長生きクラブ-最終回

(商品市況概況)
「悪い形での商品価格下落」
 昨日のコモディティ市場は暴落している。需要を理由に各商品価格は押し上げられてきたが、この価格高騰が現在の「技術水準」では堪えられず、実際に需要が減少している可能性が高い、ということが更に強く市場で意識されているためである。投機資金が市場から流出したために下落した、との論調をこのコラムでは支持していないが、「需要が減少し、供給過剰になる可能性があることから」投機資金が市場から退場、ないしはロングポジションを保有している市場参加者がショートポジションにスリングしている可能性はあろう(実際、エネルギーのNon-Commercialポジションは、ロング幅が縮小、ショート幅が拡大しており全体のポジションが縮小しているわけではない)。何がいいたいか、と言えば「景気の減速に伴う需要減少で価格が下落している」ため、「好ましくない形での価格下落である」ということである。弊社も含めた各ハウスとも商品価格の見通しは世界経済が堅調に推移する、という前提で策定しているため強気の見通しが多いのだが、この前提となる景気拡大が停止ないしは悪化してしまった場合にはこの前提が崩れることになるため、商品価格は下落せざるを得ない。
 今後は価格が低下した局面で、本当に新興国が商品に買いを入れるかどうかが大きなポイントになろう。

(経済関連ニュース)
・6月ユーロ圏生産者物価指数 前年比+8.0%(前月改定+7.1%)、市場予想7.9%。
・6月米個人消費支出 前月比+0.6%(前月改定+0.8%)、市場予想▲0.2%。
・6月米製造業受注 前月比+1.7%(前月改定+0.9%(速報比+0.3%))、市場予想+0.7%。
・6月米PCEコア価格指数 前月比+0.3%(前月改定+0.2%)、市場予想pら0.2%。

・ドルは対ユーロで下落後上昇。米PCEコア指数が比較的落ち着いた内容である一方、欧州PPIが上昇していることから統計発表後にドルが弱含む局面が見られたがFOMCを控えて結局NY引けに掛けて売られてほぼ変らずであった。対円では上昇している。
日本株は大幅続落。世界景気の減速懸念に焦点が当たりつつある中、金融株や輸出関連株に幅広く売りが入った。上海A株、インドSensex、ブラジルBovespaといった新興国株も下落、FT250、Dax等は欧米経済統計の悪化を受けて続落となっている。米株は3日連続で下落。原油が大幅に調整していることからエネルギー関連株が売られた。

穀物市場サマリー)
・大豆価格は続落。生産地の降雨予報で土壌改善が期待されていること、原油価格が景気の悪化懸念で急速に調整色を強めていることから大豆はストップ安となった。チャート的には10日移動平均線を下回って地から弱く推移している。イールドカーブは全ゾーンパラレルに低下している。
・トウモロコシ価格は下落。生産地の降雨による土壌改善期待や、エネルギー価格特にガソリン価格の下落の影響が大きく、トウモロコシはじり安の展開となった。2008年7月23日の場中につけた543?が次の下値として意識されていたが、この水準をあっさり下回ったため、3月20日にマークした507?が次のターゲットとして意識されよう。イールドカーブは全ゾーンパラレルに低下。
・小麦価格も大幅に下落。トウモロコシ、大豆の下落もあって10日移動平均線を上値に軟調な推移となった。特にNY時間の後場にかけての下落が大きかった。イールドカーブは期近が小幅低下している。

非鉄金属関連ニュース)
・金は下落。米統計を受けたユーロ安で強含む局面もあったが、原油が大幅に調整していることもあって軟調な推移となった。但し他の金属やエネルギーに比べて大幅な下げとはなっていない。この下落でとうとう金は900?を割り込むこととなった。
 足許金価格のトレンドは若干変化しつつある。米国のみならずユーロ圏の景気が鈍化し始めていることに伴うドルの行き過ぎた下落が修正され始めているためだ。同時に地政学的リスクの高まりや、米景気の後退懸念に伴う恒常的にドルの水準が安いこと、株式市場のパフォーマンスの悪化、といった材料を受けて安全資産であり、市場規模のうちの半分近くが投機資金である金は、質への逃避で物色されることから大幅な下落とはなっていない。尚、一次回帰分析の結果では現在の金価格は一次回帰直線を下回る水準にあり、テクニカルな買いが入ってもおかしくない環境にある(金価格=1,151.4×ドル・ユーロ-868.74)。同時に金価格の上昇が宝飾品需要を落ち込ませている可能性が高く(WGCの発表によればQ108の宝飾需要は前年比▲21.5%の454.4Mtに、世界最大の金消費国であるインドの需要は前年比▲50%の102.1Mtに落ち込んでいる)上値を追いきれないのも事実であろう。よって、ドルの行き過ぎた下落が修正される局面に入っていることも考慮し、弊社は金価格の見通しを若干ブルからニュートラルに引き下げることにした。これは今までこのコラムで主張していたように「当面高値で安定推移」との見方と整合するものである。もし金の見通しをベアに転換するには今しばらくドルのトレンドを経済統計とともに見定める必要があろう。
 NY銀も続落。金の下落、エネルギーの下落を受けて軟調な推移となっている。

・NYプラチナ価格は大幅に下落。米大手自動車メーカーの業績が悪化していることや、一時の燃料価格高騰で車離れが進んでいると見られていることから急速に需要の減少懸念が意識されており、原油価格の下落もあって殆ど理由なく水準を切り下げる動きとなった。この先目立ったチャートポイントは存在せず、きりの良い1,500?が強く意識されることになると見る。
 中期的な見通しについてプラチナは、堅調な推移になると考えていたが、自動車向け需要が一時的にでも減退すると見られることから強気姿勢は維持できないと考えている。世界経済への影響が大きい米景気の悪化観測の高まり、GM、フォードといった自動車産業の景況感悪化に反映される自動車販売の減少に伴う触媒需要の減少観測を受け、このコラムで指摘してきた需要減少のリスク要因の影響が大きくなってきている状況だ。また、ドルが行き過ぎた下落から反転し上昇しつつあることもプラチナ価格の下げ要因となりえる。しかしこれは金同様、ドルの上昇トレンドが持続的なものになるかどうか不透明であるため現時点においてはドルの絶対水準の低さに着目し先々相場に与える影響は今時点ではニュートラルであるとしておきたい。
 価格上昇に対するその他のリスクシナリオは、プラチナ価格が上昇し代替品としてパラジウムが代用品として利用されるリスクであろう。今のところディーゼル車向けに用いられているパラジウムは全体の10%程度であり、これは将来的には25%程度まで上昇すると考えている。また地上在庫の多さがこうした不足分を補うと見られることから、結局のところ生産不足分は相殺されニュートラルになる可能性があることも相場の下押し材料となりえよう。しかしながらやはり南アの生産状態が電力価格の上昇やその他のコストの上昇等で不安定であることから、アップサイドのリスクは意識せざるを得ないだろう。しかしそのリスクは依然に比して低下していると考える。
 NYパラジウム価格も下落。
 今後パラジウムの価格は横ばい推移すると考えている、価格高騰に伴う需要の減少観測でプラチナの価格が下落、自動車触媒や宝飾品のプラチナの代替品としてのパラジウム需要がこの先頭打ちになる可能性があるためだ。また、非常に多い地上在庫(弊社見積もりではチューリッヒに8百万オンス、ロシアに10百万オンスの地上在庫があると見ている)が、価格の上限を押さえることとなろう。

(エネルギー関連ニュース)
・熱帯性暴風雨「エドヴァルド」の進路が油田地帯をそれる見込みに。

(非鉄金属)
 昨日の銅価格は大幅に下落した。10日移動平均線を下回って寄り付いた後、LME在庫の増加や株価の下落といったマイナス材料を受けて下落、今年2月から上回っていた200日移動平均線をとうとう下回ることとなった。足許、世界景気の悪化観測が強く意識されており、「供給が十分で下落する」というよりも「需要が減少して下落する」という、経済にとって好ましくない形での下落となっているところが気にかかるところである。但しコンセントレートの供給懸念は根強く、中国の固定資産投資や鉱工業生産の水準の高さを鑑みれば大幅な調整の可能性は低いとの見方を変更する必要性は余り感じないが、「市場のセンチメントがベア」になっていることから下値を探らざるを得ないだろう。LME在庫は+1,550Mt増加、(FSCは2.8日)、(キャンセルワラント率は8.3%)。売買高は14,891枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近の下げ幅が大きい。C-3(Cash vs 3M Fwd)は129?バックとバック幅を縮小した。
 昨日の亜鉛価格は下落した。LME在庫の増加や銅価格の大幅下落が端的に材料視され、NY時間の後場に下げ幅を拡大する展開となった。こちらも景気減速懸念が市場のセンチメントを悪化させているようだ。亜鉛は需要が強いというわけではないが、大生産国であるはずの中国の輸入が増加傾向を辿っており(亜鉛、鉛はオリンピック期間中は10%の生産量削減)、中国の輸出に関わるリベートが削減されたこと、1,800?のコストラインを割り込むくレベルでは生産減少の可能性が根強いことから下値が堅いのも事実である。LME在庫は+950Mt増加、FSCは4.8日(キャンセルワラント率は7.5%)。売買高は5,432枚。イールドカーブは全ゾーンパラレルに大幅に低下している。C-3は11?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の鉛価格は大幅に下落した。LME在庫が大幅に増加したこと、10日移動平均線を下回って寄り付いたことから取引序盤から地合いは弱く、各国株が軟調な推移となったことや銅の下落で鉛も大幅な下落となった。米国自動車産業の業績悪化の影響で、自動車向けバッテリー需要の減少観測が台頭している。中国のオリンピック期間中の生産減少を受けて中国からの精錬鉛のアウトフローは明確に減少し始めており、早晩中国が精錬鉛の輸入国に転じる可能性が高くなってきたことが相場の下支え材料となろうが、センチメントの転換には抗えないだろう。LME在庫は+1,150Mt増加、(FSCは3.9日、キャンセルワラント率は9.2%ここ数週間でキャンセルワラント率は上昇している。)。売買高は3,137枚。イールドカーブは期近の下げが大きいが全ゾーン低下している。C-3は6?バックとバック幅を縮小した。
 昨日のアルミ価格は大幅に下落した。エネルギーの大幅下落と、各国株式の大幅調整が地合いを完全に悪化させており、アルミ価格は力強く下落した。銅・アルミ価格の下落が顕著であるが、「経済活動の拡大→電力需要の増加→送電線需要の増加」のサイクルで特にこの2つの非鉄金属が物色されてきたが、景気が減速する可能性が高いという考え方が急速に市場に広まる中で、アルミも売り込まれることとなった。今のところ節目となる2,800?でかつ200日移動平均線を下回るには至っていないが、もしこのレベルを下抜けすると、現在のコストベースと考えられる2,600?程度までの下落はあってもおかしくない地合い。LME在庫は+50Mt増加、(FSCは9.8日)。(キャンセルワラント率は1.8%)。売買高は14,663枚。イールドカーブは期近を中心に低下している。C-3は51?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日のニッケル価格は下落した。商品市場全体のセンチメントが急速に悪化する中、ニッケルも売られた。足許10日移動平均線を上値として頭重い推移が続いている。昨晩もLME在庫が増加したため、これも相場の下押し材料となった。但し結果的に意識されている18,000?は維持して引けている。このまま軟調な推移が続き、10日移動平均線が18,000?を下回ると更に下を見ざるを得ないだろう(2006年6月14日につけた17,050?が意識されようか)。ニッケルに関しては引き続き堅調に推移するであろうとの弊社見通しを小職は支持するが少なくとも現時点においてはニッケルに関して相場が反転するような材料が出てきていないのが実情である。LME在庫は+246Mt増加、(FSCは10.4日)、キャンセルワラント率は3.9%。売買高は912枚。イールドカーブは期近を中心に全ゾーン低下。手前は完全にコンタンゴとなった。C-3は138?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。
 昨日の錫価格は大幅に下落した。金曜日の引けレベルを下回って寄り付いた後、力強く水準を切り下げたが、NY時間後場原油の下落を切っ掛けに錫も大幅に水準を切り下げることとなった。現時点では切りのよい20,000?がサポートラインとして意識されている。この水準を下回れば、次は200日移動平均線となる19,500?が意識されることになると考えている。LME在庫は+120Mt増加、(FSCは5.3日)、キャンセルワラント率は6.28%。売買高は489枚。イールドカーブは全ゾーン略パラレルに低下している。C-3は30?コンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。

(エネルギー)
 昨日の原油価格は大幅に下落した。熱帯性暴風雨エドヴァルドの進路が油田地帯をそれる見通しとなったことや、景気の減速懸念に焦点が当たったためである。これにより長らく上回り続けた中期的なサポートラインである100日移動平均線を大きく割り込み節目となる120?をトライ、一瞬このレベルを下回ったが、引けに掛けてはさすがに買い戻しが入り、120?を維持する結果となった。繰り返しコメントしているが「投機筋が市場から退場したから価格が下落した」のではなく、「世界景気全体が悪化し、需要の減少が市場参加者の間で強く意識されているため」に起こる、ファンダメンタルズドリブンの価格下落であると考えている。イールドカーブは期近を中心に全ゾーン大幅に低下している。Brentも同様の相場展開で、同様に100日移動平均線を割り込んだ。イールドカーブは期近の下げが大きいが全ゾーン低下している。直近限月の騰落率はWTIは▲3.1%、Brentは▲3.0%。今後についてはマーケットのセンチメントが「世界景気に対する過剰な悲観論の蔓延」によってベアになっていることから下値を探らざるを得ないだろう。但し弊社が考えるコストイーブンとなる100?を割り込むのは相当難しかろう。
 石油製品も大幅に下落。RBOBは原油の下落や特に先々の需要減少に焦点が当たり大幅な下落となった。価格高騰の影響で需要、特に米国内需要が9.4MBDを上回ることがなくなっており力強さは感じられない。イールドカーブは略パラレルに低下している。直近限月の騰落率は▲2.9%。ヒーティングオイルも同様に下落。10日移動平均線を下回って寄り付いた後、NY時間後場から大幅に水準を切り下げる動きとなった。先週の在庫統計で在庫水準が増加したことも材料となっているようだ。クラックスプレッドの縮小が示すように、需要が減少し始めている可能性が高い。イールドカーブは期近の下げ幅が大きい。直近限月の騰落率は▲2.7%。ICEガスオイルも下落。イールドカーブは期近の下げ幅が大きい。直近限月の騰落率は▲2.0%。



(ひとりごと)
好評の「長生きクラブシリーズ」最終回です。



「宜しくお願いします」



といわれたら



「あなたに宜しくお願いされる筋合いはない」



と、ピシリというべきだったのではなかろうか...
と、小さなことにもイラッとする状態になってきたので、睡眠を開始。
朝凄い早い便だったのでひたすら寝た。



ドドドドーン



と突如凄い地響き。
相当ビックリして目覚めると、もう着陸していた。
気流が悪かったのか、パイロットがなれていなかったかのせいで着陸時に大きく機体はジャンプした。
飛行機に乗ることが多い私もちょっとビックリした。
当然、周りの老人は皆、ビックリしている。
そしてその後口々に



「ああ、ビックリした。死ぬかと思った」
「私も死ぬかと思ったよ」
「長生きしたいからなぁ」



そう。彼らは皆、長生きクラブ、なのだ。
その後、飛行機を降りるに際し、機内に入るときと同じ議論がなされていた。



「早く降ろせッ!!俺は老人だ」
「さっき若いやつが先に降りて行ったぞ」
「あれは上のクラスの席のやつだよ」
「なるほど」
「でも、俺よりも若かったぞ」
「そう、世の中、金・金・金だ」
「そう、高い金払っていると、年齢に関係なく降りるのも先、預けた荷物が出てくるのも先なんだ」
「全く世の中狂ってる」



いや...だからですね。高いお金を払っているから、サービスがいいんですよ。
多分、安い値段を払っていてサービスよくされている若者をみたら、あなたたちもっと納得いかないでしょ。



ふぅ。
飛行機で移動するだけですっかり疲れてしまった。
降りるとき山田さんが「お疲れ様でした」と挨拶してくれたが、このおかげで更になんだか疲れてしまったよ。
後で調べたら長生きクラブは日本各地にあるらしい。
1つぐらいで十分なんじゃないか?
皆こんななんだろうか?
みんな、そんなクラブに入らないでも長生きですヨ。多分。
(終わり)