統計速報(2008年2月6日発表分)

 昨日の米在庫統計は明確にベアな内容であった。原油は処理量の減少を背景に大幅な在庫増加となり、ガソリンは製品供給量の減少にもかかわらず需要の減少で大幅な在庫増加、ディスティレートは季節サイクルに反し需要が減少したことからやはり予想を上回る在庫増加となった。米経済の失速が、需要の減少に顕著に現れた統計であるといえ、明確にベアな内容であったと考えられる。詳しく見てみよう。

 原油は生産が若干増加、輸入が回復した一方、予想を上回る稼働率悪化となったことから予想を大きく上回る在庫増加となった。これで在庫の増加は4週連続となった。生産は5,013KBD(+15KBD)と小幅増加、輸入はP1,P3での輸入増加の影響により10,514KBD(前週比+458KBD)となった。結果、総供給量は15,527KBD(前週比+473KBD,+3.3MBの在庫増加要因)となった。稼働率は規模の小さいP4,P5で改善したものの、P1〜P3まで軒並み大幅に悪化したことから全体で84.3%と前週比▲0.7%の悪化となった。過去5年の最低稼働率で推移している。製品需要の減少観測に加え、2月の定修時期に入ったことによる影響が大きい。稼働率の悪化は+0.8MBの在庫増加要因となる。供給量増加、処理量の減少で在庫は前週比で+4.1MBの7.7MB(先週の在庫増加は+3.6MB)となるが、実際は在庫は前週比+7.1MBの300.0MB(過去5年平均レベル295.9MB)となった。例年のペースであれば稼働率の低下とともに在庫が緩やかに増加し、前週比+0.7%程度の在庫増加となるところが、今回は+2.7%の大幅増加となった。明らかに季節要因を上回る在庫増加となっている。今回の在庫統計ではP3地区の在庫増加が+6.7MBと顕著であり、全体の在庫押し上げに寄与した格好。FSCは在庫増加と稼働率悪化の両要因で、20.4日と先週から更に0.6日改善。過去5年の平均である19.9日を上回っている。米国経済の失速懸念を背景とする製品需要鈍化観測で在庫が積み上がる形となった。景気浮揚の観点からのOPECの増産は今のところ望むべくもなく、次回総会では米国在庫の増加を背景として減産すら議論される可能性が高まってきた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は16.5MB(+700KB)と2週連続で増加している。

 ガソリン在庫は大幅な増加となった。生産は稼働率が大幅に悪化したことや、得率の悪化(▲0.6%)を受け全体で8,739KBD(前週比▲143KBD)と減少した。尚、生産のレベルは過去5年の最高水準(9,087KBD)を下回っており、徐々に過去5年平均水準(8,389KBD)に近づいている。輸入は略先週と変わらず1,144KBD(前週比▲12KBD)と小幅減少した。結果、総供給は9,883KBD(前週比▲160KBD、前週比で▲1.1MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで8,984KBD(前週比▲97KBD、過去5年平均8,792KBDに近づきつつある。+0.7MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで8,916KBD(前週比▲24KBD)となった。米けサブプライムローンの影響で徐々に消費に影響が出始めていると見られ、例年であれば需要は略横ばい〜プラスとなる時期であるにもかかわらず前週比▲1.1%となっている。先週は年初からの下落で買い控えの駆け込み買いによる下支えが見られたが、その効果も剥落しつつあるようだ。以上を合計するとバランス上は在庫は+3.2MBの在庫増加(先週の増加+3.6MB)となるのだが、これを上回る+3.6MBの227.5MBとなった。先週に続き予想を大きく上回る在庫増加である。この増加率は著しい暖冬で在庫が増加した昨年と略同じ増加ペースである。在庫増加の内訳は、RFG, Conventional, Blending Componentすべて増加、地区の内訳では、P1で大幅に増加している。この結果、FSCは25.3日と前週比+0.7日と大幅に改善、過去5年の最高水準である24.7日を上回ることとなった。ことここにいたってはガソリン在庫の水準は十分であり、今週の統計でもガソリンについては明確にベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫も予想に反し、小幅な在庫増加となった。稼働率の低下はあったが、得率が大幅に改善したことから総供給が大幅に改善、需要の減少もあったためである。季節的には1月中旬をピークに在庫が減少し始めるタイミングであるが、在庫のは前週比+0.1%と例年の▲3.4%に反し、大幅な増加となった。生産は、稼働率が悪化したが得率が大幅に改善(27.5%、前週比+1.2%。過去5年の最高水準26.2%を上回る)したことから4,037KBD(+143KBD)と増加となった。この生産レベルは過去5年の最高水準を上回るレベルである。製品生産の内訳はULDS、ディーゼル、ヒーティングとも増加(各々+63KBD、+12KBD、+68KBD)している。輸入は前週比+94KBDの371KBDとなった。この水準は同時期の過去5年平均409KBDを大きく下回るレベルである。この結果、総供給は4,408KBD(前週比+237KBD、前週比+1.7MBの在庫増加要因)となった。需要(4週平均需要)は例年通りであればプラス(前週比+4.8%)に転じるタイミングであるが逆に前週比▲0.1%と減少している。これは先週から続いて見られる現象である。直近需要は4,169KBD(前週比▲37KBD)と現象が継続している。4週平均ベースの需要も4,235KBD(前週比▲14KBD、+0.1MBの在庫増加要因)と減少している。全体のバランスでは前週比で+1.8MBの+0.3MB(先週の在庫減少は▲1.5MB)となるところであるが、略計算どおりの+0.1MBの127.1MBとなった。在庫増加の内訳は、ディーゼルが▲0.7MBとなった一方で、ULSDが+0.5MB、ヒーティングオイルが+0.3MBとなった(ただしヒーティングオイルの在庫水準は過去最低の51.3MBを下回る36.3MBとなっており、ヒーティングオイルに関してのみ言えば十分な在庫があるレベルではない)。FSCは在庫と需要の両要因で30.0日(前週比+0.1日)となった。過去5年の平均水準31.0日は下回るっているが需要が例年通り増加していないことを鑑みれば、在庫はゆとりのあるレベルを維持できると見る。実際にサブプライム問題が勃発した8月からちょうど6ヶ月。徐々に実態経済(需要)に悪影響が出てきたと見るのが自然だろう。