統計速報(2008年3月18日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンニュートラル、ディスティレートベアな内容であった。原油は引き続き石油製品在庫を主語にして、過去5年のレンジにFSCベース在庫を調整する動きが継続。ディスティレートはガソリンのFSC水準が低いため、稼働率の低下と得率の引き上げでガソリン生産が調整されているものの、「必要ないができてしまう」状態が続いており、明らかに在庫の水準が高すぎと言って良いレベルになってしまった。当面石油製品の生産者は難しいオペレーションを要求されることになろう。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が増加、稼働率が低下したことから予想を上回る在庫増加となった。生産は5,414KBD(+13KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は9,180KBD(+59KBD)とP3での増加が顕著。輸入量は在庫水準の高さを映じて過去5年のレンジを下回った。結果、総供給量は14,594KBD(+72KBD、前週比0.5MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP1、P3で改善したものの、その他の地区、特にP5での悪化が著しい。稼働率は全体で82.1%(▲0.7%、前週比0.7MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+0.8%,▲1.8%,+1.6%,▲0.2%,▲5.8%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されている。結局、製油所の稼働率は過去5年の最低水準を年初以降、一度も上回っていない。計算上在庫は前週比で+1.2MBの+1.96MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.7MB)となるが、略計算どおり+1.9MBとなった。結果、在庫水準は353.3MB(+1.9MB)となった。在庫は輸入が減少、稼働率が小幅低下に留まったP4で減少しているもののその他の地区ではすべて増加している。在庫量の変化はP1から順に、+0.5MB, +0.6MB, +0.6MB, ▲0.8MB, +1.1MB となっている。FSCは24.4日(+0.3日)と在庫・稼働率両要因で上昇、先週に続き過去5年レンジの上限を上回る状態が継続している。今週は1.8MB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は33.9MB(+0.4MB)と稼働率の低下などの影響もあって再び増加に転じておりイールドカーブに再度コンタンゴ化の圧力がかかることになろう。統計としては明確にベアな内容であった。
 ガソリン在庫は予想を大きく上回る在庫増加となった。稼働率の悪化を得率の大幅な改善が相殺し生産が増加、輸入が減少したものの引き続き高い水準を維持、需要の伸びが鈍化したことから大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+2.7%と改善したことから8,868KBD(+329KBD)となった。季節的には在庫がウィンターグレードからサマーグレードに転換する時期であり、在庫は減少し易い。しかしながら総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させており、ガソリン供給に大きな懸念はないと考えているが、過去5年レンジの最低水準にFSCが近づいており、需給に影響が出てもおかしくない水準である。輸入は1,149KBD(▲108KBD)と減少。FSCを過去5年レンジに収める必要があることから生産の不足分を輸入でカバーしているものと見られる。結果、総供給は10,017KBD(+221KBD、前週比1.5MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで10,017KBD(+221KBD、前週比1.5MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,035KBD(+11.75KBD, 前週比0.1MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,030KBD, 過去5年最高 9,167KBD, 過去5年最低 8,905KBD)となった。経済対策の影響等もあり、消費は若干鈍化したものの堅調な推移となっている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲0.+%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率も+0.1%と例年の+0.5%を下回った。比較的ガソリンの需要は堅調であると考えているのだが、若干かげりが出始めている。以上を合計するとバランス上は在庫は+1.5MBの▲1.5MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲3.0MB)となるが、計算を上回る+3.2MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional89.1MB(▲3.0MB)、Blending125.7MB(+25.0MB)となっている。この結果、FSCは23.9日(+0.3日)と先週から上昇し、過去5年のレンジ内に収まってはいるものの、低い水準となっている。最終需要動向は不況とはいいつつも落ちつきを取り戻しつつあり、徐々に下値が切り上がってきている。統計としてはベアな内容なるも、FSCの状態などを見るとニュートラル〜ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を上回る在庫増加になった。生産は稼働率が悪化し得率が▲0.8%と悪化したことから4,094KBD(▲149KBD)と減少。生産の内訳はULSD2,935KBD(▲95KBD)、ディーゼルオイル727KBD(+82KBD)、ヒーティングオイル432KBD(▲136KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最高水準3,968KBDを上回っている。燃費を重視したディーゼル車へのシフトでディーゼルの消費量が変りつつあるようだ。輸入は103KBD(▲199KBD)と大幅に減少し、過去5年レンジを再び下回った。この結果、総供給は4,197KBD(▲348KBD、前週比2.4MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,197KBD(▲348KBD、前週比2.4MBの在庫減少要因)、直近需要は3,814KBD(▲159.5KBD, 前週比1.1MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,299KBD, 過去5年最高 4,605KBD, 過去5年最低 3,947KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲12.4%と大幅な悪化、また前週比▲4.0%(例年▲1.1%)と例年と異なる動きになっており、欧米の寒波の影響が弱まる中、季節性を無視した需要の減少が見られるようになって来た。全体のバランスでは前週比▲1.3MBの+0.8MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.1MB)となるところであるが、+0.1MBの在庫増加となった。総在庫は146MB(+0.1MB, 過去5年平均 117.1MB, 過去5年最高 127.5MB, 過去5年最低 109.2MB)となり、過去5年最高レベル127.5MBを上回っている。この時期、ディスティレート在庫は減少するのだが、年明け以降増加を続けている。ガソリンのFSCが低く、得率の引き上げで対応しているが61.3%はこの時期の過去最高水準であり、「欲しくないがディスティレートが生産されてしまう」状態となっているようだ。製品毎の在庫の内訳はULSDが87.4MB(+0.6MB)、ディーゼルが21.3MB(+7.2MB)、ヒーティングオイルが36.8MB(▲7.0MB)。FSCは38.2日(+1.6日)となった。これは過去5年の最高水準である38.2日を大きく上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としては明確にベアな内容であった。