統計速報(12月19日発表分)

[在庫統計]12月19日発表分
昨日の米在庫統計は原油ブル・ガソリンベア・ディスティレートブルな内容であった。原油は濃霧の影響で陸揚げが遅れたことが影響した。一方稼働率の改善は思わしくなく、製品生産全体に影を落としている。寒波の襲来でヒーティングオイルの需要が高まる中、在庫水準の低さを映じて相場に明らかにプラスのインパクトを与える統計であった。個別に少し詳しく見てゆこう。
 原油は生産が略横ばい、輸入が濃霧の影響で大幅に減少、引き続き稼働率が過去5年の最低水準を大幅に下回る水準で推移しているものの、結果的に予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,110 KBD(▲7KBD)と略横ばい。輸入は9,111KBD(前週比▲952KBD)となった、濃霧の影響でP3(▲296KBD)の輸入が減少したほか、P5(▲454KBD)で大幅に減少している。結果、総供給量は14,221KBD(前週比▲959KBD,▲6.7MBの在庫減少要因)となった。稼働率は輸入の減少の影響もありP1,P3,P5地区で低下、全体で87.8%(前週比▲0.9%)と、過去5年の最低水準である89.1%を引き続き下回る状況が継続している。クラックマージンは徐々に改善してきているものの、期末を控えた在庫積み増しを敬遠する動きの影響があると見られ稼働率の改善は思わしくない。結果、在庫は前週比▲7.6MBの296.9MBとなった。今回の在庫統計では原油在庫はP1以外の全ての地区で減少している。端的に輸入量の減少が響いたものと見られる。FSC稼働率悪化はあったものの在庫の減少が響き、19.4日と先週から0.3日悪化、ついに過去5年平均レベルを下回るに至った。やはりOPECの増産見送りに伴う在庫減少は深刻であるといえ、ラニーニャの影響で世界的な厳冬となっている以上、この在庫水準は心もとないと言ってよい。万一稼働率が例年並の91.4%に回復したとすればそれだけで4.4MBの在庫減少要因となりえることは注意に値しよう。その一方でイールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17,430KBD(+115KBD)と6週連続で増加している。このことは繰り返しになるが、イールドカーブバック縮小に寄与するものと考えられる。"


 ガソリン在庫は増加した。生産は稼働率が低下したものの得率が更に改善したことから(59.5%、前週比+0.3%。この時期の最高水準である59.9%に略比肩するレベル)、全体で9,112KBD(前週比▲43KBD)となった。輸入は稼働率と得率の悪化によって生産が減少したP1で増加し1,030KBD(過去5年の最高水準1,024KBDを上回る)となったことから、全体でも1,108KBD(前週比+123KBD)となった。結果、総供給は10,220KBD(前週比+80KBD、前週比で+0.6MBの在庫増加要因)となった。需要は例年の増加ペース(+0.3%)を下回る+0.2%の増加率にとどまった。調達価格の上昇がダイレクトに小売価格に反映されていないことを映じて比較的堅調な推移が続いており、4週平均ベースの需要は9,314KBD(前週比+16KBD)となった。直近の需要は9,287KBD(前週比▲61KBD、過去5年の最高水準9,394KBDを下回るが水準は引き続き高い)。この結果、在庫は205.2MB(前週比+3.0MB)と先週に続き大幅な増加となった。内訳的には、Conventional,Blending Component, RBOBとも増加している。地区的な内訳は、全ての地区で大幅な増加となっている。小売価格が大幅に引き揚げられていない中、需要が高い水準で維持されている中での在庫増加であり、ある意味健全な在庫増加であったといえる。結果、FSCは22.0日と前週比+0.3日改善、過去5年の最低水準21.4日を上回る状態が続いている。但し、繰り返しコメントしているようにFSCベースで少なくとも過去5年水準(22.4日)を回復しなければ有事のバッファがないと言ってよく、寒波襲来といった需要の増加(ヒーティングオイルの需要増加に伴い、ガソリンの生産が犠牲になる可能性)や、季節的な濃霧発生といった輸入の阻害要因が発生した場合には、対応が十分できるレベルではない状況であることは忘れてはなるまい。

 ディスティレート在庫は大幅な減少となった。内訳的にはピークシーズンであるヒーティングオイルの在庫減少が先週に続いて顕著であるのと同時に、ディーゼル在庫も大幅な減少となった。生産は、稼働率が悪化したものの得率の大幅な改善(28.2%。過去5年の最高水準は26.9%)となったことから4,315KBD(+81KBD)と、過去5年の最高生産水準(4,184KBD)を上回ることとなった。ケロシンの得率を犠牲(▲1.0%)にすることで、ガソリンとディスティレートの得率が改善している。内訳的にはULSDの生産が減少、ディーゼルとヒーティングオイルの生産が増加している。輸入はULSDの輸入が増加(+66KBD)、ヒーティングオイルの輸入も増加(+14KBD)したことから全体で249KBD(前週比+79KBD)と増加した。ただし過去5年水準と比較した場合、過去5年の平均である399KBDは大きく下回るレベルである。寒波の影響で欧州の需要も増加していることが、毎週輸入の水準を低位推移させている要因であると考えられる。この結果、総供給は4,564KBD(前週比+160KBD、前週比+1.1MBの在庫増加要因)となった。その一方で需要は直近需要が大幅に増加し、4,692KBD(前週比+352KBD、過去5年の最高水準は4,300KBD)となった。端的に気温低下の影響でヒーティングオイルの需要が増加しているものと推察される。この結果、4週平均ベースの需要も小幅増加しており4,404KBD(前週比+22KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)となった。今週の需要増加ペースは+0.5%と例年の需要増加ペース+1.5%を下回るレベルであるが、今週の増加ペースが持続すれば例年通りのペースに戻ることになる。結果、在庫は▲2.2MBの129.4MBと大幅な在庫減少となった。在庫減少の内訳を見てみると、冬場に突入したこともありヒーティングオイルの在庫が▲2.1MBと3週連続の大幅な減少となったことが大きい(ヒーティングオイル在庫は40.5MB)。引き続きヒーティングオイル在庫は過去5年の最低水準である54.6MBにも達していない。FSCは29.4日(前週比▲0.6日)と大幅に悪化、引き続き過去5年平均(31.2日)を下回っている。ラニーニャの影響で世界中の気温が低下しておりFSCが過去5年平均を下回る有事におけるバッファが少ない状態であることから、引き続き需給を巡る環境は厳しいといえる。今回の統計は明確にブルな内容であった。期末を控えてしばらくの間は高い原油・石油製品価格の水準が在庫積み増しの阻害要因となると考えられ、趨勢として高値で推移するであろうとの見通しに変更の必要はない。