流行り廃り

【商品市況概況】
「マクロ指標の悪化」
 昨日の商品価格は軒並み下落している。夜間に発表された米週間失業保険申請者数が大幅に増加したこと、フィラデルフィア連銀指数がマイナス圏に突入したことが嫌気され、株を中心にリスクテイクのアンワインドの動きが加速したためだ。米国の景気の先行きが売買材料となるのはこの春先ぐらいから続いており、一時、ユーロ問題で市場の関心がそちらに移ったためあまり取り上げられなくなったが、元に戻ったという感じであろうか。このコラムで維持していた「短期的に調整、中長期的に上昇」の見通しは、「現在の市場は過剰流動性の供給や経済対策の効果によるものであり、その効果が薄れる中で下落するが、新興国の旺盛な商品需要が中長期的には商品価格をけん引する」というベースの考え方に沿ったものであったが、「過剰流動性のさらなる供給と、さらなる経済対策実施期待(個別ファンダメンタルズ以外の追加要因)」を受けて相場が反転上昇したため、実情に合わせて1ヶ月ほど前に相場の見通しを変更したばかりであった。しかし、やはりファンダメンタルズの数値、特にこの不景気の発射台となった住宅関連、雇用関連の悪化の実情を突き付けられるとさすがに市場も無視できないということなのだろう。多くの商品が昨晩はリクイデーションで下落している。そうなるとどこまで下落するかが次の焦点となる。この点に関しても「下値ではそれなりの対策が打たれる」可能性が高いことから大きなレンジワークが継続しているので再び反発するという前提に立つと、今の材料と似たような議論が出ていたのが6月末でありこの頃の水準がひとつ参考になるだろう。この頃の原油価格は72ドル、銅は6,400ドル、アルミは1,930ドル、亜鉛は1,800ドル、ニッケルは19,000ドル、鉛は1,750ドル、錫は17,000ドル、金は1,200ドルである。非鉄金属は銅やすず、ニッケル等は在庫の減少が継続しているため(個別ファンダメンタルズに若干の違いがあるため)同列には議論はできないが、「ミクロからマクロへ」の動きの中でこれらの数字が意識される展開になってもおかしくはない。
 
 いずれにしても各国政府の打てる政策は限りがある。昨日も書いたが、最も効果的でかつ効果が持続するのは規制緩和や新規分野への投資である。消費者の消費を促進するような住宅関連対策、エコ関連対策は、景気の先行きが不透明な中での買い替え促進(=需要の前倒し)を行っても波及効果が小さいことは今回の米失業保険申請者数の増加や、米住宅関連指標の低迷が物語っている。米欧は日本と同様にデフレに突入する可能性が濃厚になってきたが、そうなると政府、金融当局(特に金融当局)が打てる手立ては少ない。成長分野への投資を含め、継続的な需要を喚起する政策の速やかな執行が期待されるところである。


【経済関連ニュース】
・Q210台湾GDP 前年比+12.5%(前期改定+13.7%)。
・米週間新規失業保険申請者数 前週比+12千人の500千人(前週改定488千人(速報比+4千人))。
・7月米景気先行指数 前月比+0.1%(前月改定▲0.3%(速報比▲0.1%))。
・8月フィラデルフィア連銀景況感指数 ▲7.7(前月5.1)。



【為替(FX)・株】
NY Dow  :10,271.21(▲144.33)
S&P500   :1,075.63(▲18.53)
NIKKEI225 :9,362.68(+122.14)
JPY/USD :85.39(▲0.07)
USD/EUR :1.282(▲0.003)
MRA CVIX(MRAコモディティ恐怖指数):27.3(▲0.2)
MRA RMI(MRAレアメタルインデックス):302.80(+0.58)

・ユーロは対ドルで下落。米経済統計の悪化を受けてドルへ資金が還流した。円は対ドルで一時84円台を付けるなど、米経済統計の悪化を映じた動きとなったが、23日に予定されている菅総理と白川日銀総裁の会見を控えて上げ渋った。
日本株は続伸。円高介入や追加経済対策実施への期待感から。米株は大幅に下落。米週間新規失業保険申請者数の悪化と、フィラデルフィア連銀指数のマイナス圏突入が嫌気された。インテルの真かフィー買収報道は完全にかき消された格好。


穀物市場サマリー】
Cbot Soybean :1,016.75(▲18.5)
Cbot Wheat :681.25(+25.25)
Cbot Corn :414.25(▲4.25)
CSCE Sugar :19.48(▲0.12)


非鉄金属・貴金属】
Comex Gold :1,233.80(+4.1)
Nymex Platinum :1,527.5(▲9)
Baltic Dry Inex :2,644.00(+86)
Iron Ore :147(▲0.6)
Chrome(クロム) :10,800(UC)
Cobalt(コバルト) :19.0(UC)


Copper 3M :7,305.00(▲85:18.75C)
 昨日の銅価格は下落した。LME在庫は+225Mt増加、(FSCは7.9日)、(キャンセルワラント率は8.0%)。売買高は14,805枚。C-3(Cash vs 3M Fwd)は19ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。

Zinc 3M   :2,090.00(▲45:28.5C)
 昨日の亜鉛価格は下落した。LME在庫は▲50Mt減少、FSCは18.9日(キャンセルワラント率は10.3%)。売買高は6,273枚。C-3は29ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。

Lead 3M   :2,105.00(▲18:26.25C)
 昨日の鉛価格は下落した。LME在庫は+25Mt増加、(FSCは7.8日、キャンセルワラント率は3.4%。)。売買高は1,384枚。C-3は26ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。

Aluminum 3M :2,066.00(▲39:6C)
 昨日のアルミ価格は下落した。LME在庫は▲5,100Mt減少、(FSCは43.1日)。(キャンセルワラント率は4.0%)。売買高は12,384枚。C-3は6ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。

Nickel 3M :21,795.00(▲105:62C)
 昨日のニッケル価格は下落した。LME在庫は▲300Mt減少、(FSCは31.5日)、キャンセルワラント率は2.9%。売買高は2,458枚。C-3は62ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。

Tin 3M   :21,100.00(+100:70B)
 昨日の錫価格は上昇した。LME在庫は+15Mt増加、(FSCは12.8日)、キャンセルワラント率は3.16%。売買高は201枚。C-3は70ドルバックと前日と変わらず。


【エネルギー関連ニュース】
WTI :74.43(▲0.99)
Brent :75.30(▲1.17)



【ひとりごと】
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来週の東洋経済さんに、私のコメントが掲載されるようです。
個人向けの金投資の話に関して、なのですが。



しかし、こういうと非常に何なのだが
商品市場にも「はやり」があるようだ
個人的には各分野で使用されている原材料に流行りも廃りもあるものではない、と思っていたが
(あ、ちなみに代替原料の開発が進んで、旧来型の素材の需要が減少する「流行り廃り」は除きます)
あるようなんですよね。



個人的にアナリスト業務を始めたのが2002年ぐらいからで
オフィシャルにアナリスト(というよりはストラテジストに近い)業務を始めたのが2005年
そのころ、メディアの方からさんざ聞かれたのが「原油価格動向」であった。
まあ、確かに10ドルだった原油が100ドルに、なんて話になると皆興味を持ちますよね
それに、エネルギー使っていない人いませんでしたしね
ジム・ロジャースも煽ってましたからね。



その後非鉄金属が取り上げられるようになる
(個人的にはこっちの方が製造業にインパクトがあるので、実は原油よりも気にしていたんですけど)
その次が穀物
これは、ガソリンの添加剤がMTBEからエタノールに変更される中(米国)で、とうもろこしに注目が集まったためだ。



その後リーマンショック



正直リーマンショック以降はマクロ経済とかシステム上の問題に焦点が当たって、商品価格に関する問い合わせは殆どなかった。
しかしこの間、全ての商品は着々と上昇して、油は70ドルが当たり前(昔はあんなに騒いだ水準ですよ)、銅は7,000ドルが当たり前になってしまった。
さらに言えば、この水準が当たり前と思う人が増えた。



これはその商品が、「市場系商品として市場参加者に幅広く認知されたこと」が要因であると考えている。
原油がいくらぐらいか?多分10ドルぐらい?っていう人はもうそんなにいないんじゃないだろうか。
特に原油は市場商品のみならず、投資商品としての地位を確保したため、特に株等との相関性が高まったとも言える。



最近は冒頭にもちょっと書いたが、金。
こっちは昔から投資商品であるが、ETFの普及で「幅広く」投資商品としての地位を確保したと言える。
(地位を確保することが良いことか悪いことかは、それを判断する人の置かれている状況によります)。
さらに、信用不安が続くので当分の間メディアで取り上げられることになると思う。



後は再び穀物
小麦の話を聞かれることが本当に増えた。ロシアのことがあったからなんですが...



と、つらつら書いて、何が言いたいかというと
コモディティ
というくくりの中で、その時その時の「流行り廃り」があるということである。
投資家が「コモディティ」のくくりの中で投資を行っているためとも言える。
と、なると次に来るのは、鉄鉱石、原料炭、船賃、レア・メタルあたりになると思う。


日々、勉強ですね...。