2008年を振り返って

(ニュース)
三井住友海上、あいおい、ニッセイ同和の3損保、統合を発表。統合が実現すれば東京海上を損害保険料収入で5,000億円上回る一大グループが誕生することに。

(ひとりごと)
 私は本日が、今年の最終出勤日である。恐らくこのコラムを読んでいる人はそんなに居ないものと思うのだが、少し時間が空いたので2008年を振り返りつつ2009年を展望してみたい。
 考えてみれば2008年は、2007年に事態が表面化したサブプライムローン問題の影響で、出だしから「いつ景気が悪化するのか?」が意識されていた。しかしそれを吹き飛ばす事態が年初早々に起こる。一大生産国であり消費地である中国が豪雪の影響で電力供給ができなくなり、多くの非鉄金属の生産に影響が出てしまったのだ。ついで2月には四川で大地震が発生、この地区で生産される非鉄金属レアメタルの供給に懸念が生じた。結果、非鉄金属に関しては景気が後退する可能性が高まっているにも関わらず、年初から暴騰することとなった。また、エネルギーに関して言えば、ラニーニャの影響で南半球が渇水であったことから同地区向けのディーゼル需要が旺盛であり、こちらも年初から大幅に上昇することとなったのだ。ポイントは景気が悪化していることを忘れてしまうかのような相場上昇が起きてしまったことだろう。この間、確実に実態経済は減速を続けていた。
 この高騰局面においては生産者は一斉にヘッジ取引を見送るために市場では「売り」を入れる参加者が減少、相場の上昇に拍車がかかった。このとき巷で言われた「ヘッジファンド悪玉説」の台頭がさらに市場参加者を減少させ、相場上昇を促すこととなった。しかしこの相場上昇局面では多くのヘッジファンドが実需の買いに対して売り向かっており、むしろファンドの存在がなければ相場はさらに大きく上昇することになっていただろう。
 しかしこの相場も長く続かない。実需の売買がキチンと成り立つ状況でなければ、そういった相場は長く続かないものである。結果、バーナンキ議長が7月に米景気の後退を示唆したタイミングで相場の環境が一転することになる。殆ど商いを伴わずに上昇してきた原油価格は急落し、加えて9月のリーマンショックが追い討ちをかけ、信用収縮が急速に進む中「価格が付いているものは売却して現金にせよ」といった動きが活発化することとなった。これはコモディティのみならず、株や債券、為替商品でも同様のことが起きた。ここで言いたいのは、景気悪化に伴う需要減少に加えて金融システム不安、という新たな不安定要素の登場により、市場が激しく混乱したということである。どうも、リーマンショックと景気悪化に伴う需要減少を同じカテゴリーで議論する人が多いようであるが、この2者は「発生した時点においては」全く別種のリスクであったと考えられる。その後の相場の下落と実態経済の悪化は皆さんのご存知の通りである。

 恐らく2009年は日本、世界の景気は回復しないであろうと予想される。簡単に言えば「景気が良い国が世界中どこにもない」ためである。とはいえ、恐らく2009年いっぱいで著しい景気悪化には歯止めが掛かると期待される。そうなると2010年の中ごろから商品価格は上昇することになると予想される。しかし、である。1990年代に十分な上流部門への投資が行われていなかったため、中国の需要が急速に増加した2002年から商品価格が高騰したことを忘れてはならない。現時点においてエネルギー、非鉄金属とも上流部門の案件は、信用不安の拡大で金融機関が貸し出しを行えないことや、需要自体の著しい減少を受けて殆どがペンディングとなっている。このことは、景気が回復し、需要が増加し始めると価格が「短期間に」急上昇する可能性が高いことを示している。また、景気回復過程で価格が急騰すれば今度は景気腰折れ懸念が強まり、価格は下落することになると予想される。つまり、来年以降、商品価格のボラティリティは大きく上昇する可能性がある、ということである。
 
 日本企業は激しく変動する市場のリスクを如何にコントロールするか、という命題を突きつけられることになろう。日本は加工貿易で成り立っている国である。引き続き商品市場の変動から目をそむけることはできない。また、現物のオペレーションを工夫することだけでリスクマネジメントを行うのは、そろそろ限界に来ているのではないだろうか。