統計速報(8月29日分)

 昨日の米在庫統計はブルな内容であった。簡単に言えば、原油輸入の減少に伴い原油在庫が減少する中、製油所の稼動が不安定であることから製品供給が減少、石油製品在庫も減少する、という内容であった。原油OPECの増産は少なくとも9月11日の定例総会までは見送られる可能性が高い事からやはりブルであり、石油製品は在庫の絶対水準・FSCともに過去最低水準であり、加えて稼働率の改善が思わしくない中、自国の生産で需要をまかないきれていない状態であることから輸入頼みの状態が続く見込みであり、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要は今のところないと考えている。このあたりの見方は先週と変えていないし、変える必要もないと思う。では個別に少し詳しく見てみよう。
 原油は、生産が殆ど横ばいの中、輸入が先週から一転大幅に減少したことから稼働率の低下はあったものの予想に反して大幅な在庫減少となった。今週の統計ではP3の輸入が5,693KBD(▲882KBD)と減少したことが大きい。因みにこれだけで6.2MBの在庫減少要因となる。輸入量の激減はハリケーンディーンの影響によるものだと考えられるため、おそらく来週以降は回復することになろう。一方、製油所の稼働率は低下し90.3%と、再び過去5年の最低水準91.9%を下回るに至った。この稼働率低下によって1.7MBの在庫増加要因となる。米国内の製油所の稼動状況は引き続き不安定であるといえ、ピークシーズン中のガソリン供給は常に綱渡りの状態である。以上より、在庫は前週比▲3.5MBの減少となり、稼働率が低下しているにも関わらず在庫が減少するという悪い形での在庫減少となった。FSCは21.2日と過去5年の最高水準である20.4日を上回るレベルを維持しているが、先週もコメントしたとおり、もし稼働率が例年通りのペースに回復した場合、それだけで4.0MBの在庫減少要因となりえるため、決して在庫水準は高いとはいえない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18.7MB(▲25KBD)と再び減少に転じた。

 ガソリンは市場予想を上回る2週連続の大幅な在庫減少となった。稼働率の低下、得率の低下によって生産量が▲201KBDと減少したこと、需要が前週比▲136KBD(単週ベース)したものの過去5年の最高水準9,571KBDを上回る9,626KBDを維持していることから▲3.7MBの大幅な在庫減少となった。実に4週連続の在庫減少である。同じ週の過去5年の最高水準を上回る生産を維持していたが、稼働率の低下に伴いとうとうこの水準を下回ってしまった。このコラムで指摘している通り、需要を満たすだけの生産はが困難であり、大きく輸入に頼らざるを得ない状況が続いている。輸入は+66KBDの993KBDと前週比増加している。一方需要は、単週ベースで9,626KBD(過去5年の最高水準9,571KBD)、4週平均ベースで9,634KBD(過去5年の最高水準9,609KBD)となっており、信用収縮問題があったものの依然として堅調な様子である。結果、FSCは20.0日と先週から0.4日分減少し引き続き過去5年の最低水準20.9日に満たない。例年通りであれば来週〜再来週にかけてガソリン需要は減少し始めるはずであるが、それにしても20日分の在庫では十分とはいえないだろう。ガソリンの得率57.7%は同じ週の過去5年の最高レベルであり、更に得率を引き上げる事は困難であると見られることや、ガソリン輸入が不安定であることから、ガソリン在庫の増加のためには原油在庫を取り崩しながら稼働率を増加させて生産を増やすしかないといえ、やはり需給がタイトな状態が続くといえよう。

 ディスティレート在庫は略市場予想通りの在庫増加となった。稼働率の低下を受けて生産が4,158KBD(前週比▲48KBD)と減少、輸入もULSD・ヒーティングオイルを中心に320KBD(前週比▲108KBD)と減少したが、需要が小幅に減少したため在庫は+0.9MBの増加となった。ただしFSCも31.0日と先週と変わらないなど、過去5年の31.4日を下回る水準のままであり、通常この時期からディスティレート需要は徐々に増加していくわけであるが、ガソリン在庫水準が非常に低い中、ガソリン在庫を維持しつつディスティレート在庫を積み増す事は難しい状況にあるといえる。