融安定化法案は可決されたが、市場は金融機関の経営が悪化した際の資本注入等の追加策の成立を要求しはじめており、依然として政治要因が相場を撹乱することになろうか。コンセントレートの継続的な不足や中国の需要が高い固定資産投資に見られるように堅調である等のファンダメンタルズの強さもあって下値は堅いと見ていたが、予想だにしない金融危機の広がりが実体経済に悪影響を与えていることが明白であり、しばらくは下落圧力が強まることになると考える。LME在庫は+9,600Mt増加、(FSCは4.0日)、(キャンセルワラント率は2.9%)。売買高は13,091枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近を中心に上昇し、ブルスティープニングしている。C-3(Cash vs 3M Fwd)は104?バックとバック幅を拡大した。
 昨日の亜鉛価格は上昇した。取引序盤から安値近辺にあることから安値拾いの買いが優勢となった。その後ドル安の進行も手伝って相場は上昇し、1,600?の節目をう伺う展開となったが、NY時間の株の下落を受けて上げ幅を削る動きとなった。足許の価格下落で多数の生産者がコスト割れになっていると見られ、今後は生産調整の影響を慎重に見極めなければならなくなるだろう。LME在庫は▲825Mt減少、FSCは4.8日(キャンセルワラント率は3.7%)。売買高は3,632枚。イールドカーブは期近が上昇し、ブルフラットニングしている。C-3は22?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の鉛価格は下落した。取引序盤から安値拾いの買いが入り、NY時間にかけてのドル安の進行を受けて堅調な推移となった。しかしながらNY時間にはいってから株価が調整し地合いが悪化、結局行って来いで寄り付きと略変わらないレベルで引けた。今後も景気の悪化とともに自動車向け需要が減退すると予想されるものの、カーバッテリーや電気自動車といったバッテリー需要が今後も堅調に推移すると見られることから、他の非鉄金属比では割高に推移すると考える。LME在庫は前日比変わらず。(FSCは2.7日、キャンセルワラント率は5.6%。)。売買高は1,888枚。イールドカーブは期先の下げ幅が大きくベアフラットニングしている。C-3は19?コンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。
 昨日のアルミ価格は上昇した。取引序盤から安値拾いの買いが継続し、ドルも久しぶりに対ユーロで下落したことから買いが入り、じりじりと水準を切り上げる展開となった。また、エネルギー価格が反発したことも支援材料となった。今後は金融機関の業績悪化に伴い、資金繰り目的で現物を売却する動き(特に米国で顕著)が加速すると見られることから、低い水準でのもみ合いが続くことになろう。当面、政治、金融当局対応を巡って神経質な相場展開になると考える。LME在庫は+2,125Mt増加、(FSCは12.1日)。(キャンセルワラント率は1.1%)。売買高は10,448枚。イールドカーブは期先の上げ幅が大きい。C-3は48?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日のニッケル価格は下落した。前日比マイナスで寄り付いたものの、LME在庫の増加やドル安の進行等のプラス材料を受けて寄り付き比上昇して引けた。LME在庫は▲174Mt減少、(FSCは12.8日)、キャンセルワラント率は1.5%。売買高は997枚。イールドカーブは期先の下げ幅が大きい。C-3は191?コンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。
 昨日の錫価格は前日比変わらずであった。取引序盤は買い戻しが優勢となって小幅上昇したものの、欧州時間にはいってから急落。その後ドル安が進行したために引けにかけてはジリ高の展開となった。インドネシアや中国の生産輸出状況に改善が見られない中(インドネシアは悪化)、ファンダメンタルズを材料にしっかりとした推移が続くと考えている。一方で世界各地に金融不安が拡大し、実体経済も悪化していることから当面は需給材料とマクロ材料の綱引きが続くことになろう。金融機関の経営悪化に伴い、市場の流動性が著しく低下していることが価格を大きく変動させることになると見ている。LME在庫は▲100Mt減少、(FSCは5.3日)、キャンセルワラント率は5.66%。売買高は391枚。イールドカーブは期先を中心に全ゾーン上昇している。C-3は12?バックとバック幅を拡大した。

(エネルギー)
 昨日のNY原油は反発した。強含んでいたドルが対ユーロで下落したことや、価格下落に伴うOPECの減産の可能性等を好感して買いが入った。と、いっても以前コストベースの下限として意識されていた85?近辺まで価格が下落していることもあって、値ごろ感からの買いが入ったものと見られる。しかしながらNY時間に入ってから株価の下げが止まらなかったことから地合いが悪化し、上げ幅を削る展開となった。引き続き各国金融機関の経営悪化懸念が払拭されない中、非常に荒っぽい展開が予想される。イールドカーブは全ゾーン小幅上昇している。Brentも同様に小幅上昇している。直近限月の騰落率はWTIは+2.4%、Brentは+1.1%。
 石油製品も小幅上昇。RBOBは取引序盤はドル安の進行を受けた原油の小幅反発を受けて上昇したものの、NY時間に入ってから株価の下落もあって上げ幅を削る動きとなった。イールドカーブは期先の上げ幅が大きいが全ゾーン小幅上昇している。直近限月の騰落率は+0.2%。ヒーティングオイルも上昇。全く同じ相場展開で、NY時間にかけて買い戻しで上昇し、NY時間にはいってから下落する、という展開であった。イールドカーブは期先を中心に全ゾーン上昇している。直近限月の騰落率は+1.2%。ICEガスオイルは下落。イールドカーブは期近を中心に低下。直近限月の騰落率は▲1.5%。
 尚、余り指摘されていないが、ハリケーンの頻発に伴い北米地区での石油製品・原油在庫の水準は低く、景気後退に伴う需要減少観測はあるもののファンダメンタルズ的には需給はタイトな状態となっている。

(ひとりごと)
日本人のノーベル賞受賞者が3人も出ましたね。
理科系人間ならば誰しもが一回は夢見るノーベル賞
湯川秀樹の伝記を読んで、いつか自分も、と勝手に思っていた子供の頃が思い出された。

そもそも日本は資源がない国であったので、こうした理論物理学が発達したわけだが
こうした理論を構築して
その後、大規模な実験を行って理論が正しいことが裏付けられた、という記事を読むと
やはり、ロジックをキチンとつめることが何よりも重要なのだと改めて思った。

我々金融機関の提案もそうありたいと思う。