統計速報(2月13日発表分)

 昨日の米在庫統計はニュートラル〜ベアな内容であった。原油は濃霧の影響で輸入が減少したが、在庫増加を維持した。ガソリン・ディスティレートは需要減少が鮮明になりつつある中、輸入の減少といった在庫減少要因はあったもののどちらも市場予想を上回る在庫増加(ないしは下回る減少)となった。やはり米経済の失速が需要を徐々に減少させていると見られ、今回の統計は需要要因でベアな統計であったと考えられる。詳しく見てみよう。

 原油は生産が若干増加、輸入が大幅に減少、稼働率も予想を上回る改善となったが在庫増加となった。これで在庫の増加は5週連続となった。生産は5,044KBD(+31KBD)と小幅増加、輸入はHuston Ship Channelの濃霧の影響で輸入が遅延したことからP1,P3で輸入量が減少、9,737KBD(前週比▲777KBD)となった。結果、総供給量は14,781KBD(前週比▲746KBD,▲5.4MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP5で小幅低下したがその他の地区で大幅に改善したことから全体で85.1%と全体で84.3%と前週比+0.7%の改善となった。過去5年の最低稼働率で引き続き推移している。製品需要の減少観測に加え、2月の定修時期に入ったことによる影響が出ているものと見られる。稼働率の改善は▲0.9MBの在庫減少要因となる。供給量減少、処理量の増加で在庫は前週比で▲6.3MBの+0.8MB(先週の在庫増加は+7.1MB)となるが、実際は在庫は前週比+1.1MBの301.1MB(過去5年平均レベル296.4MB)となった。例年のペースであれば稼働率の低下とともに在庫が緩やかに増加し、前週比+0.2%程度の在庫増加となるところが、今週も+0.4%と例年のペースを上回る在庫増加となっている。今回の在庫統計ではP3地区の在庫増加が+0.9MB、P5地区の在庫増加が+2.5MBと顕著であり、全体の在庫押し上げに寄与した。輸入の減少したP1,P3では顕著に減少している。FSCは在庫増加はあったものの稼働率が改善したことから前週比▲0.1日の20.3日となった。過去5年の平均である20.0日を上回っている。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.2MB(+701KB)と3週連続で増加している。バック縮小に寄与すると見られる。

 ガソリン在庫も増加し、予想を小幅上回る在庫増加となった。生産は稼働率が大幅に改善したことや、得率が改善(+0.6%)を受け全体で8,909KBD(前週比+170KBD)と増加した。生産はここ数ヶ月過去5年の最高水準(9,013KBD)を若干下回る高い水準を維持している。輸入はP1地区で前週比▲310KBDとなったことから全体で841KBD(前週比▲303KBD)と大幅に減少した。結果、総供給は9,750KBD(前週比▲133KBD、前週比で▲0.9MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで8,960KBD(前週比▲24KBD、過去5年平均8,747KBDに近づきつつある。+0.2MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,020KBD(前週比+104KBD)となった。直近需要の増加は小売価格の低下(前週比▲1.8?)となったことによる価格要因であると考える。しかしながら4週平均で見た場合のガソリン需要は通常この時期前週比+0.1%と小幅増加するのだが、▲0.4%と需要の減少が継続している。過去この週まで需要が減少したのは直近5年では9.11の翌年に当たる2002年のみである。やはり米サブプライムローンの影響で徐々に消費に影響が出始めていると考えておいたほうがよさそうである。来週の統計でも需要が減少するようであれば、消費に影響が出ているとみてよいと言えよう。以上を合計するとバランス上は在庫は+2.9MBの在庫増加(先週の増加+3.6MB)となるのだが、これを下回る+1.7MBのMBとなった。在庫増加の内訳は、Conventionalを中心に増加している。地区の内訳では、P1で大幅に増加(+1.8MB)しており、過去5年の最高水準を上回る65.9MB(過去5年の最高水準は62.4MB)となっている。この結果、FSCは25.6日と前週比+0.3日の改善。過去5年の最高水準である25.1日を上回っている。今週も需要減少に伴う在庫増加であったといえ、ガソリンについてはやはりベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫は予想を大きく下回る在庫減少にとどまった。稼働率の改善と得率の改善で生産が小幅増加したものの、輸入がガソリンと同様P1で減少(▲0.1MBと小幅)したことから総供給が減少、しかしながら需要が小幅減少したことから小幅な在庫増加となった。市場は例年通りのペースでの在庫減少を予想していたが、外れてしまった。生産は、稼働率が悪化したが得率が大幅に改善したことから4,091KBD(+54KBD)の増加となった。この生産レベルは過去5年の最高水準を上回るレベルである。製品生産の内訳はヒーティングオイルが減少したが、ULDS、ディーゼルが増加(各々▲60KBD、+83KBD、+31KBD)している。輸入は前週比▲89KBDの282KBDとなった。ヒーティングオイルの輸入が減少したためである。この結果、総供給は4,373KBD(前週比▲35KBD、前週比▲0.2MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は例年通りであればプラス(前週比+2.2%)となってもおかしくないのだが先週と同様に前週比▲0.1%と減少している。明らかに例年の動きとは異なり、需要減少が起きていると考えてよさそうである。直近需要は4,196KBD(前週比+27KBD)と小幅増加している。4週平均ベースの需要は4,230KBD(前週比▲5KBD、在庫増減要因とはならず)と減少している。全体のバランスでは前週比で▲0.2MBの▲0.1MB(先週の在庫減少は+0.1MB)となるところであるが、略計算どおり▲0.2MBの127.0MBとなった。在庫増加の内訳は、ディーゼルが▲0.8MBとなった一方で、ULSDが+0.1MB、ヒーティングオイルが+0.6MBとなった(ただしヒーティングオイルの在庫水準は過去最低の49.5MBを大きく下回る36.7MBとなっており、ヒーティングオイルに関してのみ言えば十分な在庫があるレベルではない)。FSCは先週と変わらず30.0日(前週比±0.0日)となった。過去5年の平均水準29.0日をとうとう上回るに至った。ディスティレートに関しても需要減少が鮮明になっており実際にサブプライム問題の影響が実態経済(需要)に影響が与え始めてきたようだ。