統計速報(10月24日発表分)

 昨日の米在庫統計は明確にブルな内容であった。原油は輸入の大幅な減少に伴い在庫が減少し、石油製品は共に需要が堅調であることから在庫水準の低下に伴いFSCも大幅に悪化した。そもそも時期的には石油製品在庫が減少してもおかしくないのだが例年を上回るペースの在庫減少となっているようだ。今週は在庫増加を予想していたこともあり、明確にブルな統計であったといえよう。個別に少し詳しく見てみたい。
 原油は生産が小幅増加、輸入が大幅に減少したため、製油所の稼働率が小幅低下したにも関わらず市場予想と裏腹に大幅な在庫減少となった。生産は5,122KBD(+20KBD)と増加、輸入は稼働率の低下に伴い、全ての地区で輸入量が大幅に減少し9,103KBD(前週比▲1,305KBD)と大幅に減少したことから総供給量は14,225KBD(前週比▲1,285KBD)と先週は増加したものの再び減少に転じた。稼働率は規模の大きいP1,P3の低下の影響が大きく、全体で▲0.2%となった。尚、稼働率のみでコメントした倍、P4の稼働率が前週比▲7.4%と大幅に悪化している。例年であれば冬場の在庫積み増しの時期にさしかかっているが、クラックマージンの縮小や米国経済の原則懸念、暖冬予報等の材料を受け稼働率回復が遅々として進んでいない。この時期、ウィンターグレードへの変更が進む時期なのであるが、思うように生産が進んでいないのではないかとの印象を受ける。この結果、在庫は前週比▲5.3MBの316.58MBとなった。FSCは在庫減少の影響が大きく、稼動率の低下はあったものの20.8日と先週の0.3日分の上昇から一転、0.3日分の減少となった。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18,160KBD(▲257BD)と2週連続減少している。

 ガソリンは予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は稼働率の低下はあったが、得率が大幅に上昇(+1.0%)したことでむしろ先週よりも増加し、8,998KBD(前週比+134KBD、+0.9MBの在庫増加要因)となった。輸入は837KBD(前週比▲255KBD、▲1.8MBの在庫減少要因)と大幅に減少したことから、総供給が9,836KBD(前週比▲121KBD、前週比で▲0.8MBの在庫減少要因)となった。需要は米国企業決算が好調であったことなどから例年を上回るペースで増加となった。但し週末に株価が大きく下落したりするなど、株価動向は不安定であり、例年通りの季節的な需要増加が今後も続くかどうかは微妙である。(単週ベースで9,373KBD(過去5年の最高水準9,298KBD)、4週平均ベースで9,237KBD(過去5年の最高水準9,227KBD)、4週平均ベースの需要増加は前週比+0.4%と、例年の+0.1%を上回る。▲0.2MBの在庫減少要因)この結果、在庫は193.8MB(前週比▲1.9MB)と、2週ぶりに大幅な在庫減少となった。先週の統計で在庫が減少していないとおかしい、とコメントしたがその修正が多少入った物と考えている統計の内訳的には在庫が減少していないとおかしいのだが、何かしら統計数値の集計に齟齬があったものと推測される。いずれにせよウィンターグレードへの変更が進捗し、在庫が減少しているものと考えて良さそうだ。FSCは21.0日と先週から0.3日分減少、引き続き過去5年の最低水準21.5日に満たない状態が続いている。少なくともFSCベースで過去5年水準を回復しないと有事へのバッファがないことを意味し、気温低下やハリケーン直撃といった不慮の出来事に対応できない。但し繰り返しになるが現時点ではウィンターグレードへの変更が進む時期であり(規制のあP1,P5での減少が顕著)、在庫減少は時期的に発生しておかしくないのだが例年の動きと異なり、減り方が早い。恐らく稼働率の回復の遅れがそうさせているといえる。よって引き続き、ガソリンの中期的にブルな見通しに変更する必要はないと考える。

 ディスティレート在庫も予想と裏腹に大幅に減少することとなった。内訳的には冬場を控えたヒーティングオイル在庫の積み増しが進む中、ULSDの在庫が大幅に減少した影響が大きい。稼働率が低下した上に、得率が1.4ポイント悪化したことから生産が3,946KBD(前週比▲226KBD、▲1.6MBの在庫の減少要因)となったこと、輸入が略全地区で前週比減少したことから235KBD(前週比▲67KBD、▲0.5MBの在庫減少要因)となったことから総供給が4,181KBD(前週比▲293KBD、前週比▲2.1MBの在庫減少要因)となったうえ、直近需要が例年のペースを大幅に上回る増加となったことから(単週ベース4,276KBD(前週比+113KBD)、4週平均ベース4,295KBD(前週比+52KBD)、▲0.4MBの在庫減少要因。尚、需要増加ペースは+1.2%、例年は+0.2%)、先週とうってかわって▲1.8MBの在庫減少となった。在庫減少の内訳を見てみると、冬場を控えてヒーティングオイルの在庫が増える一方(但し46,900KBと、過去5年の最低水準である50,012KBを大きく下回る)、ULSD在庫が大幅に減少したことが大きい(▲3,044KB)。引き続き、ULSDの需要は堅調であると見られる。通常は冬場を控えて10月末ごろまで在庫積み増しが発生し、その後グレード変更を伴いながら在庫水準を削る展開になるのだが、今年もその例年通りのパターンとなっている。しかしながら需要が過去5年の最高水準を維持する中、在庫水準は略例年並の水準であり、ヒーティングオイルに限って言えば例年よりも在庫が少なく、FSCは31.3日(前週比▲0.8日)と大幅に悪化し、過去5年の最低水準である30.1日は上回っているものの、在庫水準の過不足を判断する時の目処となる過去5年平均レベル(32.7日)を引き続き下回っている。今のところ暖冬予報であることや、米国経済の減速懸念からこの水準でも昨年のように大丈夫なのかも知れないが、ラニーニャの影響等で厳冬となる可能性もあり、有事に対するバッファが少ない状態が続いていることは変わらない。よって、依然としてアップサイドのリスクを抱えていると言えよう。