(商品市況概況)
「上昇」
昨日のコモディティ価格は軒並み上昇した。株式市場が銀行の資産査定を材料にして、前日比マイナスで寄り付いた後、比較的堅調な推移となったため、商品全体に幅広く買い戻しが入った。但し、米ドルが強含んだことから、貴金属は手仕舞い売りに押された。但し基本は実体経済の悪化の影響もあって消費量自体は未だ回復しておらず、どちらかといえば売られすぎが修正される形の上昇となっており、むしろ、オプションの防戦売買等のテクニカルな取引が主となっており、商品価格自体に個別のファンダメンタルズ材料がある、というわけではなさそうだ(但し、国内業者支援等を目的として、中国政府が一次産品の備蓄を行う等のプラス材料は存在。昨晩は亜鉛が物色された)。
経済対策の効果が出るのにはまだ時間を要すると見られ、足許からの急回復は難しいものと考えているが、コスト割れ水準での推移が続く商品(アルミや亜鉛等)は、価格是正の観点から買いが入る可能性はあると考えている。適正な価格水準(少なくともコストベース程度までの上昇)で取引されないと、特に経済が弱っているときには景気にマイナスの影響を与えるため、上がった方がプラスであるとは思いつつも急速な上昇にならないで欲しい、というのが私の本音である。急速に円安も進行しているため円建の原材料価格がまだ安い今こそ、何かしらの手段を講じるタイミングなのではないだろうか。
(経済関連ニュース)
・Q408英GDP改定 前期比▲1.5%(速報比変わらず)、市場予想▲1.6%。
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比▲15.1%の743.5、借換指数 前週比▲19.1%の3,618.0、購入指数 前週比▲2.6%の250.5。
・1月米中古住宅販売 前月比▲5.3%の449万戸(前月改定474万戸)、市場予想479万戸。
・ドルは続伸。米中古住宅販売の悪化から、再びドル需給が逼迫するとの見方が強まりドルは上昇することとなった。ドルは対円でも上昇。日本の景気悪化と政府の対応の遅れを嫌気して円は売られ続けている。
・日本株は反発。FRB議長発言を受けて米株が大幅に上昇したことから連れ高となった。円安の進行もあって輸出関連株も高い。米国株は下落。但し、前日比マイナスで寄り付いた後、米金融当局による金融機関の資産査定の発表が材料視され、比較的堅調な推移となった。
(非鉄金属関連ニュース)
・NY金は大幅に続落。2営業日連続でドル高が進行したことが端的に嫌気され、手仕舞い売りに押され3営業日連続の下落となった。FRB議長の発言やオバマ大統領の演説などを受け、極端な景気悪化に対する懸念が和らいでいることが、資金が退避していた金に手仕舞い売りが入った。但し景気回復はまだ始まっていないことから金物色の流れに大きな変化はない元の見る。銀も金の下落を受けて水準を切り下げた。
・NYプラチナ価格は買い戻しで上昇。極端な景気悪化への警戒感が薄らぐ中、買い戻しが優勢となった。パラジウムは小幅下落。
・中国政府、国内亜鉛精錬会社からの亜鉛購入で合意。総額168百万ドル。SRBは年間の購入量を300KMtまで増やす見込み。
・1月銅電線出荷量速報 前年比▲21.2%の53.1KMt。自動車向け(前年比▲39.3%)、電気機械向け(▲38.4%)が響く(電線工業会)。
(エネルギー関連ニュース)
・米在庫統計 原油+0.7MB(市場予想+1.0MB)、ガソリン▲3.3MB(±0.0MB)、ディスティレート+0.9MB(▲1.5MB)、稼働率▲0.9%(▲0.1%)。
(非鉄金属)
昨日の銅価格は上昇した。米株価が前日比マイナスではあったものの寄付きから底堅い推移になったことや、中国政府の市中在庫買い上げの動きを受けて大幅に上昇した。そもそも寄り付きから30日移動平均線を上回っていたことが買いを入れやすくしたようだ。ファンダメンタルズについては先々コンセントレートが継続的に不足する可能性が高い環境に変りはないものの、企業や生産者の在庫調整圧力を受けてLME在庫が増加、短期的な需給がルーズになってきていることや中国政府や米国の経済対策が実体経済に影響を及ぼし始めるのは春先以降になると見られることから急速に上昇することは考えにくいが、チャート的には100日移動平均線となる3,650ドルを見てもおかしくない環境になっている。LME在庫は+1,800Mt増加、(FSCは11.0日)、(キャンセルワラント率は5.5%)。売買高は9,098枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近の上げ幅が大きく、ブルフラットニングしている。C-3(Cash vs 3M Fwd)は32ドルコンタンゴとコンタンゴ幅を縮小した。
昨日の亜鉛価格は上昇した。株が堅調に推移したことや、中国政府による亜鉛買い上げの報道、キャンセルワラント率の上昇が支援材料となった。結果、10日移動平均線のレジスタンスを上抜け、30日移動平均線を試す動きとなった。チャート的には各種移動平均線が全て現在の亜鉛価格を上回っており、アップサイドに行きにくい展開となっている。LME在庫は+725Mt増加、FSCは11.3日(キャンセルワラント率は7.0%)。売買高は4,395枚。イールドカーブはパラレルに上昇している。C-3は24ドルコンタンゴとコンタンゴ幅を縮小した。
昨日の鉛価格は上昇した。株価が比較的堅調に推移したことや、非鉄金属全体に買い戻しが入る流れを受けて反発し、1,000ドルラインを回復することとなった。但し米自動車会社の業績悪化懸念に伴う需要減少観測は引き続き根強く、大幅な上昇とはならなかった。LME在庫は+625Mt増加、(FSCは2.5日、キャンセルワラント率は3.1%。)。売買高は1,450枚。イールドカーブは期近の下げ幅が大きく、ベアスティープニングしている。C-3は12ドルコンタンゴと前日と変わらず。
昨日のアルミ価格は上昇した。株価が堅調に推移していることや、1,300ドルストライクのプットオプションの防戦売買で上昇したと考えられる。この結果、再び10日移動平均線を回復するに至った。今後は実態経済の悪化を受けて低い水準での推移が続くと考えられるものの、コストベースで見た場合、限界レベル(1,750ドル程度)を大きく下回って価格が下落している状態が長く続くとは考えにくく、企業の在庫整理も進捗していると予想されることからそろそろ底入れするのではなかろうか。期先は引き続き高い水準での推移が続いている。LME在庫は+9,775Mt増加、(FSCは29.6日)。(キャンセルワラント率は0.8%)。売買高は8,459枚。イールドカーブは略パラレルに全ゾーン上昇している。C-3は36ドルコンタンゴとコンタンゴ幅を縮小した。
昨日のニッケル価格は上昇した。株価が比較的堅調に推移していることや限界コスト近辺まで水準が低下しており(弊社は2009年のニッケルの限界生産コスト水準を7,289〜9,729ドルと想定)、非鉄金属全体に買いが入る中、ニッケルも連れ高となった。LME在庫は+1,278Mt増加、(FSCは26.7日)、キャンセルワラント率は1.4%。売買高は1,224枚。イールドカーブは略パラレルに上昇している。C-3は77ドルコンタンゴとコンタンゴ幅を縮小した。
昨日の錫価格は上昇した。株価が比較的堅調に推移する中、非鉄金属全体に買い戻しが入る流れを受けて錫も上昇した。但しLME在庫の増加やドル高の進行といったマイナス材料もあって上値は限られた。イールドカーブがバックワーデーションの状態が続いていることが、需給が逼迫していることを示している。LME在庫は+165Mt増加、(FSCは8.6日)、キャンセルワラント率は7.25%。売買高は506枚。イールドカーブはパラレルに上昇している。C-3は235ドルバックとバック幅を縮小した。
(エネルギー)
昨日のNY原油は上昇した。夜間に発表された米在庫統計でガソリン在庫が予想に反し減少していることなどから、長らく上抜けできなかった50日移動平均線を上抜け、期近は大幅な上昇となった。特にクッシング在庫の減少を受けてWTIは大幅な上昇となっている。とはいっても石油製品需要が再び前年比マイナスに転じていることから上げ幅も限られた。イールドカーブは期近が上昇し、ブルフラットニング。直近限月の騰落率は+5.6%。Brentも上昇。夜間の在庫統計を受けて大幅な上昇となった。イールドカーブは期近が上昇し、ブルフラットニングしている。直近限月の騰落率は+3.9%。Brent/WTIのネガティブスプレッドは小幅縮小している。
石油製品も上昇。RBOBは在庫統計を受けて上昇。長らく上回れなかった10日移動平均線を上抜けたところから上げが加速し、一目均衡表の雲の上限一杯まで値を上げた。イールドカーブは期近の上昇幅が大きくブルフラットニング。直近限月の騰落率は+6.6%。ヒーティングオイルも上昇し、10日移動平均線をついに上回って引けた。但しディスティレート需要が再び前年比マイナスに転じていることから上値も重い。イールドカーブは期近の上げ幅が大きく、ブルフラットニングしている。直近限月の騰落率は+2.3%。ICEガスオイルも上昇。イールドカーブはパラレルに上昇している。直近限月の騰落率は+1.1%。
(ひとりごと)
この前、経済データランキング、というウェブを見ていたところ
「リスク回避志向」の高い国、低い国というのがあった。
どういう統計の取り方をしてるか知らないが、数値が高いほどリスク回避志向が強い、ということになるらしいが
リスク回避志向が一番強い国は「ギリシャ」であった。日本はポルトガル、ベルギー、ポーランドに次いで5位。
日本人はリスク回避志向が極めて強いらしい。
反対にリスク回避志向が低い国は、デンマーク、スウェーデン、イギリス、アイルランド、アメリカ、となっていた。
金融危機で揺れたアイスランドは...あら、データがないみたいですね。
さらに「長期的視野」という項目もあった。数値が高いほど、長期的視野にたって物を考える国、ということらしい。
日本はこの分野で堂々の1位。2位が韓国。
アメリカは15か国中11位、イギリスは12位となっていた。
そういった中
昨日のオバマ大統領の演説で「短期的な利益が長期的な反映よりも重視される時代をすごしてきた...」とあったが
なんだか上の統計の結果に似ている。
アメリカは、短期的な利益の追求ではなく長期的な利益を追求する国に変るのだろうか?
日本もこの統計にあるように、長期的な視野に立って戦略を立てられる国になって欲しいものである。