今回の米在庫統計は原油ブル、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。原油は輸入の減少によりFSCが減少、ガソリンは需要が比較的堅調であることからFSCが低下、ディスティレートは引き続き高い在庫水準が続いており、需要も不冴えなことから著しく在庫水準が高い状態が続いている。今後は需要が景気底打ちに伴い本当に回復するかどうかがポイントとなるが、足許の価格上昇ピッチが速すぎるため、一時夏場に息切れとなる可能性が高いと予想している。メインシナリオである秋口にかけて景気が二番底を付けに行く動きに、製品需要がどうフォローしていくかがポイントとなる。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少したことから、稼働率が小幅低下したものの市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,358KBD(▲0KBD)と過去5年の平均水準を維持。輸入は8,970KBD(▲676KBD)と先週から一転、P3とP5の輸入が大幅に減少したことが影響した。結果、総供給量は14,328KBD(▲676KBD、前週比4.7MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP1〜P3の稼働率の低下が大きく、稼働率は全体で85.9%(▲0.5%、前週比0.5MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲4.6%,▲0.7%,▲0.1%,+1.8%,+1.0%となっている。計算上在庫は前週比で▲4.2MBの▲1.36MBの在庫減少(先週の在庫増減は+2.9MB)となるが、計算を上回る▲4.4MBとなった。結果、在庫水準は361.6MB(▲4.4MB)となった。在庫はP4を除くすべての地区で大幅に減少しており、特にP3での減少が2.9MBと特に顕著であった。在庫量の変化はP1から順に、▲0.5MB, ▲0.6MB, ▲2.9MB, +0.0MB, ▲0.4MB となっている。FSCは23.8日(▲0.2日)と悪化。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるオペレーションは継続していると見られるが、原油在庫の水準は引き続き例年よりも高い水準に張り付いている。今週もSPRは増減なし。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は29.0MB(▲0.9MB)と大幅に減少しており、足許の景況感の回復と相俟ってイールドカーブのフラット化化に寄与すると見られる。統計としては市場予想比ブルな内容であった。
 ガソリン在庫は先週に続き減少した。稼働率の悪化を得率の改善が相殺し、生産が増加したものの、輸入も減少、需要も増加したことから大幅な在庫減少となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+1.3%と改善したことから8,951KBD(+154KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。輸入は872KBD(▲77KBD)と大幅に減少し、過去5年レンジを下回った。結果、総供給は9,823KBD(+77KBD、前週比0.5MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,823KBD(+77KBD、前週比0.5MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,233KBD(+57.5KBD, 前週比0.4MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,313KBD, 過去5年最高 9,454KBD, 過去5年最低 9,144KBD)となった。新型インフルエンザ問題が北半球では下火になったことから、ドライブシーズン中でもあり需要が回復してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.7%とマイナスの状態が続いているが、需要の前週比での変化率は+0.6%(例年+0.3%)となっている。今後需要の増加が継続するか否かは、景気回復の初期段階における価格上昇に消費者がどれだけついてこれるかに拠ると考えているが、現在の経済環境は決して価格の高騰を容認できる環境にあるとはいえないため、価格がこのままの水準であれば需要は夏場のピークを境に減少する可能性が高いと考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.1MBの▲0.1MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲0.2MB)となるが、計算を上回る▲1.6MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional79.9MB(▲4.8MB)、Blending119.5MB(▲7.0MB)となっている。この結果、FSCは21.8日(▲0.3日)と先週から低下し、一気に過去5年の下限レンジまで低下した。需要がこのまま堅調に推移するかどうかは繰り返しになるが今後の価格水準次第、ということになるが、予想以上に需要の回復はしっかりしているとの印象は否めない。統計としては明確にブルな内容であった。
 ディスティレート在庫は小幅な在庫減少に留まった。生産は稼働率が悪化し得率が▲0.7%と悪化したことから3,933KBD(▲119KBD)と減少。生産の内訳はULSD3,040KBD(▲94KBD)、ディーゼルオイル578KBD(+17KBD)、ヒーティングオイル315KBD(▲42KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は162KBD(▲46KBD)と横ばいで、過去5年レンジの下限を下回っている。この結果、総供給は4,095KBD(▲165KBD、前週比1.2MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,095KBD(▲165KBD、前週比1.2MBの在庫減少要因)、直近需要は3,576KBD(▲13.25KBD, 前週比0.1MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,091KBD, 過去5年最高 4,168KBD, 過去5年最低 4,032KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲13.3%と大幅な悪化が続いており、前週比ベースでも▲0.4%(例年+0.1%)と冴えない状況が続いている。全体のバランスでは前週比▲1.1MBの+0.6MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.7MB)となるところであるが、▲0.3MBの在庫減少となった。総在庫は150MB(▲0.3MB, 過去5年平均 113.9MB, 過去5年最高 122.3MB, 過去5年最低 106.4MB)となり、過去5年最高レベル122.3MBを大きく上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加を始めるのだが、既に高い水準まで在庫が積み上がっており在庫圧縮をせねばならない状態である。これはドライブシーズンであることからガソリンのFSCを高く維持するオペレーションを取らねばならず、結果的にULSD、ディスティレート在庫の水準を高止まりさせることとなっている。よって更に稼働率を引き下げにくい環境になっておりしばらくは、ディスティレート価格の下押し材料となることが予想される。製品毎の在庫の内訳はULSDが89.6MB(+5.6MB)、ディーゼルが20.2MB(▲2.0MB)、ヒーティングオイルが40.0MB(▲5.8MB)。FSCは41.9日(+0.1日)となった。これは過去5年の最高水準である29.7日をはるかに上回るレベルであり、明らかに多すぎである。この在庫の圧縮を進める必要があろう。統計としては引き続きベアな状況を脱していない。


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