今回の米在庫統計は原油ブル、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。石油製品需要の低迷で石油製品在庫は引き続き積み上がり気味である。今後は著しく積み上がったディスティレートのウィンターグレードへの転換が無事進むだろうか、ということが課題となるだろう。ガソリンにも同様のことが起きると予想している。詳しく見てみよう。
原油は生産が増加したが、輸入が大幅に減少したことから稼働率が悪化したものの引き続き在庫減少となった。生産は5,304KBD(+38KBD)と過去5年の最高レベルまで回復。輸入は8,903KBD(▲192KBD)とP3を除く地区で減少した。これに伴い輸入数量は前週比で大幅に増加しており、過去5年レンジの下限での推移となっている。引き続き米国の石油製品需要の回復速度が緩慢であり、不必要な原油が輸入されていないものと考えられる。結果、総供給量は14,207KBD(▲154KBD、前週比1.1MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP2,P5で改善したが、それ以外の地区では悪化しており、全体で86.9%(▲0.3%、前週比0.3MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲4.1%,+2.1%,▲1.9%,▲0.5%,+3.6%となっている。計算上在庫は前週比で▲0.8MBの▲6.67MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲5.9MB)となるが、▲4.7MBとなった。結果、在庫水準は332.8MB(▲4.7MB)となった。稼働率が改善しているP2,P5での在庫減少が顕著である。在庫量の変化はP1から順に、+0.3MB, ▲3.9MB, +0.1MB, ▲0.2MB, ▲1.0MB となった。FSCは21.7日(▲0.2日)と在庫要因で大幅に低下。しかし、原油在庫の水準はFSCベースで過去5年レンジを上抜けた状態が続いている。原油在庫もFSCベースで過去5年の適正レベルを上回る在庫水準となっており、余剰の状態が続いている。今週はSPRは499KBの増加。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は27.6MB(▲3.7MB)と大幅な減少。投機の規制に伴い、現物を引き取る動きが出始めているとも考えられる(主にP2の稼働率上昇によるものだとは思うが)。イールドカーブのフラット化が進むこととなろう。統計としては先週と同じくニュートラルな内容であった。
ガソリンは稼働率が悪化、得率も悪化したことから生産が大幅に減少、欧州の定修等の影響で輸入も大幅に減少したものの、需要が大幅に減少したことからから小幅な在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が▲1.2%と悪化したことから9,032KBD(▲208KBD)となった。輸入は701KBD(▲284KBD)と減少、5年レンジの下限での推移が続いている。結果、総供給は9,733KBD(▲492KBD、前週比3.4MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,733KBD(▲492KBD、前週比3.4MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,217KBD(▲51KBD, 前週比0.4MBの在庫増加要因。過去5年平均 9,428KBD, 過去5年最高 9,590KBD, 過去5年最低 9,328KBD)となった。需要の前年比での減少率は▲1.29%とマイナスの幅を小幅縮小、前週比での変化率は▲0.55%(例年▲0.78%)と一応例年に近い動きとなっている。景気は最悪期は脱したとの見方が強いが、価格水準が引き続きネックとなり需要の戻りは緩慢な状態が続くことが予想される。株価の急騰に伴うマインド改善効果による需要の増加は、株価が下落した場合、あるいはガソリン価格が急騰した場合にはなくなってしまう可能性が高いことから、引き続き株価動向は無視できない展開が続くことになると考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は▲3.1MBの▲1.0MBの在庫減少(先週の在庫増減は+2.1MB)となるが、+0.5MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional83.3MB(+3.2MB)、Blending122.9MB(+1.7MB)となっている。この結果、FSCは22.5日(+0.2日)と先週から上昇、引き続き過去5年レンジから上離れしている。統計としてはFSCが上昇しており、需要(出荷)の減少も確認されたことから、総じてニュートラルな状態は変らない。
ディスティレート在庫は大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.2%と改善したことから4,160KBD(+17KBD)と先週と略変わらず。生産の内訳はULSD3,218KBD(+21KBD)、ディーゼルオイル509KBD(▲26KBD)、ヒーティングオイル433KBD(+22KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均レベルを回復している。在庫の著しい積み上がりと需要の回復が緩慢なことから低水準の生産が続いているが、生産調整可能な範囲を超えていると見られ調整幅は限定されている。輸入は147KBD(▲88KBD)と大幅減少。在庫水準が高い上、欧州製油所の定修の影響でしばらくは低い水準での推移となろう。この結果、総供給は4,307KBD(▲71KBD、前週比0.5MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,307KBD(▲71KBD、前週比0.5MBの在庫減少要因)、直近需要は3,437KBD(▲27.75KBD, 前週比0.2MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,087KBD, 過去5年最高 4,192KBD, 過去5年最低 3,960KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲16.78%、前週比ベースでは▲0.80%(例年▲0.62%)。そもそも需要のレベルが低すぎることから多少、前週比で需要が回復しても殆ど統計全体に影響が出てこない状態である。全体のバランスでは前週比▲0.3MBの+1.7MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.0MB)となるところであるが、+2.2MBの在庫増加となった。総在庫は168MB(+2.2MB, 過去5年平均 134.4MB, 過去5年最高 144.6MB, 過去5年最低 128.3MB)となり、過去5年最高レベル144.6MBを遥かに上回っている。世界的にディーゼルオイルの在庫水準は高く輸送需要は低迷しているといって良く、ディスティレート価格は総じて頭重い推移が続くことになると考えている。製品毎の在庫の内訳はULSDが99.1MB(+12.9MB)、ディーゼルが19.3MB(+1.2MB)、ヒーティングオイルが49.3MB(+1.6MB)。FSCは48.8日(+1.0日)となった。これは過去5年の最高水準である34.9日をはるかに上回るレベルであり、多過ぎであることはコメントする必要もないだろう。今後は冬場に向けたウィンターグレードへの転換が順調に進むかどうかがポイントとなろう。引き続き明確にベアな内容であると言える。