統計速報(2008年4月16日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。ここ数週間そうであるが、供給体制、特に石油製品の供給体制が不安定なことから総じて石油製品供給は減少傾向にあり、在庫が取り崩される形で石油製品需給がタイトになるという状況が続いている。一方で原油は生産が略変わらない中、輸入と稼働率の変動に大きく振らされる展開が続いており、引き続き不安定である。今のところ季節性が破壊されるほどの石油製品需要の減少が見られていないことからこのままで行くと、需要が前年比で減少しながら供給が不足する、という悲劇的な状況が継続することとなる。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が横ばい、稼働率が悪化したことから先週から在庫減少幅が減少した。これで在庫の減少は2週連続となりこの時期としては異例の在庫減少が続いている。生産は5,096KBD(▲1KBD)と殆ど変わらず。輸入はP3でのみ810KBDと増加しているがその他の地区全てで減少したことから全体で前週比▲33KBDの8,879KBDとなった。結果、総供給量は13,975KBD(前週比▲34KBD,▲0.2MBの在庫減少要因)となった。稼働率は規模の大きなP3,P5 で悪化、P1の大幅改善(+11.2%)は会ったものの全体で81.4%と先週から1.6%稼働率が悪化している。この時期の稼働率の過去5年の最低水準は85.6%であり、この水準を大幅に下回る不冴えな稼働率である。しかも通常この時期はピークのドライブシーズンに向けて稼働率が上昇する時期であるがそのようにはなっていない。稼働率の悪化は2.0MBの在庫増加要因となる。供給量減少、処理量の減少で在庫は前週比で+1.8MBの▲1.8MB(先週の在庫増加は▲3.1MB)となるが、実際は在庫は前週比▲2.4MBの313.7MB(過去5年平均レベル313.2MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比変わらずであるが、今週は▲0.7%の大幅減少となった。ひとえに原油価格上昇と製品需要の減少観測が結果的に原油在庫を減少させる結果となっている。FSCは在庫減少・処理量減少で前週比+0.3日の21.9日となった。過去5年の平均である20.4日を上回る水準を維持しており、今のところ在庫が不十分と言う感じではない。しかしながらこれは低い稼働率に支えられた21.9日でありもし例年通りの稼働率になるとすれば、21.2日分しか在庫がないといえる。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は18.4MB(前週比+860KB)となった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率の悪化と得率の改善で生産は小幅な減少にとどまったが、需要が季節性を維持しつつ増加したことにより予想を上回る在庫減少となった。生産は8,841KBDと先週から減少。とはいっても過去5年の最高水準を上回るレベルを維持している。輸入は前週比+43KBDと略横ばいの950KBDとなった。P1で前週比+115KBDと増加した一方でP5で▲103KBDと減少したことが響いた。結果、総供給は9,791KBD(前週比▲12KBD、前週比で▲0.1MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,268KBD(前週比+67KBD、過去5年平均9,011KBD、▲0.5MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,338KBD(前週比+52KBD)となった。この4週平均の需要増加率(+0.7%)は例年(+0.2%)を大きく上回るレベルであるが、依然として需要の前年比割れは継続しており、12週連続の前年比マイナスとなった。米需要は2月以降、明確に減速している状態であるが季節性が破壊されるほどの需要減少は観測されていない状況だ。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲0.6MBの▲4.0MBの在庫減少(先週の減少▲3.4MB)となるのだが、実際は▲5.5MBの大幅な在庫減少となった。在庫減少増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが減少しており、Conventionalは▲2.1MB、Blending Componentは▲3.0MBとなっている。この結果、FSCは23.3日と先週から▲0.8日と大幅に悪化したが、今のところ過去5年の平均水準である22.7日を上回る状態となっており、今のところ在庫が足りない、と言う状態ではない。だが先週指摘したとおり、価格上昇と最終需要の低迷を背景として製品生産が滞る状態が継続していることから「需要低迷下の需給逼迫」というあまり好ましくない状況が続いている。先週と同様、需要の明確な減少はあるものの製品製品需給が逼迫する中価格が上がる可能性が高い、市場予想比・絶対値ベースでもブルな統計であった。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫増加となった。稼働率の悪化を得率の改善が相殺、輸入がヒーティングオイルを中心に増加し、需要が大幅に減少したことから在庫減少幅が大幅に縮小した。生産は、稼働率が悪化したが、得率が+0.8%と大幅に改善したことから4,029KBD(+39KBD)と増加。製品生産の内訳はディーゼルオイルが減少したもののULSDとヒーティングオイルの生産が増加している。輸入は前週比+99KBDの260KBDと大幅な増加となった。内訳的にはヒーティングオイルの輸入量がP3,P5 で増加した影響が大きい。この結果、総供給は4,289KBD(前週比+138KBD、+1.0MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は前週比▲69KBDの4,248KBD(▲0.5MBの在庫減少要因)と、前週比▲1.6%と例年の▲1.4%の需要減少率を上回った。やはり先週指摘したとおり先週の需要大幅増加は若干エラー値であったようだ。全体のバランスでは前週比+0.5MBの▲3.2MB(先週の在庫減少は▲3.7MB)となるところであるが、計算とは裏腹に+0.1MBの在庫増加となった。総在庫は106.1MBとなり、依然過去5年平均レベル108.1MBを下回るレベルでの推移が続いている。在庫減少の内訳はULSDが+953KB、ディーゼルが▲706KB、ヒーティングオイルが▲195KBとなった(P1、P2で大幅減少となったがそれ以外の地区では大幅な増加となっている)。FSCは25.0日(前週比+0.4日)と過去5年平均である26.1日を下回っている。稼働率の回復が思わしくない中、この水準は数週間前の状況から一転、十分なレベルであるとは言いがたい。今回の統計は需要の大幅な減少はあるものの、供給体制が不透明であったことから絶対水準ではニュートラル、予想対比ベースでは明確にベアな内容であった。