統計速報(2008年8月27日発表分)

 先週の米在庫統計は原油ブル、ガソリンブル、ディスティレートブルな内容であった。予想通り稼働率の改善に伴う原油在庫の取り崩しによって石油製品在庫の積み増しが計られたが、ハリケーンの影響等が長く続いており、上流からの供給が安定していない。FSCで5年を維持するオペレーションが概ね継続していると考えているが、「原油を輸入するかしないか」の選択ができるような状態ではない(ハリケーン等の撹乱要因が多い)ことから、しばらく米国内の石油製品需給はタイトな状態が続くことになると考えている。詳しく見てみよう。

 原油は生産が減少、輸入が大幅に減少、稼働率海瀬下ことから市場予想とは逆に在庫は減少した。生産は4,906KBD(▲172KBD)と先週から大幅に減少。熱帯性暴風雨グスタフのメキシコ湾入りを受けて複数の油田の生産が停止している影響が続いている。ここのところ数週間、立て続けに熱帯性低気圧が発生しており、メキシコ湾の生産が安定したいない。一方輸入も大幅に減少(P3は▲1,547KBD)し、前週比▲1,012KBDの9,979KBDとなった。結果、総供給量は14,885KBD(前週比▲1,184KBD、▲8.3MBの在庫減少要因)となった。稼働率は+1.6%の大幅な改善となった。先週・先々週の在庫統計で確認できた通り、ガソリン在庫の減少が顕著であったことから生産を増加させたことによるものと見られる。地区毎の稼働率の変化はP1から順に、▲0.6%、+5.8%、+1.7%、+1.5%、▲2.3%。結局全体で87.3%(▲1.9MBの在庫減少要因)となった。計算上在庫は前週比で▲10.2MBの▲0.8MB(先週の在庫減少は+9.4MB)となるが、▲0.2MBとなった。結果、在庫水準は305.8MB(過去5年平均レベル312.0MB)となった。在庫の増加は稼働率が大幅に改善したP2のみであり、その他の地区では増加している。FSCは19.9日(▲0.4日)と、在庫、稼働率の両要因で悪化している(過去5年の平均である19.5日は維持)。過去5年平均と比較して需要対比で同程度の在庫をに数量をコントロールするオペレーションを持続してるため、略予想通りであった。尚、このレポートでは過去5年平均維持(FSCベース)が十分な在庫の定義としているが、今のところ過去5年平均レベルを回復したことから中東不安勃発、米ロの緊張、ハリケーン直撃といった予見不能なリスク発生時に対しては一定の抵抗力がある在庫水準になったと考えられる。とはいえここまで毎週ハリケーンが発生している状況下では安全とは言えず、供給途絶に伴うアップサイドのリスクが高まっている。今週もSPRは増減していない(707.2MB、前週比▲1KB)。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.3MB(前週比▲717KB)と大幅な減少となった。引き続きイールドカーブバックワーデーション化に寄与すると見ている。

 ガソリン在庫は予想を下回る減少に留まった。生産は稼働率が改善したことから得率が悪化したものの小幅増加、輸入は先週から大幅に増加、需要が略横ばいであったが予想を下回る在庫減少となった。生産は稼働率が改善したことから、得率が悪化(▲0.5%)した影響で小幅な増加となった。P1、P2の生産が減少したものの他地区の生産がこれを相殺している。この結果+86KBDの9,151KBDとなった。過去5年平均(8,977KBD)を上回るレベルを維持している。輸入はP1で+531KBDとなったことから、前週比+574KBDの1,368KBDとなった。結果、総供給は10,519KBD(前週比+660KBD、前週比で+4.6MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,441KBD(前週比▲14KBD、過去5年平均9,509KBD、+0.1MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,411KBD(前週比▲12KBD、過去5年平均9,586KBD)となり、過去5年平均レベルの需要を割り込んだ状態が続いている。やはり米景気悪化の影響で消費に影響が出始めているようである。前年比ベースの需要の減少は▲2.0%、前週比需要伸び率は▲0.2%(例年±0.0%)と、景気の減速感が強まる中大幅な需要増加は見込み難い。「可処分所得に占めるエネルギー関連支出」が過去最大だったのは1980年前半の8%で、7月中旬の時点の価格水準でこのレベルに達したものと見られ、価格下落に伴う需要の回復は期待できるものの米国経済の悪化の可能性が高まる中徐々にその水準を切り下げていくこととなろう。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比+4.7MBの+1.5MBの在庫増加(先週▲6.2MB)となるが、ほぼ計算どおりの▲1.2MBの在庫減少となった。ドライブシーズン前に積み上げた在庫が減少していくタイミングであるが、価格の急速な調整を受けて簿価の高い倉庫出し石油製品の出荷量が増加していることによるものと考えている。在庫減少の内訳は、Conventional(▲6.9MB)、Blending(▲2.4MB)となっている。この結果、FSCは20.7日と▲0.1日悪化、過去5年平均の21.0日を下回ってしまった。引き続き、最終需要動向が不透明なため引き続き過去5年平均程度にFSCを維持するオペレーションが持続すると考えられるが、ハリケーンの影響もあり来週もFSCは略横ばいで推移することとなろう。今週の統計はガソリンはベアな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を下回る在庫増加に留まった。生産は稼働率が改善したものの、得率が悪化(▲0.6%)したことから4,395KBD(▲10KBD)と減少。生産の内訳はULSD▲113KBD、ディーゼルオイル+23KBD。尚、生産レベルは過去5年平均の4,050KBDを大きく上回り、過去5年の最高水準である4,206KBDをも引き続き上回る状態が続いている。輸入は前週比+50KBDの123KBD(過去5年平均341KBD、過去5年最低160KBD)と、殆ど輸入されていない。米国内の価格下落が大きいことが輸入を阻害していると考える。この結果、総供給は4,518KBD(前週比+40KBD、+0.3MBの在庫増増加要因)となった。4週平均需要は4,208KBD(前週比▲3KBD、過去5年平均3,982KBD、在庫増減要因とならず)、直近需要は4,188KBD(前週比+101KBD、過去5年平均4,0.21KBD)と、4週平均ベース需要は前年比プラスの+0.5%となった。前週比ベース需要増加率は▲0.1%と例年の+0.8%を大きく下回っている。この時期徐々にディスティレート需要が増加するのだが、消費の伸びは緩慢である。全体のバランスでは前週比+0.3MBの+0.8MB(先週の在庫減少は+0.5MB)となるところであるが、計算を大きく下回る+0.1MBの小幅な在庫増加となった。総在庫は132.1MBとなり、過去5年平均レベル128.4MBを上回るレベルを維持している。在庫増加の内訳はULSDが+0.2MB、ディーゼルが▲0.6MB、ヒーティングオイルが+0.5MB。FSCは31.4日(前週比変らず)と過去5年平均水準である32.3日を大きく下回っている。ガソリン同様にFSCベースで過去5年水準を維持させるオペレーションが維持されると見られることから、来週も稼働率の改善による生産増加によってFSCは改善すると見ているが、ハリケーンの動向次第ではリファイナリ従業員の避難も予想され、改善幅は小幅に留まろう。統計としてはブルな内容であった。