統計速報(9月6日発表分)

 昨日の米在庫統計はまちまちな内容であった。原油は不安定な製油所の稼働状況を受けて毎週大きく在庫がブレている。しかしながら9月11日のOPECで増産が見込めない中、稼働率が改善すると大幅に在庫が減少する状況は変わらず、在庫水準がFSCベースで見た場合でも高いにも関わらず、引き続き綱渡りの感は否めない。一方石油製品在庫は絶対水準、FSCともに低いが、ガソリンはピークシーズンが終焉を迎えつつあり、低い在庫で何とかシーズンを乗り切ったようだ。結局ハリケーン等の突発事象がなければ、20日程度の在庫でも問題ない、ということなのだろうか(昨年と同じ)。今後はディスティレートが石油製品の主役となろう。ただし、こちらも絶対水準・FSCともに過去最低水準であり、加えて稼働率の改善が思わしくない中、自国の生産で需要をまかないきれていない状態であることから輸入頼みの状態が続く見込みであり、中期的には価格が上昇するという見通しを変更する必要はなかろう。では個別に少し詳しく見てみよう。

 原油は、ハリケーンの影響で生産が小幅減少し、輸入はP1,P2の比較的ハリケーンの影響のない地区で増加が見られ同じ時期の略5年平均程度に回復し、総供給は15,258KBD(前週比+275KBD)と殆ど横ばいの中、稼働率がP5を除いて改善し、92.1%(前週比+1.8%、2.1MBの在庫減少要因)となったことから大幅な在庫の減少となった。今回の稼働率改善で、過去5年の最低水準程度まで稼働率は回復しているが、ハリケーンやクラックマージン低下に伴い米国内の製油所の稼動状況は引き続き不安定である。FSCは20.5日と先週から0.7日の大幅に悪化し過去5年の最高水準まで低下した。もし稼働率が例年通りのペースに回復した場合、それだけで1.7MBの在庫減少要因となりえるため、決して在庫水準は高いとはいえない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は20.5MB(+1,854KBD)と再び増加に転じた。

 ガソリンは市場予想を上回る3週連続の大幅な在庫減少となった。稼働率の上昇、得率の低下によって生産量は9,157KBDと前週比略横ばい、輸入はP1の輸入が1,310KBD(前週比+457KBD)となったことから、総供給が10,471KBD(前週比+392KBD、2.7MBの在庫増加要因)となったものの、需要が略前週比横ばい(単週ベースで9,577KBD(過去5年の最高水準9,668KBD)、4週平均ベースで9,634KBD(過去5年の最高水準9,602)、在庫の増減要因とはならず)であったことから、減少幅は先週から減少したものの▲1.5MBの大幅な在庫減少となった(先週は▲3.7MB、今週の在庫増加要因は2.7MB)。結果、FSCは19.8日と先週から0.2日分減少し引き続き過去5年の最低水準20.3日に満たない。いつもの通り結論はガソリン在庫は少ないね、ということになるのだが、実はこの低い在庫水準は昨年のレベルと同じ(昨年が過去5年の最低)であり、去年もこの程度の在庫水準でピークシーズンを乗り切っており、ハリケーン等の災害がなければ何とか乗り切れる在庫水準であると考え方を変えるべきかも知れない。しかし、上記の通り結局のところは輸入に頼らざるを得ない状況となっており、今年は例年よりもハリケーンが頻繁に発生、メキシコ湾を脅かしておりガソリン供給は安定しておらず、引き続き需給がタイトな状態が続くといえよう。何もなければ一応3週間弱分の在庫があるので何とかなる、ということになる。

 ディスティレート在庫は市場予想を大きく上回る増加となった。稼働率の改善と得率の大幅な改善(+0.5%)を受けて生産が4,317KBD(前週比+159KBD)となったことに加え、輸入が389KBD(前週比+69KBD、過去5年の最高レベルである360KBDを上回る)となったことから、総供給が4,706KBD(前週比+288KBD)と増加、需要が略横ばい(単週ベース4,215KBD(前週比+26KBD)、4週平均ベース4,215KBD(前週比+16KBD))であったことから、+2.3MBの大幅な在庫増加となった。これによりFSCも31.4日と先週から0.3日増加した。しかしながらこの水準は過去最低水準である31.3日程度であり、十分なレベルではない。ガソリンがピークシーズンを終えつつある中、今後はディスティレートが話題の中心になるが今のところ在庫水準は高いとは言いがたい。