リレー小説-第49話

【商品市況概況】

「総じて軟調な推移。リスク回避の動きで」

昨日の商品市況は総じて軟調な推移となった。ギリシャ問題に関する評価は進捗したとする向きと、まだ波乱がある向きに分かれるが、リスク回避的な動きが昨日は強かった。


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【雑感】

【リレー小説-第49話】

リレー小説ですよ。

「君の父親だ。龍太郎」

「!」

今、会った男に、突然父親だと言われても返す言葉がなかった。
本当の龍太郎の父親は、今日はゴルフに行っているはずだ。
絵に描いたようなごく普通の日本のサラリーマンだ。

幼児期の記憶が龍太郎の脳裏に浮かんだ。
記憶とともに鼻の奥から、
何とも言えない少し懐かしい匂いが感じられた。
5歳のころ…熱海…保養所…
不思議と頭痛はしなかった。

「君がどう思うかわからないが、私は君の父親だ」

「なぜか今、私が小さいころの熱海の思い出が
突然思い出されました。あなたが父親というのは、
全く何を仰っているのか判りませんが、
今日初めてお会いした方ではないような気がしています。」

「そういえば、昨日の午前中に東京駅から新幹線に乗って西の方に
向かいませんでしたか?」

「確かに新幹線には乗ってこちらに来たが、それは今日だ」

「昨日の熱海のことをご存知ということであれば、美紅という女性
のことも知っていると思うのですが、昨日、彼女と一緒に新幹線に
乗りませんでしたか?」

昨日東京駅でみた、美紅と一緒にいた黒い服の男は、今目の前にい
る男だ。
龍太郎はそう確信して聞いた。

「狸屋の娘の美紅のことはもちろん知っている。何度も言うが今日
新幹線に乗ったのだ。」

「…」

この男は本当のことを言っていない。確かにこの男を新幹線で見た
のは昨日だ…
また、この男と一緒に新幹線に乗っていた美紅も電話でランチに行
こうと誘ってきた…

騙されてはいけない。騙されたふりをして話を聞いてみよう。
ただ、この男と二人きりになることだけは避けよう。
悪い人間ではなさそうだが…
と、龍太郎は思った。
(続く)