金融市場の安定を評価、買い戻し優勢に

【商品市況概況】
「金融市場の安定を評価、買い戻し優勢に」
昨日の商品相場は軒並み上昇している。朝方、2000年以降初めてとなるG7の為替協調介入によって極端な円高進行が回避され、金融市場の安定に向けた当局の確固たる姿勢が確認されたことが材料となった。


エネルギーは上昇後、下落。リビアに対する事実上の軍事介入を認める国連安保理決議が可決されたことで上昇していたが、リビア政府側が即時停戦に応じる、とすかさず表明したことが売り材料となった。ただし市場参加者はこれが本当の停戦であるとは考えておらず、カダフィ大佐が退任するまでは軍事的緊張が高まるとの見方が大勢で、下げ渋っている。


ベースメタルは高安まちまち。朝方の介入を好感した買いで上昇していたが、中国人民銀行の預金準備率引き上げが中国需要の鈍化懸念を想起させ、銅等は下落した。一方、上海取引所での鉛取引が週明けにも開始される見通しとなったことで鉛は上昇、エネルギーの高止まり等を映じてアルミは上げ幅を拡大している。


貴金属は大幅に上昇。金融システム維持が確認されたことで、市場機能が確保される中での「質への逃避」が起きた。PGMは株の戻りを好感。穀物も上昇している。



「日本発金融危機と中東情勢」

震災による金融危機は、当局の協調姿勢が確認されたことで回避された。しかし、復旧作業が進む福島原発は一進一退の状態であり、引き続き金融市場の混乱要因として残存している。今回の震災の世界経済に与える悪影響も懸念されている。


今回の震災が世界経済に与える影響を試算してみると、各シンクタンクの被害総額予想は10〜15兆円の範囲に集中している。これは日本のGDPの1.9%〜2.8%に該当する数値であり無視できない規模であるが、年央以降の復興需要でこの被害額は相殺(国の補正予算も5〜10兆円規模となるだろう)され、実質GDPへの影響は▲0.4%〜▲0.9%程度に収まることになると予想される。一方で世界のGDPに占める日本のGDPは9%弱であり、上記の試算の固めの数値を用いたとしても世界GDPに与える影響は限定されることになるだろう。しかし、日本のハイテク製品が調達できないことによる悪影響をアジア諸国や中国が受ける可能性もあるため、この影響度合いは暫く状況をみなければ分からない。


一方で中東情勢は明確に世界経済に影響を与える。エネルギーコストの上昇は企業業績を悪化させ、さらには金融政策の変更を映じて経済自体を鈍化させる可能性があるためだ。今のところリビアは停戦して話し合いに応じるスタンス、とのことであるが「一度振り上げた拳を何もせず下ろすこと」はもはやできないのではないだろうか。カダフィへの敵対を合意した連合国からすれば、もしカダフィ政権が継続した場合にまともに交渉ができるとは考えられないからだ。もし下ろすことが可能になるとすれば、それはカダフィが退陣することであるが、今までの言動をみるにその可能性は低いのではないだろうか。


リビアの混乱による原油生産低下は今のところOPEC(サウジ)の増産で賄っている形になっている。サウジが原油市場に与える影響は、周辺国の肩代わり増産により、余剰生産キャパシティが削られること、国内のシーア派スンニ派の対立による影響で原油が生産できなくなるかも知れないこと、の2点に集約される。小職は、サウジの財政状況を鑑みるに後者の可能性は低いとみているが、前者はリビアが落ち着いていないことからその可能性が高まっているといえるだろう。


連休明け、何ともなくリビアが落ち着いていれば原油価格は下落していると思うが、今のところその答えは誰も分からないだろう。


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コモディティインデックス】
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