統計速報(3月12日発表分)

 昨日の米在庫統計は明確にベアな内容。原油は輸入の大幅増加によって在庫が積みあがり、ガソリン・ディスティレートは総じて需要の減少傾向が出始めていることから予想比ベアな内容となった。著しく高い原油価格と不安定な最終消費動向を映じて稼働率も不安定であり、原油に関しては輸入がどの程度なされるか、ということが在庫増減の鍵を握っている。製品生産は得率の調整で稼働率の変動を相殺している形になっているため、より需要の動向が重要になってくるが、輸送需要を中心に徐々に減速感が出てきているようである。詳しく見てみよう。

 原油は生産が引き続き横ばい、輸入が大幅に増加、稼働率が低下したことから予想を大きく上回る在庫増加となった。生産は5,100KBD(+50KBD)と増加。原油生産は引き続き非常に安定している。輸入はP3で大幅に増加(+1,090KBD)したことから全体で10,548KBD(前週比+1,111KBD)となった。この時期の輸入量としては過去5年最高水準を上回っている。結果、総供給量は15,648KBD(前週比+1,167KBD,+8.1MBの在庫増加要因)となった。稼働率はP3,P5以外の地区全てで大幅に低下したことから全体でも85.0%(前週比▲0.9%)と、これも予想を大幅に下回る結果となった。例年であれば徐々に稼働率が回復するタイミングであるが、原油価格の高騰や、最終需要動向の不安定さ、原油価格の高騰に伴うクラックマージンの頭打ち、といったマイナス材料も多く稼働率の改善状況は非常に不安定である。稼働率の悪化は+1.1MBの在庫増加要因となる。供給量増加、処理量の減少で在庫は前週比で+9.2MBの+6.1MB(先週の在庫増加は▲3.1MB)となるが、略計算どおりの+6.2MBの在庫増加隣、原油在庫は311.6MB(過去5年平均レベル300.8MB)となった。在庫の増加率は例年は+0.5%と稼働率の改善とともに緩やかな増加となる時期であるが、今週は前週比+1.0%と大幅な増加となった。FSCは在庫増加・処理量化粧の両要因により前週比+0.6日の21.0日となり、略過去5年平均レベルを維持しており、危機的なレベルではない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18.9MB(前週比+2,783KBD)と再び増加に転じている。今回の原油統計は、不安定な輸入の大幅な増加に伴う在庫増加の影響が大きいが、明らかに予想対比ベアな内容であったといえる。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫増加となった。この時期在庫はウィンターグレードの減産が徐々に始まり在庫が減少に転じるタイミングであるのだが(例年の在庫減少ペースは▲1.0%のところ、今年は+0.7%)、今年は年初から略一貫して在庫が積み上がる動きとなっている。生産は稼働率の悪化はあったものの、得率の改善(+0.6%)を受けて全体で9,030KBD(前週比▲12KBD)と略横ばい。生産は引き続き過去5年の最高水準(8,590KBD)を上回る水準を維持している。輸入は前週比▲55KBDと減少しているが略例年通りのレベル。結果、総供給は9,775KBD(前週比▲67KBD、前週比で▲0.5MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,093KBD(前週比+28KBD、過去5年平均8,889KBD、▲0.2MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,131KBD(前週比+60KBD)となった。 今回の統計で確認された需要増加率(+0.3%)は例年(+1.0%)を下回り、4週平均需要も前年比で▲0.5%と、前年比・前週比とも減少傾向が見て取れる。サブプライム問題発覚後6ヶ月経った2月から需要が減少に転じており(7週連続で前年割れの状態)、やはり米景気の悪化観測を背景に、実際の消費に影響がで始めているようである。だが、依然として価格高騰にも関わらず比較的需要は堅調であるともいえる。引き続き景気のバロメーターとなる輸送需要の推移には注目していきたい。以上を合計するとバランス上は在庫は+1.0MBの在庫増加(先週の増加+1.7MB)となるのだが、実際は+1.7MBの在庫増加となった。在庫増加の全てのガソリン製品がP1を除く全ての地区で増加している。この結果、FSCは26.0日と先週から+0.1日改善。過去5年の最高水準である25.3日を大きく上回る状態が続いており、ガソリンに関しては需給は大きく緩和の傾向に向かっており今週の統計もベアな内容であったと言える。

 ディスティレート在庫は予想を下回る在庫減少となった。稼働率の悪化、得率の悪化(▲0.5%)により生産が大幅に減少、輸入も減少したが、需要が大幅に減少したことから市場予想を下回る在庫減少に留まった。生産は、稼働率・得率がともに悪化したことにより3,891KBD(▲114KBD)と大幅に減少、主に輸送に使われるべきULSDの生産が大幅に減少(▲213KBD)している。一方、輸入はULSD、ヒーティングオイルの輸入が減少(合計▲108KBD)し、同じ時期の過去最低のレベルとなっている。この結果、総供給は4,024KBD(前週比▲167KBD、前週比▲1.2MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,354KBD(前週比▲44KBD、在庫増減要因とはならず)、直近需要が4,020KBD(前週比▲3023KBD)と大幅な減少となった。4週平均ベースの需要増加率は前週比▲1.0%と、例年の▲0.7%を大きく上回る減少となっている。前年比での需要も▲6.6%となっておりガソリンと同様、2月から需要が減少を始め前年比では6週連続の前年比マイナスである。冬場の終了とともにヒーティングオイル需要が減少するためこの減少はある意味自然である。全体のバランスでは前週比で▲1.2MBの▲3.5MB(先週の在庫減少は▲2.3MB)となるところであるが、計算を大幅に下回る▲1.2MBの在庫減少に留まった。事前の予想の▲2.0MBも下回る在庫減少である。総在庫は116.4MBとなり、引き続き過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳は、ULSDが+1.3MB、ヒーティングオイルが▲1.7MBとなった。冬場の終了に伴い、ヒーティングオイル在庫が徐々に圧縮される中、ULSDの在庫積み増しが始まっていると考えられるが、ULSDは生産が減少、供給が減少しているにも関わらず+1.3MBの大幅な在庫増加となっており、ガソリンと同様、輸送需要が減少し始めている可能性が高くなってきた。FSCは26.7日(前週比変わらず)と過去5年の平均水準26.2日を上回るレベル。今回の統計はガソリン同様、需要の減少の影響で在庫減少が予想を下回り、ディスティレートは市場予想比ベアな内容であった。