神保町の古本屋

【商品市況概況】

「米国のイベント終了と住宅統計の改善」

昨日の商品市場は軒並み買い戻しで上昇した。年初から悪化が続いていた米住宅関連統計のうち、昨晩発表された新築住宅販売が前月比+18%と強気な内容となったことを切っ掛けに、買い戻しが優勢となった。更に追加材料として、欧州EFSF債への応札が10倍と好調であり、更にFOMCで「インフレ政策」が継続されることが確認されたことが、市場参加者の買い安心感を誘う結果となった。


しかし、世界景気は回復基調にあるものの、既存の材料のみで更に買い上がるのは難しいともいえ、インフレに対する警戒感を強める新興国の利上げが続く可能性が高いことを鑑みると、市場最高値に達している商品に更に買いが入る余地は徐々に小さくなってきていると考えるべきであろう。


過去との比較感のみで議論した場合、実質価格ベースで史上最高値に既に達しているのは銅や金等である。逆に言えばその他の商品はまだ実質史上最高値には達しておらず、量的緩和が継続されていること、商品インフレは懸念していないといったニュアンスのコメントがバーナンキ議長から出されていることもあり、こうした商品には買いが入る可能性が高くなってきた(主に農産品、銅、錫以外のベースメタル、原油等)。


「インフレを気にしなくてもよいのか?」

昨晩のFOMCの声明では、基調的なインフレは依然として低下傾向にある、とされた。確かに米国のコアCPI(除くエネルギー・穀物)は前年比+0.8%とインフレの兆候を示す内容とはなっていない。一方、エネルギー・穀物を含む総合CPIは前年比+1.5%と、コアCPIよりは上昇率が高いものの、確かに統計の上ではインフレを懸念するような水準になっていないようだ。一方ユーロ圏のCPIは前年比+2.2%、コアCPI(除くエネルギー)は前年比+1.3%と、トリシェ総裁が気にするように確かに若干のインフレ懸念が出始めている。この差は何処から来ているのだろうか?


1つは原油価格の差が挙げられるだろう。米国の原油価格指標はWTI、欧州はBrentである。何回かこのコラムでも取り上げているが、昨年から構造的にBrentの方がWTIよりも高くなりやすくなっている。


もう1つは、米国の天然ガス供給が潤沢であることだ。シェールガス油田の開発が進んでいることも影響していると考えられるが、在庫水準の高さを映じてこの厳冬にあるにも関わらず、過去5年水準を上回っているのだ。このことは米国のインフレ率が原油価格の影響を受けなくなる可能性が高いことを示唆している。一方、欧州の天然ガスは、英国がNBPベース、大陸が長期契約に基づく原油価格ベースで決定される。このことはBrent価格やディーゼル価格の上昇が、同地域のガス価格の上昇に繋がることを意味している。


よって、同じ先進国のインフレ、といっても米国と欧州ではおかれている環境がやや異なるのだ。よって、昨晩のバーナンキ議長のコメントは「米国の話」をしている訳で、世界の問題についてコメントしている訳ではないのだ。更に言えば、米国のみを俯瞰した場合、エネルギー価格に由来するインフレの懸念は他地域よりも低い可能性があり、デフレ退治のための量的緩和を継続したとしてもその影響は大きくないと判断していると考えるべきだろう。


翻って日本であるが、日本は原油価格はドバイベース(ということはBrentベース)、天然ガスも中東原油価格ベースで決定されているため、欧州と事情が似ている。よって、米国と異なり、国内デフレ、資源インフレ(特にエネルギー)、といった状況に陥りかねないリスクがあると言えるだろう。

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コモディティインデックス】
MRA CVIX(MRAコモディティ恐怖指数):27.72(+0.49)
MRA RMI(MRAレアメタルインデックス):310.86(+0.28)



【雑感】
私が働いている神保町は学生の街である。
本屋がそこかしこに並んでおり
飲食店も多い。


昼時は何を食べようかと考えつつ、うろうろする時も多いのだが
結局いつも選択するのは
ラーメンか、カレーか、そばか、マックである。
もっといろいろ違うもの食べたほうがいいんじゃないの
と思ったりもするが、悩んでいると結論が出ないので
いつもこのあたりで済ましてしまうのだ。


よろしくないなぁと思いつつ、新たな店を探して歩いていると
ふと、1つのことに気がついた。
神保町は上記のとおり学生の街で
飲食店と古本屋が多いのだが
古本屋は靖国通りに面して、南側にしかないことだ。
しげしげと見たわけではないが、北側にはあまりない。

知識人の友人にふとこの話をしてみたところ


「道路の北側に店を構えると陽の光が日中ずっとあたるので、本が劣化するから」


との回答。


なるほど!
確かに古本屋さんにはほとんど直射日光が当たっていない。
店で働いている人の健康上はよくないだろうが
これならば本の劣化は防げるよな。ある程度。
劣化が進めば在庫価値が目減りするわけで


こういった形のリスクマネジメントもあるんだなと
考えさせられた日であった。


って、考えながら歩いてたら、カレー屋についちゃったので
結局この日もカレーを食べた。