統計速報(2008年5月29日発表分)

 昨日の米在庫統計は原油ブル、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。価格高騰の影響で原油・石油製品とも在庫圧縮の動きが出始めていると見られ、過去のデータがあまり当てにならない状態になってきていると考えられる。但し需要在庫を割ったFSCベースでは十分な在庫があるとは言えず、絶対水準としてブルな状態が続いているといえよう。詳しく見てみよう。

 原油は生産が小幅増加、輸入が減少、稼働率が横ばいであったことから在庫は市場予想比大幅な減少となった。これで2週連続の在庫減少となったが、たびたび他のコラムでも説明している通り「高い価格の在庫は保有したくない」との意向が働いている可能性が高いことを示唆する内容である。生産は5,128KBD(+83KBD)と小幅増加した。輸入はP2、P3で▲169KBD、▲177KBDとなったことから全体で▲278KBDの大幅減少となり全体で8,959KBDと、同じ時期の過去5年の最低水準9,557KBDを大きく下回る結果となった。そもそも最終需要動向が不透明であることと原油価格自体の高騰から輸入が不安定な状況が続いている。結果、総供給量は14,087KBD(前週比▲197KBD,▲1.4MBの在庫減少要因)となった。稼働率は改善が予想されていたが先週比横ばいであった。この時期の稼働率としては過去5年の最低89.7%を大きく下回っている。稼働率は地区毎に各々P1から、+5.9%、+2.1%、▲0.6%、▲6.0%、▲2.8%となっている。供給量減少、処理量が横ばいであったことから在庫は前週比で▲1.4MBの▲6.7MB(先週の在庫増加は▲5.3MB)となるが、実際は前週比▲8.9MBの311.6MB(過去5年平均レベル321.4MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+0.1%であるが、今週は▲2.8%と例年を大きく下回る在庫減少となった、足元の価格の急騰が在庫圧縮の動きに企業を走らせている可能性が高いことを示している。FSCは在庫増加・処理量増加で前週比▲0.6日の20.2日となった。過去5年の平均である20.3日を下回っており、このコラムで定義している十分な在庫水準を下回る事となった。もし例年通りの稼働率になった場合19.2日分の在庫しかなく、はっきり言って在庫は過去にない低い水準になっているといえる。しかしながら産油国の生産増加の影響もあって実際のところ原油の供給自体は十分であると考えられ、あくまで価格高騰に伴う影響であると見られる。現物の輸送に問題がなければ問題はないと考えられるが、有事のバッファがない状態にあることは懸念材料である。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は稼働率が不さえであることもあって21.3MB(前週比+639KB)となった。

 ガソリン在庫は予想と裏腹に在庫減少となった。稼働率が横ばい、得率が改善したことから生産が増加したものの、需要が引き続き堅調であったこともあって結局在庫減少となった。生産は+70KBDの9,098KBDと、過去5年の最高レベルに回復している。得率が前週比+0.5%と改善したことも影響している。輸入は前週比▲120KBDと先週から大幅に減少した。結果、総供給は10,121KBD(前週比▲50KBD、前週比で▲0.4MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,347KBD(前週比+46KBD、過去5年平均9,194KBD、▲0.3MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,373KBD(前週比+14KBD、過去5年平均9,263KBD)となった。引き続き前年比マイナスの状態が続いているが、正直価格高騰にも関わらず需要が堅調に推移しているとの印象。とはいうものの引き続き需要動向は細心の注意を払ってチェックして行く必要があろう。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲0.7MBの▲1.0MBの在庫減少(先週の減少▲0.3MB)となるが、計算を上回る▲3.3MBの在庫減少となった。在庫減少の内訳は、その大半がBlendingとRBOBの在庫減少によるもの(▲5.4MB)である。この結果、FSCは22.1日と先週から▲0.5日悪化し、過去5年の平均水準である22.4日を大きく下回るにいたっている。原油と同様、十分と考えられる過去5年平均を下回る水準となった。しかしながらこれに関しても価格高騰に伴う在庫圧縮の動きが見られると考えられることから、過去のデータと照らし合わせて単純に在庫が足りない、とは言いがたいことも事実である。いずれにせよ目に見える数値は在庫の少なさを示しており、素直にブルな内容であったと考えるべきであろう。

 ディスティレート在庫は予想を上回る在庫増加となった。生産が例年よりも高い水準を維持していること、輸入が増加したこと、需要が減少したことが在庫増加の要因である。生産は稼働率が横ばいであったが得率が悪化(▲0.2%)したことからにより4,315KBD(▲29KBD)と先週から減少した。この時期の過去5年の最高水準が4,180KBDを上回るレベルである。世界的なディスティレート需要の高まりによる在庫の減少、クラックの拡大によって生産は引き続き堅調である。生産の内訳はULSDの生産が増えたが、ピークシーズンが終了したヒーティングオイルの生産は減少している。輸入は前週比+52KBDの250KBDとULSDとディーゼルの輸入が増加。この結果、総供給は4,565KBD(前週比+23KBD、+0.2MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,144KBD(前週比▲15KBD、+0.1MBの在庫増加要因)と、前週比▲0.3%と例年の+0.2%の需要増加率を下回った。全体のバランスでは前週比+0.3MBの+1.0MB(先週の在庫増加は+0.7MB)となるところであるが、計算を上回る+1.6MBの在庫増加となった。総在庫は109.4MBとなり、過去5年平均レベル110.4MBを下回るレベルでの推移が続いている。在庫増加の内訳はULSDが+1.6MBと大幅に増加、ディーゼルが▲0.6MB、ヒーティングオイルが+0.6MBとなった。FSCは26.4日(前週比+0.5日)と過去5年平均水準である27.5日を下回る水準となっている。引き続き在庫は十分な状態とはいえないが原油・ガソリンと同様、在庫の積極的な積み増しが行われいないようだ。そういった中での在庫の増加であり、予想対比ベアな内容であったがリファイナリの稼動停止があれば在庫があっさり不足してしまう可能性が高い状況は続いているといえる。その観点では若干ブルな状態が続いているといえよう。