統計速報(2008年3月19日発表分)

 昨日の米在庫統計は市場予想比ブルな内容であったが、景気減速に伴う需要に焦点を当てるとベアな内容であり、トータルでニュートラルな内容であったと考えておくべきであろう。今後に関しては、原油に関しては輸入がどの程度なされるかがポイントになり、石油製品は需要前年比割れの状態がいつまで続くか、ということがポイントになろう。引き続き輸送需要を中心に減速感が出てきているため、製品に関しては特に輸送需要を中心にチェックしていく必要がある。詳しく見てみよう。

 原油は生産が引き続き横ばいの中輸入が大幅減少したことから、稼働率が低下したものの予想を下回る在庫増加に留まった。生産は5,100KBD(前週比変わらず)原油生産は引き続き非常に安定している。輸入はP5を除く全ての地区でで大幅に減少(▲1,146KBD)したことから全体で9,468KBD(前週比▲1,080KBD)となった。先週も指摘したように、価格の高騰や最終需要動向が不安定なことから輸入量も非常に不安定に推移している。結果、総供給量は14,568KBD(前週比▲1,080KBD,▲7.6MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP1、P2で大幅に悪化、その他の地区は略例年並の稼動を維持しているものの全体では83.8%(前週比▲1.1%)と、これも予想を大幅に下回る結果となった。例年であれば徐々に稼働率が回復するタイミングであるが、原油価格の高騰や、最終需要動向の不安定さ、原油価格の高騰に伴うクラックマージンの頭打ち、といったマイナス材料が多く製油所の稼動状況は例年になく不安定である。稼働率の悪化は+1.3MBの在庫増加要因となる。供給量減少、処理量の減少で在庫は前週比で▲6.3MBの▲0.1MB(先週の在庫増加は+6.2MB)となるが、略計算どおりの+0.1MBの在庫増加となり、原油在庫は311.8MB(過去5年平均レベル303.5MB)となった。在庫の増加率は例年は+0.5%となる時期であるが、今週は前週比変わらずであった。FSCは在庫増加・処理量減少の両要因により前週比+0.3日の21.3日となり、略過去5年平均レベルを維持しており、危機的なレベルではない。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.5MB(前週比▲1,396KBD)と再び減少に転じている。今回の原油統計は、不安定な輸入の変動に伴う在庫減少の影響が大きいが(先週と全く正反対)、石油製品需要全体が減速し始める中FSCの水準も高く、市場予想比ブルな統計であるものの、全体を見回してみるとニュートラルな内容であったと考えられる。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。この時期在庫はウィンターグレードの減産が徐々に始まり在庫が減少に転じるタイミングであるが、今年は最終需要の減少の影響で年初から略一貫して在庫が増加していたが、生産調整の影響で漸く減少に転じた(例年の在庫減少ペースは▲1.0%であるが今週は▲1.5%)。生産は稼働率の悪化の影響と、得率の低下の影響で全体で8,678KBD(前週比▲352KBD)と前週比大幅減少。生産はとうとう過去5年の最高水準(8,741KBD)を下回るに至った。輸入は価格の高騰もあり先週の▲55KBDの減少から一転+156KBDの901KBDとなった。稼働率低下の影響でP1,P3の生産が減少したため、P1の輸入量が+189KBDと増加した影響が大きい。結果、総供給は9,579KBD(前週比▲196KBD、前週比▲1.4MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,080KBD(前週比▲14KBD、過去5年平均8,928KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,071KBD(前週比▲60KBD)となった。 例年は+0.5%の増加となっているが今回の統計では▲0.1%と減少している。この時期は春先のドライブシーズン前で需要は横ばいとなるため、季節サイクル的には心配するような内容ではないが、引き続き前年比で見てみると4週平均需要・直近需要ともも前年比で▲1.0%の減少となっている。サブプライム問題発生後6ヶ月経った2月から需要が減少に転じているが、今週の統計で8週連続で前年割れとなった。やはり米景気の悪化観測を背景に、実際の消費に影響が出てきていることは明らかである。だが、依然として価格高騰にも関わらず比較的需要は堅調であるともいえる。引き続き景気のバロメーターとなる輸送需要の推移には注目していきたい。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.2MBの在庫増加(先週の増加+1.7MB)となるのだが、実際は▲3.4MBの大幅な在庫減少となった。在庫はP1を除く全ての地区で減少しており、ウィンターグレードの入れ替えが徐々に始まっていることを示唆している。この結果、FSCは25.6日と先週から0.3日悪化。過去5年の最高水準である25.2日を大きく上回る状態が続いており、ガソリンに関しては需給は大きく緩和の傾向に向かっていることが伺える。ガソリンに関しても原油と同じように市場予想比ブルな統計であったといえるが、需要動向等を見るにやはりニュートラルな内容であったのではなかろうか。

 ディスティレート在庫も予想を上回る在庫減少となった。稼働率の悪化、得率の悪化(▲0.2%)により生産が大幅に減少、輸入は回復したが、需要が大幅に増加したことから市場予想を上回る在庫減少となった。生産は、稼働率・得率がともに悪化したことにより3,811KBD(▲80KBD)と大幅に減少、主に輸送に使われるべきディーゼル(前週比▲126KBD)と冬場の終了に伴いヒーティングオイルの生産が減少(前週比▲93KBD)。一方、輸入はULSD、ヒーティングオイルの輸入が増加(合計+188KBD)したことから全体で294KBD(前週比+161KBD)となった。この結果、総供給は4,105KBD(前週比+81KBD、前週比+0.6MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,233KBD(前週比▲121KBD、+0.8MBの在庫増加要因)したが、直近需要は4,342KBD(前週比+322KBD)と大幅な増加となった。ヒーティングオイル在庫の減少度合いを見るに、ヒーティングオイル需要の増加によるものと考えられる。但し4週平均ベースの需要増加率は前週比▲2.8%と、例年の▲1.3%を大きく上回る減少となっている。前年比での需要も▲8.1%となっておりガソリンと同様、2月から需要が減少を始め前年比では7週連続の前年比マイナスである。昨年は著しい暖冬であったが、そのときと比べても大幅に需要の水準が低下していることが確認された。全体のバランスでは前週比▲1.4MBの+0.2MB(先週の在庫減少は▲1.2MB)となるところであるが、計算を大幅に上回る▲2.9MBの在庫減少となった。総在庫は113.5MBとなり、引き続き過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳は、ULSDが前週比変わらず、ヒーティングオイルが▲3.2MBとなった。FSCは26.8日(前週比0.1日改善)と過去5年の平均水準26.2日を上回るレベル。今回の統計は市場予想ブルな内容であったが、前年比で需要が大幅に減少していることから継続的に確認されていることから、トータルでやはりニュートラルな内容であったと考えておくべきであろう。ガソリン同様、需要の減少の影響で在庫減少が予想を下回り、ディスティレートは市場予想比ベアな内容であった。