統計速報(2008年4月23日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ベア、石油製品ブルな内容であった。原油価格の上昇を背景とした稼働率原油輸入の不安定さから石油製品在庫が取り崩される形で石油製品需給がタイトになるという状況が続いている。一方で原油は生産が略変わらない中、輸入と稼働率の変動に大きく振らされる展開が続いており、引き続き不安定である。価格高騰にも関わらず今のところ季節性が破壊されるほどの石油製品需要の減少が見られていないことから、春先のドライブシーズン以降、在庫・供給が不足するという環境になる可能性が高まってきた。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に増加、稼働率が大幅に改善したものの市場予想を上回る在庫増加となった。3週間ぶりに在庫は増加に転じた。生産は5,101KBD(+5KBD)と殆ど変わらず。輸入はP4を除く全ての地区で大幅に増加し、全体で前週比+1,162KBDの10,041KBDとなった。原油価格の水準が高いこともあり、輸入量の変化は毎週大きな振れを伴っており、原油在庫増減の大きな要因の1つとなっている。結果、総供給量は13,975KBD(前週比+1,167KBD,+8.2MBの在庫増加要因)となった。クラックマージン、特に原油価格の高騰と需要の前年比での減少が続いているガソリンのクラックマージンの回復が遅れており、稼働率は回復が思ったように進んでいなかったが、今週は前週比+4.2%の大幅な改善となった。稼働率は地区毎に各々P1から、▲6.2%、+7.2%、+8.3%、+4.0%、▲3.9%となっている。但しこの時期の稼働率の過去5年の最低水準の86.2%には達しておらず、依然として稼働率の回復は十分ではない。稼働率の改善は悪化は▲5.2MBの在庫減少要因となる。供給量増加、処理量の増加で在庫は前週比で+3.0MBの+0.6MB(先週の在庫増加は▲2.4MB)となるが、実際は在庫は前週比+2.4MBの316.1MB(過去5年平均レベル316.0MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+1.0%であるが、今週は+0.8%と先週の▲0.7%から大幅に増加率が上昇した。FSCは在庫増加・処理量増加で前週比▲0.9日の21.0日となった。過去5年の平均である20.6日を上回る水準を維持しており、今のところ在庫が不十分と言う感じではない。しかしながらこれは稼働率の低さを背景とするものであり、もし例年通りの稼働率になるとすれば略過去5年の平均と同じ水準しか在庫がない。ヒューストンシップ・チャネルが濃霧の影響で閉鎖していることから来週の在庫は大幅な減少になる可能性が高いと見ている。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は19.1MB(前週比+766KB)となった。"

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率が大幅に改善したものの、得率が大幅に悪化したことから生産の増加は小幅な増加にとどまり、需要がは小幅な減少にとどまったが、需要が依然季節性を維持しながら増加していることから予想を上回る在庫減少となった。生産は8,867KBDと先週から増加、過去5年の最高水準を上回るレベルを維持している。輸入は前週比+56KBDと小幅増加の1,006KBDとなった。P1で前週比▲175KBDと減少したが、P3で+215KBDと増加したことが影響した。結果、総供給は9,873KBD(前週比+82KBD、前週比で+0.6MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,292KBD(前週比+25KBD、過去5年平均9,028KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,215KBD(前週比▲123KBD)となった。この4週平均の需要増加率(+0.3%)は例年(+0.2%)を大きく上回るレベルであるが、依然として需要の前年比割れは継続しており、13週連続の前年比マイナスとなった。米需要は2月以降前年比で明確に減速している状態であるが、引き続き季節性は維持しており需要の減少は当初懸念したほど深刻ではなさそうである。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比+0.5MBの▲5.0MBの在庫減少(先週の減少▲5.5MB)となるが、実際は▲3.2MBの在庫減少となった。在庫減少増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが減少しており、Conventionalは▲0.8MB、Blending Componentは▲2.6MBとなっている。この結果、FSCは22.9日と先週から▲0.4日悪化し、過去5年の平均水準である22.4日に徐々に迫りつつある。このペースで稼働率の改善が思わしくないと、価格上昇にも関わらず需要が県庁であることからピークシーズンであるドライブシーズン中に在庫が不足、需給が逼迫してしまう「需要低迷下の需給逼迫」という好ましくない状況になる可能性が高い。市場予想比・絶対値ベースでもブルな統計であった。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率の改善を得率の悪化が相殺、輸入が殆ど変化しない中、需要が大幅に増加したことから予想を上回る在庫減少となった。生産は、稼働率が改善したが、得率が▲0.8%と大幅に悪化したことから4,116KBD(+87KBD)と増加幅は伸び悩んだ。製品生産の内訳はULSDの生産が▲61KBDと減少する一方、ディーゼルオイルが+145KBDと増加している。輸入は前週比+1KBDの261KBDと横ばい。この結果、総供給は4,377KBD(前週比+88KBD、+0.6MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,281KBD(前週比+33KBDの、▲0.2MBの在庫減少要因)と、前週比+0.8%と例年の▲0.4%の需要減少率を上回った。在庫減少の内訳を見るに、ULSDの需要が堅調に推移しているためと見られる。全体のバランスでは前週比+0.4MBの+0.5MB(先週の在庫増加は+0.1MB)となるところであるが、計算とは裏腹に▲1.4MBの在庫減少となった。総在庫は104.7MBとなり、過去5年平均レベル107.2MBを下回るレベルでの推移が続いている。在庫減少の内訳はULSDが▲2.9MBの大幅減少となる一方、ディーゼルが+0.9MB、ヒーティングオイルが+0.6MBとなった(P2、P5以外で減少している)。FSCは24.5日(前週比▲0.5日)と過去5年の最低水準である24.3日に近づいてきた。稼働率の回復が思わしくない中、ピークシーズンではないものの需給が逼迫の様相を呈してきた。今回の統計は需要が(恐らくは)ULSDを中心に堅調に推移する中、製油所の稼働率が不安定なことから、予想対比・絶対値ベースともブルな内容であった。