統計速報(1月25日発表分)

 昨日の米在庫統計はベアな内容であった。原油は処理量の減少に伴い大幅な在庫増加となり、ガソリンは生産が減少したものの、大幅な在庫増加となった。ディスティレートも予想を下回る在庫減少となっており、いずれの製品も供給が減っているが、予想ほど在庫が減少していない状況である。ということはやはり需要動向が徐々に悪化している可能性があることを示唆している、詳しく見てみよう。

 原油は生産が若干減少、輸入が減少したが稼働率が大幅に悪化したことから予想を上回る大幅な在庫増加となった。これで在庫の増加は3週連続となった。生産は4,998KBD(▲44KBD)と小幅減少、輸入は10,056KBD(前週比▲100KBD)となった。P5の輸入が+494KBDと増加したことを除けばその他の地区全てで現象となったことが影響した。結果、総供給量は15,054KBD(前週比▲144KBD,▲1.0MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP1,P3で改善したものの、その他の地区で全て悪化した。実に稼働率は過去の5年平均を全ての地区で下回っている。時期的に定修に入るタイミングであるが、その影響が出始めたようだ。稼働率の悪化は+1.8MBの在庫増加要因となる。供給量減少、処理量の減少で在庫は前週比で+0.8MBの3.0MB(先週の在庫増加は+2.2MB)となるが、実際は在庫は前週比+3.6MBの289.4MB(過去5年平均レベル294.4MB)となった。例年のペースであれば稼働率の低下とともに在庫が緩やかに増加する時期であるが、例年の在庫増加率+0.1%に比べ、今週の在庫増加率は+1.2%と急速な在庫の増加となっている。今回の在庫統計ではP2,P5以外の地区で在庫が増加した。FSCは在庫増加と稼働率悪化の両要因で、19.8日と先週から更に0.6日改善。過去5年の平均である19.7日を上回っている。IEA月報が示すように、OECD在庫のレベルは例年よりも低いが、毎週統計が発表される米国の原油を巡る需給環境はタイトではなくなってきているようだ。米国在庫のみを見てOPECが増原産を判断しているわけではないが、このままであれば来月のOPEC総会では増産が見送られる可能性が高い。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は15.8MB(+102KB)と増加に転じている。

 ガソリン在庫は大幅な増加となった。生産は稼働率が大幅に悪化したため、得率が+0.5%と改善(60.0%、2002年以来の高水準)したものの、全体で8,887KBD(前週比▲78KBD)と減少した。尚、生産のレベルは過去5年の最高水準(9,106KBD)を若干下回っているが高い水準を維持しているのは事実である。輸入は1,156KBD(前週比▲72KBD)と減少した。ただしこちらも、過去5年の最高水準917KBDを上回っており、引き続き高い水準を維持している。今回の輸入減少が顕著だったのはP1(▲195KBD)であるが、稼働率が大幅に回復した影響もあったと見られる。結果、総供給は10,043KBD(前週比▲150KBD、前週比で▲1.1MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,081KBD(前週比▲87KBD、過去5年の最高水準9,129KBDを下回る。+0.6MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで8,940KBD(前週比▲24KBD)となった。サブプライムローンの影響で徐々に消費に影響が出始めていると見られるが、実は需要の減少ペースは▲0.9%と例年の▲1.1%を下回る減少にとどまっている状況。年初からの価格急落の影響で買い控えていた消費者の買いが入ったものと見られる。以上を合計するとバランス上は在庫は+4.5MBの増加(先週の増加+5.0MB)となるのだが、これを小幅下回る+3.6MBの223.9MBとなった。ただし予想を大きく上回る在庫増加である。在庫増加の内訳は、Conventional, Blending Componentが増加、地区の内訳では、P5で大幅に減少(▲1.2MB)したが、その他の地区特にP2(+2.0MB)、P3(+2.2MB)の在庫の増加が顕著であった。この結果、FSCは24.7日と前週比+0.6日と大幅に改善、過去5年の平均水準(24.3日)を回復し、過去5年の最高水準である24.9日に迫る勢いである。昨年の冬場の状況からは一変した。当コラムでゆとりのある在庫水準と定義している過去5年平均を回復したことにより、有事におけるバッファがもてたと考えてよかろう。ガソリンについては今回の統計は明確にベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫も予想よりも在庫が減少しなかった。総供給が生産の悪化により減少したが、需要が大幅に減少したためである。季節的には1月中旬をピークに在庫が減少し始めるタイミングであるため在庫減少自体は予想通りであるが、在庫の減少率は▲1.2%と例年の▲2.2%を大きく下回っている。生産は、稼働率が予想以上に悪化したことや、得率が大幅に悪化(26.3%、前週比▲0.9%。過去5年の最高水準は26.5%を下回った)したことから3,894KBD(▲210KBD)と大幅な現象となった。とうとう過去5年の最高生産水準(3,979KBD)を下回った。製品生産の内訳はULDSが▲106KBD、ディーゼルオイルが▲90KB、ヒーティングオイルが▲14KBDとなっている。輸入はほぼ横ばいで前週比+35KBDの277KBDとなった。この水準は同時期の過去最低水準284KBDを大きく下回るレベルである。この結果、総供給は4,171KBD(前週比▲175KBD、前週比▲1.2MBの在庫減少要因)となった。需要(4週平均需要)は例年通りであれば増加に転じるタイミング(気温の低下とともにヒーティングオイルの需要が増加)であるが、季節サイクル(+1.9%)に反して減少(▲0.8%)となった。直近需要が4,206KBD(前週比▲141KBD)と大幅な減少となった。4週平均ベースの需要も4,248KBD(前週比▲34KBD、+0.2MBの在庫増加要因)と減少している。全体のバランスでは前週比で▲1.0MBの▲2.3MB(先週の在庫減少は▲1.3MB)となるところであるが、実際は前週比▲1.5MBの127.0MBとなった。在庫減少の内訳は、ULSDが▲0.8MB、ディーゼルオイルが▲0.6MB、ヒーティングオイルが▲0,1MBとなった。FSCは在庫要因で29.9日(前週比▲0.1日)となった。過去5年の平均水準33.0日は下回るっているため、有事のバッファがないレベルではあるが、在庫の減少率は例年を下回るレベルであり、需要が季節サイクルに反して減少していることも鑑みれば徐々に在庫は絶対水準、FSCベースでも解消されていくことになろう。ディスティレートもマイルドにベアな内容であった。