コモディティ・デリバティブ

【商品市況概況】
「楽観論再び」
 昨日の商品価格は軒並み上昇した。先週のFOMC、週末のG20で、「過剰流動性の供給と経済対策の継続」に大きな方針変更を伴わないことが確認されたことによるものである。この先どうなるのか、と考えていた市場参加者に急速に安心感が広がったものと見られる。ファンダメンタルズを完全に覆い隠すほどの流動性供給が続いている状態であり、この過剰流動性がなくなり、ファンダメンタルズに回帰することが出来るのは来年以降になると予想される。但し同時に11月は欧米系のファンドや投資銀行の実質的な年度末(12月はクリスマスホリデーのため、殆ど機能しない)であり、高水準となっているCFTC-Non Commercialポジションのロングポジション解消売りが入ってもおかしくないタイミングになっていることは非常に注意が必要である。通常こうした投機のポジションクローズは、流動性の低いマーケットから発生、言い換えれば規模の小さいマーケットから起こり易い。LMEで言えば、錫や鉛等が対象になりえる。繰り返すが、経済状況はそれほど良いとは言えない環境が続いており、投機の手仕舞い売りが入ればそれなりに水準を切り下げてもおかしくないタイミングなのだ。
 下落した場合はどこまで売られるのかがポイントとなる。そのとき「同じ価格水準をつけていたときの経済環境」が一つ参考になるのだが、この価格水準をつけていたときの経済環境は決して良いとは言えない。というのも、リーマンショック後の高値からの下落時を除けば、現在の原油価格の水準は2007年の9月の水準と同じである。この頃の状況を私のブログ http://d.hatena.ne.jp/Aburauri/20071005 で見てみると、この時のお題は「サブプライムショックを受けた米国の利下げ」が材料であった。この時と今のお題は大して変らない、ということである。利下げ(流動性の供給)が相場を押し上げていたということである。その後、原油相場は消費がついていかなくなり、リーマンショックを経て大幅に下落したことはご記憶のことと思う。如何に現在のマーケットが不安定な基礎の上に成り立っているか、の証左であろう。

 ただし同時に、「バブル崩壊後の日本」は略20年まともな景気回復を経験できなかった(制度疲労によるものと言えるが)日本で見通しを作成していると、「バブル崩壊は新たなバブルの供給で乗り越える」とも取れるような各国の対応では問題の先送りで限界があると考えてしまいがちであるが、実のところ景気って、(規模の大小はあれど)バブルの崩壊と発生を繰り返して循環しているのではないかと考えると、現在の価格上昇も「景気循環の一環」といえなくもないような気がしないでもない。



【経済関連ニュース】
・9月独工業生産 前月比+2.7%(前月改定+1.8%(速報比+0.1%))。
FRB融資担当者調査、Q309の融資を厳格化したとの回答は前回調査を下回る。

NY Dow  :10,226.94(+203.52)
S&P500   :1,093.08(+23.78)
NIKKEI225 :9,808.99(+19.64)
Dax :5,619.72(+131.47)
FT250 :9,202.55(+119.86)
Sensex  :16,498.72(+340.44)
Shanghai A :3,332.531(+12.193)
Brazil Bovespa :66,214.3516(+1,748.223)

JPY/USD :90.01(+0.18)
USD/EUR :1.501(+0.0165)


・ドルは対ユーロで下落。先週末のG20財務省中央銀行総裁会議で景気刺激策を継続する共同声明を受けてリスク資産へのシフトが起きたことから、ドルは大幅に下落した。リスク資産といえるかどうかは微妙であるが、同様の流れで円も対ドルで上昇している。
日本株は小幅高。週末のG20の共同声明を受けて引き続き各国の経済対策と流動性供給が継続するとの期待感が高まったことから。米株は大幅に上昇。週末のG20で景気刺激策を継続することで合意したことが単純に買い材料となった。



穀物
Cbot Wheat :520.00(+22.75)
Cbot Corn :386.00(+19)
CSCE Sugar :21.79(▲0.05)



【貴金属・非鉄金属
Comex Gold :1,101.40(+5.7)
Comex Silver :1,756.50(+19)
Nymex Platinum :1,367.2(+19)
Nymex Palladium :335.95(+5.25)

・NY金は上昇した。G20での経済対策継続合意を受けたドル安の進行で。1,100ドルのシーリングを上抜け、堅調な推移となった。今後も金は高い水準での推移が続くと考えている、材料は、CFTCの規制の網が掛かりにくいこと、中央銀行が準備通貨の分散を図ることに伴う現物需要が増加すると見られること、ドル安継続の可能性が高いことである。株式市場に流入している資金が、ETFの導入によって容易に金が購入できる環境になっていることが上げに拍車を掛けることになろう。特に足許、株式相場が再び騰勢を強めており、金の支援座量となる。昨日の引けは(東京時間0:00価格) 1,101.40(+5.7)。
 銀価格は上昇した。ドル安と株高が支援材料となった。引き続き18ドルをターゲットとしたい。今後は銀生産の多くが亜鉛・鉛の鉱山からの生産であり、資本投資の不足から供給が限られると見られるため、銀価格は対金比でも高いパフォーマンスを維持することになろう。昨日の引け(東京時間0:00価格)は 1,756.50(+19)。

・NYプラチナ価格は大幅に上昇した。ドル安の進行と株高が材料となった。足許、11月4日の高値、1,379.80をトライする動きとなっている。今後は日米欧の自動車需要減少が、途上国の自動車需要、宝飾品需要がカバーするとみられること、当局規制の影響の少ない貴金属ETFは投機の対象となりやすいことから更なる上昇を予想する。ターゲットは1,400ドル。昨日の引け(東京時間0:00)は1,367.2(+19)。
 パラジウムは上昇した。昨日の引け(東京時間0:00)は335.95(+5.25)。



Copper 3M :6,539.00(+49:22.25C)
 昨日の銅価格は上昇した。週末のG20での景気刺激策維持を材料にドル安が進行したことから上値を追う展開となった。しかし、同時に高値警戒感も根強く、引けに掛けては利食い売りに押されることとなった。CFTC Non-Commercialの銅ネットポジションが数年ぶりのロングとなっており、11月末の評価期限を迎えるファンドや投資銀行等が利食い手仕舞い売りをLMEでも入れてきている可能性がある。今後は、大手生産者の労使交渉の更新がこの四半期に訪れることや、景気回復が持続すると見られることから中長期的にはポジティブなパフォーマンスを維持するとの見方に変更はない。ただし現在の経済環境がこの銅価格を許容できるかに関しては引き続き疑問である。LME在庫は+3,900Mt増加、(FSCは7.9日)、(キャンセルワラント率は0.5%)。売買高は8,165枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期先の上げ幅が大きくブルフラットニング。C-3(Cash vs 3M Fwd)は22ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは6,539.00(+49:22.25C)。

Zinc 3M   :2,160.00(▲14:26.25C)
 昨日の亜鉛価格は下落した。G20合意を受けたドル安の進行等があったが、むしろ手仕舞い売り圧力が強くNY時間にかけて大きく水準を切り下げる動きとなった。。10日移動平均線が上値として意識されている。今後も亜鉛価格は堅調な推移になると考えている。最大需要国である中国の鉄鉱石輸入の増加に伴う亜鉛需要の増加観測、同時に中国国内の環境面を意識した精錬キャパシティの縮小が、需給をタイトにさせると予想されるためである。LME在庫は▲75Mt減少、FSCは14.4日(キャンセルワラント率は2.8%)。売買高は5,391枚。イールドカーブは略パラレルに低下している。C-3は26ドルコンタンゴと前日と変わらず。昨日の引けは2,160.00(▲14:26.25C)。

Lead 3M   :2,300.00(+51:26.75C)
 昨日の鉛価格は上昇した。ただし、G20合意を受けて高よりした後、NY時間にかけても一貫して利食い売りに押される形となり、結果的に前日比プラス出会ったものの総じて軟調な推移であった。今後は鉛需給は均衡すると考えられることから、在庫水準の高さを映じて徐々に水準を切り下げると見ている。足許の価格高騰は各国の自動車買い替えプログラムによるバッテリー特需と、中国政府の環境に配慮した生産減少(ここまで約400KMtの生産キャパシティが縮小)によるものであるが、これは徐々に緩和することになろう。LME在庫は+225Mt増加、(FSCは5.8日、キャンセルワラント率は0.5%。)。売買高は872枚。イールドカーブは期先の上げ幅が大きくブルスティープニング。C-3は27ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは2,300.00(+51:26.75C)。

Aluminum 3M :1,952.00(+42:33.5C)
 昨日のアルミ価格は上昇した。週末G20での景気対策継続合意を受けたドル安の進行→リスク資産への買い先行の動きにつれる形で水準を大きく切り上げる動きとなった。アルミはLME在庫の高い水準とは関係なく、実質的に取引可能なアルミ在庫の数量が少ないことを材料に堅調な推移が続いている。1,800ドルが下値の目処として強く意識されており、今後予想される調整局面でこの水準を下回り、100日移動平均線のサポートライン(1,750ドル)を試す動きになる可能性は低いといえる。広くアルミ市場が供給過剰であることが知られているが、こうしたファイナンス上の理由で相場は下支えされよう(過剰在庫の水準は既に価格に織り込み済み)。LME在庫は▲2,475Mt減少、(FSCは48.0日)。(キャンセルワラント率は2.6%)。売買高は7,862枚。イールドカーブは期先の上げ幅が大きくブルスティープニングしている。C-3は34ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは1,952.00(+42:33.5C)。

Nickel 3M :17,430.00(+80:71C)
 昨日のニッケル価格は上昇した。週末G20での合意でドル安が進行していたものの、LME在庫の大幅増加を受けて総じて軟調な推移となり、今週のポイントとなる100日移動平均線を結局回復できずに引けることとなった。今後は各国の在庫積み増しの動きと、経済対策・金融緩和策の解除観測との綱引きとなろう。春先から続いていた中国勢の投機目的の在庫積み増しは一巡したと見られるが、中国以外の国々でも在庫積み増しの動きが見られると予想されることから需要は向こう1年半程度横ばいと見ている。一方で、大手生産者は引き続き生産を見送っており、トータルでニュートラルであると見られ、需給は均衡する中景気回復に伴い価格は上昇することになろう。目先のターゲットは切りのよい20,000ドル。LME在庫は+1,242Mt増加、(FSCは38.3日)、キャンセルワラント率は0.8%。売買高は1,518枚。イールドカーブは期先の上げ幅が大きくブルフラットニングしている。C-3は71ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは17,430.00(+80:71C)。

Tin 3M   :14,750.00(UC0:80B)
 昨日の錫価格は前日比変わらずであった。ドル安進行に伴って上昇した後、15,000ドルの節目を上抜け出来なかったことから引けに掛けては売られた。この夏、インドネシア政府は違法生産者の逮捕に踏み切っており、インドネシアの錫生産は減少の一途を辿っている。こうした供給の不安定さが引き続きイールドカーブの形状をバックワーデーションに維持することが予想される。LME在庫は+45Mt増加、(FSCは25.7日)、キャンセルワラント率は0.81%。売買高は122枚。イールドカーブは期近が小幅上昇している。C-3は80ドルバックとバック幅を拡大した。昨日の引けは14,750.00(UC0:80B)。



【エネルギー】
WTI :79.43(+2.0)
Brent :77.77(+1.9)

・中国、ガソリンの価格を5.98元/リットル引き上げを決定。ディーゼルオイル、ジェット燃料価格も最大8%引き上げ。
・熱帯性暴風雨「アイダ(カテゴリー2)」メキシコ湾岸に上陸の可能性。
・アイダの影響でメキシコ湾の生産は、原油が29.6%(384.6KBD)、ガスが27.5%(1.925BCFD)の生産を停止。

 昨日のNY原油は上昇した。G20の合意を受けたドル安を受けて取引序盤から堅調な推移となったが、NY時間に株が大幅に上昇すると上げに拍車が掛かった。ただし80ドルを上回る原油価格が現時点において許容できる可能性は低く、この水準を下回って引けている。メキシコ湾の熱帯性暴風雨「アイダ」の影響もなしとはしないが、そもそもファンダメンタルズを無視した水準での取引が続いている以上、材料になったとは考えていない。ただしアイダの影響でメキシコ湾の油田の生産は30%弱減少しており、原油生産の減少を映じて過剰な石油製品在庫の解消が進む可能性はある。しばらくは消費が耐えうる価格レベルを試す動きになると見るが、持続的に80ドルを上回る価格が維持できる経済環境にあるとは言えず、調整リスクをはらみながら上値余地を試す動きになろう。中期的にはIMFの見通し上方修正にあるように、景気回復に伴う需要増加観測から水準を切り上げる動きになると考えている。イールドカーブは期近の上げ幅が大きい。直近限月の騰落率は+2.5%。昨日の引けは79.43(+2.0)。 Brentは上昇した。直近限月の騰落率は+2.4%昨日の引けは77.77(+1.9)。 WTI/Brentは+1.66のポジティブスプレッドに。
 RBOBは上昇した。原油価格の上昇で。ただし需要は回復しておらず(前年比プラスに回復しているが、昨年はリーマンショック後の目も当てられない状況なので、比較にならない)。イールドカーブは略パラレルに上昇している。直近限月の騰落率は+2.8%。昨日の引けは198.18(+5.75)。 ヒーティングオイルも上昇した。+2.8%イールドカーブは略パラレルに上昇。昨日の引けは206.27(+5.92)。 ICEガスオイルは上昇した。イールドカーブは期近の上げ幅が大きい。直近限月の騰落率は+3.3%。昨日の引けは629.00(+21.75)。



【ひとりごと】
いまさら当たり前のことながら
外為証拠金取引って、気づかない間にものすごい浸透してるんですね
こんな仕事をしていながら、個人的には海外に行ったときに外貨をどのタイミングで円に換えるか
とか、ドルの外貨預金をするぐらいのことしかしていないんだが
みんな、レバレッジを掛けてやっちゃうんですね。こういう取引。


コモディティ関連の先物取引って
ガソリンとか、トウモロコシとか、アルミとか
ヘンな話し為替よりもずっと身近なものなんですが
ナニワ金融道の、南京豆とプルトニウムで損をする教頭先生のイメージが強く
個人ベースに広がっていない。
ちょっと前にあった金の詐欺問題なんかもイメージを悪くしてると思う。


結局、正しい知識や情報が伝達されてないことに起因すると思うんですよね
こういうことって。


なので



やっぱり私はセールスもやってますけど、こうした情報発信の仕事もしなくちゃならないんだよな
と、ふと。
本当にふと思った。

おしまい。