統計速報2008年1月9日発表分

 昨日の米在庫統計は原油ブル・石油製品ベアな内容であった。稼働率が新年度から大幅に回復、例年並の水準を回復したことから石油製品在庫は大幅な増加となる一方、石油製品のフィードストックである原油自体の価格水準が引き続き高すぎることもあり輸入も緩慢で、原油に関しては在庫が取り崩されるブルな状況が継続している。この状態が続けば次回OPEC総会で増産が検討される可能性が高いと考える。詳しく見てみよう。
 原油は生産が若干減少、輸入が減少、加えて稼働率が大幅に回復したことによって予想を大きく上回る大幅な在庫減少となった。これで在庫の減少は8週連続となった。生産は5,051KBD(▲27KBD)と小幅減少、輸入は9,806KBD(前週比▲203KBD)と先週の回復分をほぼ吐き出す形で減少した。P3の輸入が▲480KBDと減少した影響によるものである。結果、総供給量は14,857KBD(前週比▲230KBD,▲1.6MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP4を除くすべての地区で改善、やはり新年度入りして製品生産に拍車がかかったようである。この稼働率上昇により全体で91.3%と、一気に過去5年平均91.2%を回復するに至った。稼働率の回復は▲2.4MBの在庫減少要因となる。結果、在庫は前週比▲6.7MBの282.8MB(過去5年平均レベル297.1MB)となった。今回の在庫統計ではP3,P4,P5での在庫減少が顕著(3地区合計で▲9.6MB)であった。FSCは在庫減少と稼働率改善の2要因で、17.8日と先週から更に0.8日悪化、過去5年の最低水準である17.6日が視野に入ってきた。原油に関して言えば明らかに「有事のバッファがない状態」になっているといえる。先週もコメントしたがこの在庫水準であれば来月のOPEC総会での増産が必須であるといえ、万一見送られた場合には原油在庫のレベルは危機的な水準まで転落することとなろう。ファンドマネーの相場押し上げ、というよりも実際の需給の逼迫で相場が上昇するリスクを孕んでいる。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.7MB(+234KB)と9週連続で増加している。"

 ガソリン在庫は大幅な増加となった。生産は稼働率が大幅に改善したが、得率が先週に続き悪化(57.3%、前週比▲0.9%。2002年以来の高水準であることは変わらず)したため、全体で9,116KBD(前週比+46KBD)と増加にとどまった。尚、生産のレベルは過去5年の最高水準(9,326KBD)を下回っている。輸入は1,020KBD(前週比▲131KBD)と、過去5年の最高水準は下回ったものの引き続き高い水準を維持している。今回の輸入減少が顕著だったのはP1,P3であるが、稼働率が大幅に回復したことにより、輸入が緩慢になった可能性が高い。結果、総供給は10,136KBD(前週比▲85KBD、前週比で▲0.6MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,331KBD(前週比▲11KBD、過去5年の最高水準9,340KBDは若干下回る。0.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,304KBD(前週比+18KBD、過去5年の最高水準9,358KBDを下回るが水準は引き続き高い)となっており、有意な需要減少は確認できない状態である。以上を合計するとバランス上は在庫は+1.5MBの増加にとどまるはずなのだが、213.1MB(前週比+5.2MB)と予想を大きく上回る在庫増加となった。在庫増加の内訳は、RFG, Conventional, Blending Component, RBOBすべて増加しているが、Blending Component, RBOBの在庫増加が顕著(各々+3.9MB,+2.3MB)であった。地区の内訳は、P3で大幅に減少(▲1.0MB)しているが、その他の地区特にP1のBlending component, RBOB在庫の増加が顕著であった。この結果、FSCは22.8日と前週比+0.6日と大幅に改善、過去5年の平均水準(22.8日)を回復するに至った。当コラムでゆとりのある在庫水準と定義している過去5年平均を回復したことにより、有事におけるバッファがもてたと考えてよかろう。ガソリンについては今回の統計は明確にベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫も予想を上回る在庫増加となった。総供給が生産の回復により小幅増加したことに加え、需要が減少したことが要因である。季節的には1月中旬をピークに在庫が減少し始めるまでの在庫積み増しが継続するタイミングであるため、在庫増加は予想通りであるが、稼働率・得率が例年を上回るレベルとなっていることから、ベアなサプライズのある統計であったといえる。生産は、稼働率が例年並の水準に回復したこと、得率が大幅に改善(28.2%、前週比+0.9%。過去5年の最高水準は27.2%を上回るレベルであり非常に高い水準であるといえる)したことから4,489KBD(+214KBD)となった。引き続き過去5年の最高生産水準(4,311KBD)を上回るレベルを維持している。製品生産の内訳はディーゼルオイル以外の生産が大幅に増加している(ヒーティングオイルは542KBD、前週比+93KBD、ULSDは3,341KBD、前週比+136KBD)。輸入は生産の回復もあって軒並み減少し、合計で前週比▲195KBDの131KBDとなった。この水準は同時期の過去最低水準221KBDを大きく下回るレベルである。この結果、総供給は4,620KBD(前週比+19KBD、前週比+0.1MBの在庫増加要因)となった。需要は例年通りの季節サイクルで減少、直近需要が4,223KBD(前週比▲117KBD)と大幅な減少となった。4週平均ベースの需要も4,477KBD(前週比▲29KBD)と減少に転じることとなった。結果、在庫は+1.5MBの128.7MBと在庫増加となった。在庫増加の内訳は、ULSDが+3.5MB、ディーゼルオイルが+0.4MBとなった一方、シーズン品であるヒーティングオイル在庫が主要消費地である米北東部P1で▲2.4MBと大幅に減少している。引き続き過去5年の最低水準は53.3MBを大きく下回るレベルである。FSCは在庫・需要の両要因で28.7日(前週比+0.5日)と、で過去5年の最低水準(27.8日)を回復した。ラニーニャの影響で寒暖不安定であるが引き続きシーズン品であることもあり、価格の上昇に関わらず(重油へのシフトの可能性はあるものの)ヒーティングオイルの需要が減少することは当面なかろう(ディーゼル・ULSD等の輸送燃料は別)。