(2008年2月21日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア・製品ブルの内容であった。稼働率の低下に伴う原油在庫増加と、石油製品在庫減少が明確に確認できた統計である。ただし解せないのはこのタイミングで石油製品の需要が大幅に増加していることだ。石油製品価格の急上昇、米労働環境の悪化、株価の下落による資産効果の剥落、といったマイナス材料が多いにも関わらず今回の統計では需要の減少は確認されず、むしろ大幅な増加となった。しかしながら小職は引き続き、米経済失速による需要減少が著しい原油価格高騰を抑制すると考えているが、今回の統計では需要の減少を確認できなかった。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が増加、稼働率が大幅に低下したことから予想を上回る在庫増加となった。これで在庫の増加は6週連続となった。生産は5,034KBD(▲10KBD)と小幅減少、輸入はHuston Ship Channelの再開に伴う輸入増加でP1,P3で輸入量が回復、10,102KBD(前週比+365KBD)となった。結果、総供給量は15,136KBD(前週比+355KBD,+2.5MBの在庫増加要因)となった。稼働率はP1で▲12.8%と大幅低下したほか、規模の大きいP3で▲0.8%となった影響が大きく6週連続の悪化となった。稼働率の低下パターンは歴史的暖冬となった昨年と略同じである。引き続き、過去5年の最低稼働率で引き続き推移している。製品需要の減少観測に加え、2月の定修時期に入ったことによる影響が出ているものと見られる。稼働率の悪化は+2.0MBの在庫増加要因となる。供給量増加、処理量の減少で在庫は前週比で+4.5MBの+5.6MB(先週の在庫増加は+1.1MB)となるが、実際は在庫は前週比+4.2MBの305.3MB(過去5年平均レベル297.1MB)となった。在庫の増加率は前週比+1.4%となり、例年の+0.4%を大きく上回っている。今回の在庫統計では稼働率の改善が見られたP5地区で大きく在庫が減少(▲1.0MB)したが、その他の地区では軒並み在庫増加となっている。FSCは在庫増加・処理量減少の両要因で前週比+0.7日の21.0日となった。過去5年の平均である19.9日を上回り、過去5年の最高水準である22日が視野に入ってきた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は16.7MB(前週比▲478KB)と4週ぶりに減少に転じた。"

 ガソリン在庫も増加したが予想を下回る在庫増加となった。生産は稼働率の低下の影響はあったが、得率が2週連続で大幅に改善したことから全体で8,840KBD(前週比▲69KBD)と減少した。生産はここ数ヶ月過去5年の最高水準(8,907KBD)に近い水準を維持している。輸入は殆ど変化なく、前週比▲14KBDの827KBDとなった。結果、総供給は9,667KBD(前週比▲83KBD、前週比で▲0.6MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,000KBD(前週比+40KBD、過去5年平均8,766KBD、▲0.3MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,125KBD(前週比+105KBD)となった。先週に比して小売価格は上昇しており、価格の高騰にも関わらず、依然として米国の需要は強い(今週に関しては有意な需要減少は観測されず)。ただしこの需要増加率(+0.4%)は例年と同じ増加率である。ただしサブプライムローンの影響で徐々に消費に影響を与え始めると考えられることから、来週の需要にも注目したい。以上を合計するとバランス上は在庫は▲0.9MBの在庫増加(先週の増加+0.8MB)となるのだが、これを若干上回る+1.0MBの在庫増加となった。在庫増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが増加している。この結果、FSCは25.6日と先週から変わらず。引き続き過去5年の最高水準である25.2日を上回る状態が続いている。今週の在庫増加は略季節サイクル通りの在庫増加であり、稼働率が低下している中で例年程度の在庫増加を保っている、と言うことは稼働率が従来どおりのレベルであれば大幅な在庫増加になっていたことを意味する。しかしながら今回のガソリン統計は予想比でブルな内容であったと言える。

 ディスティレート在庫は予想を大きく上回る在庫減少となった。稼働率の悪化を受け生産が小幅減少、輸入が濃霧解消でP1,P3で増加したことから総供給は略先週並み、しかしながら需要が大幅に増加したことから極端な在庫減少となった。生産は、稼働率が悪化したことにより4,010KBD(▲81KBD)と減少。引き続き過去5年の最高水準である4,080KBDと略同じ水準を維持している。製品生産の内訳はヒーティングオイル・ULSDが減少、ディーゼルが増加(各々▲113KBD、▲10KBD、+42KBD)している。輸入は前週比+99KBDの381KBD(例年454KBDを下回る)となった。この結果、総供給は4,391KBD(前週比+18KBD、前週比+0.1MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は前週比+2.8%の4,349KBD(前週比▲0.8MBの在庫減少要因)と、例年の+0.7%を大きく上回る増加となった。価格高騰、サブプライムの影響による株価低迷といった需要にはマイナスの材料が山積なのだが、事実はそうなっていない。小売価格も上昇しているため非常に疑問の残る需要増加である。全体のバランスでは前週比で▲1.0MBの▲1.2MB(先週の在庫減少は▲0.2MB)となるところであるが、計算を大きく上回る▲4.4MBの在庫減少となり、総在庫は122.5MBとなった。まだ過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳は、ULSDが▲2.8MB、ヒーティングオイルが▲1.5MBとなった。P1の稼働率が著しく低下していること、気温低下の影響でP1、P3地区での在庫減少が顕著であった。FSCは28.2日(前週比▲1.8日)の大幅低下となった。ただし過去5年の平均水準27.4日は上回っている。正直、気温低下と稼働率の低下で在庫が減少するのは理解できるのだが、このタイミングでの需要の増加は正直解せない部分がある。引き続き来週の統計の内容を見極める必要がありそうだ。今回の統計はディスティレートは明確に市場予想比ブルな内容であった。