統計速報(2007年8月1日分)

 昨日の米在庫統計は今まで懸念されていた製油所の稼働率回復の影響で製品価格が素直に下落すると見られることから、製品手動でベアな統計であった。但し、FSCベースで見た場合の製品在庫は依然として低く、足元の小売価格下落の影響で、株安等のマイナス材料はあるものの消費は下支えされると見られることから、中期的にはやはり価格は上昇すると見ておくべきであろう。今後は稼働率が更に回復してきた場合には、9月のOPEC総会前までの原油供給がどうなるのかがポイントになってくると考えている(大元の供給の問題)。では個別に少し詳しく見てみよう。

 原油は、稼働率が市場予想を大きく上回って改善したことや輸入の減少等により、▲6.5MBと市場予想を大きく上回る在庫減少となった。今回の統計で特にコメントすべきは稼働率の回復であり、障害やメンテナンスの影響で稼働率が低下したP2を除いて全ての地区で稼動率が上昇、漸く過去5年平均を上回る水準まで稼働率が改善したことが今回の統計の全てといっても言い過ぎではあるまい。この在庫減少によりFSCは21.1日と先週から0.9日悪化、とうとう過去最大水準である21.4日を下回った。産油国に足元増産の意向はなく、稼動率の改善が続けば深刻な原油不足が発生する可能性がある状態になりつつあると考えておくべきであろう。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は20.7MB(▲492KB)と11週連続で減少しており、WTIのバック形状維持に貢献している。以前、このコラムで指摘したが、Cushing在庫の減少はWTIとBrentのネガティブスプレッド解消のための必要条件であるが、今の所期近と期先のWTIとBrentの価格不均衡は解消に至っている。
         
 ガソリンは略市場予想通りの在庫増加となった。稼働率の改善はあったものの得率の低下したことや、価格下落の影響もあってP1の輸入が減少したことから供給サイドは前週比▲269KBDとなる一方、需要が略先週と横ばいであったため結局小幅な在庫増加に留まった。生産はP2,P3を除けば過去最高の水準で推移しており、ピークシーズンらしい生産状況となっている。過去最高レベルの生産が続くP1の輸入は、価格下落の影響もあって前週比大幅に減少している。需要は直近ベースで9.66MBD(前週比▲26KBD)、4週平均ベースで9.68MB(前週比+26KBD)となっており、4週平均ベースでは同じ時期の過去5年の最高水準を上回りつつ、略例年通りのペースで増加してきている。以上よりFSCは21.1日と引き続き過去5年の最低水準22.0日にも満たない。ガソリンの得率57.7%は同じ週の過去5年の最高レベルであり、更に得率を引き上げる事は困難であると見られることや、ガソリン輸入が不安定であることから、ガソリン在庫の増加のためには原油在庫を取り崩しながら稼働率を増加させて生産を増やすしかないといえ、やはり需給がタイトな状態が続く事になろう。但し短期的には問題視されていた製油所の稼動が回復してきていることから、更に上値を追うタイミングでは無いと考える。         
ディスティレート在庫は予想を大幅に上回る在庫増加となった。稼働率の改善と得率の大幅な上昇から生産が前週比+194KBDとなったこと、輸入が+82KBDと大幅に増加したことから総供給量は前週比+276KBDと先週から増加基調を強めた。一方で需要の増加はあったが結果、在庫水準は+2.9MBの大幅増加となった。尚、4,110KBDという需要の水準は、同じ週の過去5年の最高レベルである4,151KBDを下回るレベルであるが、過去5年平均の3,805KBDは大きく上回っており、FSCも31.1日と前週比+0.5日と増加したものの5年平均の32.7日を下回っている状況が続いている。ガソリンと同様、稼働率の回復により暫くは上値をトライする地合いではないが、原油供給が絞られている状況下、今度は9月のOPEC会合前までは原油由来で価格が下支えされると考える。