統計速報(2009年3月11日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。原油は引き続き石油製品在庫を主語にして、過去5年のレンジにFSCベース在庫を調整する動きが継続。石油製品はRBOBの需要が回復していたものの再び失速しているが、生産調整の影響で予想に反し大幅な在庫減少となった。ディスティレートは明らかに在庫の水準が高すぎ、買いの材料は見当たらない。再び石油製品の採集動向が不安定になってきており、石油製品の生産者は難しいオペレーションを要求されることになろう。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入も横ばいであったが、稼働率が若干低下したことから在庫増加となった。生産は5,401KBD(+28KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は9,121KBD(+93KBD)とP2以外の地区で増加している。輸入量は概ね過去5年のレンジに留まっている結果、総供給量は14,522KBD(+121KBD、前週比0.8MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP1、P2で顕著な改善が見られたもののその他の地区で大幅に低下している。稼働率は全体で82.7%(▲0.5%、前週比0.5MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+5.0%,+1.5%,▲2.1%,▲2.6%,▲0.7%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されている。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低である83.0%を依然として下回っている。計算上在庫は前週比で+1.4MBの+0.62MBの在庫増加(先週の在庫増減は▲0.8MB)となるが、実際は+0.7MBとなった。結果、在庫水準は351.3MB(+0.7MB)となった。在庫は稼働率が改善したP1,P2での減少が顕著であるがその他の地区で増加している。在庫量の変化はP1から順に、▲1.0MB, ▲0.3MB, +0.8MB, +0.1MB, +1.1MB となっている。FSCは24.1日(+0.2日)と在庫・稼働率両要因で上昇、先週に続き過去5年レンジの上限を上回る状態が継続している。今週は792KB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は33.6MB(▲0.4MB)と減少が継続しており、徐々にイールドカーブにフラット化の圧力がかかってきている。統計としては市場予想比ベア、実数的にはニュートラルな内容であった。

 ガソリン在庫は予想を大きく上回る在庫減少となった。稼働率の悪化と得率の悪化の影響で生産が減少、輸入が横ばいであり、需要も略横ばいであったことから大幅な在庫減少となった。生産は稼働率が悪化し、得率が▲2.9%と悪化したことから8,539KBD(▲464KBD)となった。季節的には在庫がウィンターグレードからサマーグレードに転換する時期であり、在庫は減少し易い。しかしながら総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させており、ガソリン供給に大きな懸念はないと考えているが、過去5年レンジの最低水準にFSCが近づいており、そろそろ需給に影響が出てもおかしくない水準となっている。輸入は1,257KBD(+87KBD)と小幅減少。稼働率・得率の悪化に伴う生産の減少によるものと見られ、過去5年の最高水準を上回っている。結果、総供給は9,796KBD(▲377KBD、前週比2.6MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,796KBD(▲377KBD、前週比2.6MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,024KBD(▲8.5KBD, 前週比0.1MBの在庫増加要因。過去5年平均 8,994KBD, 過去5年最高 9,143KBD, 過去5年最低 8,861KBD)となった。価格の低下が続いていることもあって、消費は少しずつ回復してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.5%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率も▲0.5%と例年の+0.5%を下回った。比較的ガソリンの需要は堅調であると考えていたのだが、ここに来て若干かげりが出始めている。以上を合計するとバランス上は在庫は▲2.6MBの▲2.4MBの在庫減少(先週の在庫増減は+0.2MB)となるが、計算を上回る▲3.0MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional89.5MB(▲6.1MB)、Blending122.1MB(▲15.0MB)となっている。この結果、FSCは23.6日(▲0.3日)と先週から低下し、過去5年のレンジ内に納まっては要るものの、低い水準となっている。最終需要動向は不況とはいいつつも落ち着きを取り戻しつつあり、底なしの下落トレンドから反転する可能性が高まってきた。統計としては市場予想比ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を上回る在庫増加になった。生産は稼働率が悪化し得率が+1.2%と改善したことから4,243KBD(+155KBD)と増加。生産の内訳はULSD3,030KBD(+59KBD)、ディーゼルオイル645KBD(▲8KBD)、ヒーティングオイル568KBD(+104KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準4,243KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼルの消費量が変りつつあるようだ。輸入は302KBD(+8KBD)と小幅増加し、過去5年レンジを回復。この結果、総供給は4,545KBD(+163KBD、前週比1.1MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,545KBD(+163KBD、前週比1.1MBの在庫増加要因)、直近需要は3,974KBD(▲82.75KBD, 前週比0.6MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,351KBD, 過去5年最高 4,663KBD, 過去5年最低 4,141KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲9.6%と大幅な悪化、また前週比▲2.0%(例年▲0.8%)と例年と異なる動きになっており、再び輸送燃料消費動向に注意せねばならなくなった。やはり消費環境は不安定なのだろう。全体のバランスでは前週比+1.7MBの+3.4MBの在庫増加(先週の在庫増減は+1.7MB)となるところであるが、+2.1MBの在庫増加となった。総在庫は145MB(+2.1MB, 過去5年平均 119.0MB, 過去5年最高 131.4MB, 過去5年最低 110.0MB)となり、過去5年最高レベル131.4MBを上回っている。製品毎の在庫の内訳はULSDが87.3MB(+5.0MB)、ディーゼルが20.2MB(+0.1MB)、ヒーティングオイルが37.8MB(+9.6MB)。FSCは36.6日(+1.3日)となった。これは過去5年の最高水準である30.6日を大きく上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としてはベアな内容であった。