昨日の米在庫統計はニュートラルな内容であった。原油はここしばらく同じような動きであるが、製油所の稼働率がマージン悪化に伴い思うように回復していないこと、輸入がP3を中心に大幅に増加したこと(ハリケーンがそれたため)から比較的大きな在庫増加となった。ガソリンはピークシーズンが終了する中、低い在庫で何とかシーズンを乗り切ったようだ。結局ハリケーン等の突発事象がなければ、20日程度の在庫でも問題ないということなのだろう(昨年と同じ)。今後はディスティレートが石油製品の主役になるが、こちらも絶対水準・FSCともに過去最低水準であり、加えて稼働率の改善が思わしくない中、自国の生産で需要をまかないきれていない状態であることから輸入頼みの状態が続く見込みであり、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。サブプライムローン問題の波及に伴う需要の減少にはブレーキが掛かりつつあるようであるが、FOMCでの大幅な利下げの影響で株価も安定し始めており、購買意欲減少に一定の歯止めをかけるものと見られる。では個別に少し詳しく見てみよう。
 原油は、生産が横ばいであったが、輸入が10,442KBD(前週比+637KBD)と大幅に増加したこと(+4.5MBの在庫増加要因)、クラックマージン縮小に伴い稼働率が大幅に低下したこと(+3.2MBの在庫増加要因)から先々週の▲3.9MBおの大幅減少から一転、+1.8MBの増加となった。ここ数週間、原油在庫は輸入量の増減と稼働率の変動に振らされる展開となっている。通常であれば製品在庫の水準が低さから稼働率が上がっても(というより上げなければならない)おかしくない状況であるが、上記の通りクラックスプレッドの縮小により、生産者が稼働率の引き上げを逡巡しているようだ。生産は5,027KBD(▲12KBD)と略横ばい、輸入はP3の輸入量が大幅に増加したことから10,442KBD(+637KBD)と増加、総供給量は15,469KBD(前週比+625KBD)と大幅な増加となった。稼働率は86.9%とP2,P3で大幅に低下し、過去5年平均水準を下回る稼動となった(尚、過去5年の最低水準とはカトリーナ禍のあった2005年)事から、在庫は前週比+1.8MBの321.6MBとなった。FSCは在庫増加と稼働率の上昇で21.1日と先週から0.7日分も増加しているが、あまり「良い」在庫増加とはいえない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18,128KBD(▲209KBD)と減少、イールドカーブのバック化に貢献している。

 ガソリンは小幅な在庫増加となった。生産は稼働率の低下、得率の低下によって大幅に減少し8,722KBD(前週比▲348KBD、2.4MBの在庫減少要因)となったこと、輸入は1,052KBD(前週比+41KBD)と略横ばいであったことから、総供給が9,774KBD(前週比▲307KBD、前週比で2.1MBの在庫減少要因)となった一方、需要が略例年通りのペースで減少(単週ベースで9,235KBD(過去5年の最高水準9,234KBD)、4週平均ベースで9,363KBD(過去5年の最高水準9,457KBD)、4週平均ベースの需要減少は前週比▲1.0%と、例年の▲1.3%程度。▲0.6MBの在庫の減少要因)であったことから、在庫増加となった。FSCは20.4日と先週から0.3日分増加したが、引き続き過去5年の最低水準21.0日に満たない。この低い在庫水準は昨年のレベルを大きく下回るレベルであるが(昨年が過去5年の最低)、去年もこの程度の在庫水準でピークシーズンを乗り切っていることから、ハリケーン等の災害がなければなんとなかる在庫水準であると言える。しかしながらガソリン価格の水準が原油価格の上昇によって高すぎるため、悪戯に在庫水準を例年よりも高くするわけに行かないことや、ウィンターグレードへの移行が控えていることが在庫水準を低水準に据え置かせる要因となっており、マージンが縮小する中、輸入に頼らざるを得ない状況が継続していること、今年は例年よりもハリケーンが頻繁に発生していることを鑑みれば、引き続き底堅い推移にならざるを得ないであろう。

 ディスティレート在庫は大幅な増加となった。稼働率の悪化はあったものの得率が大幅に改善(+1.0%)したことを受けて生産が4,131KBD(前週比+26KBD)、輸入も314KBD(前週比+7KBD)と小幅増加したことから、総供給が4,445KBD(前週比+33KBD)と増加した減少したものの、需要が例年を上回るペースで減少したこと(単週ベース4,067KBD(前週比+37KBD)、4週平均ベース4,095KBD(前週比▲33KBD)、減少率▲0.8%、過去5年平均▲0.5%)であったことから、1.5MBの大幅な在庫増加となった。冬場を控えて在庫積み増しの時期に入っているが、やや例年よりも在庫積み増しのタイミングが早いようである。これによりFSCも33.5日と先週から0.6日増加した。しかしながらこの水準は引き続き過去5年平均である34.8日を下回るレベルであり、依然、十分な在庫があるとは言いがたい。冬場に向けて在庫を積み増せるかどうかが今後の最大の焦点となるが、原油高騰に伴うマージン悪化によってそれは難しいと見ておくべきである。