統計速報(2009年4月8日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンベア、ディスティレートブルな内容であった。春先以降、需要が著しく減少していたディスティレート需要が回復、市場予想比ブルな内容となったが、総じて在庫の水準は緩慢な需要の回復の下、高く、引き続き生産者は稼働率を引き上げられる環境にない。価格上昇等を背景として、景気回復の足取りが重い中、価格に対する需要のセンシティビティが上がっているようで石油製品在庫は積み上がり易い環境となっている。来週以降も稼働率を引き下げ、原油輸入を減らし、原油・石油製品とも在庫圧縮に努める可能性が高いと考えている。詳しく見てみよう。
 原油は生産が小幅減少、輸入も減少、稼働率が横ばいであったことから在庫増加となったが、先週からは増加幅を縮小させた。生産は5,469KBD(▲11KBD)と過去5年の平均水準を回復している。輸入は9,332KBD(▲222KBD)とP1,P3で減少。輸入量は在庫水準の高さを映じて過去5年のレンジの下限を下回った。結果、総供給量は14,801KBD(▲233KBD、前週比1.6MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP2以外のすべての地区で悪化している。稼働率は全体で81.8%(+0.1%、前週比0.1MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、▲7.1%,+5.6%,▲0.0%,▲0.2%,▲0.6%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整が続いているを要求されている。製油所の稼働率は過去5年の最低水準を年初以降、一度も上回っていない状態が続いて。計算上在庫は前週比で▲2.1MBの+0.77MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.8MB)となるが、計算を上回る+1.6MBとなった。結果、在庫水準は361.1MB(+1.6MB)となった。在庫は稼働率が改善したP2での在庫減少が顕著である。但し稼働率の低下もあって引き続きP3の在庫増加は継続している状態。在庫量の変化はP1から順に、+1.6MB, ▲2.0MB, +2.1MB, +0.9MB, ▲1.0MB となっている。FSCは25.0日(+0.0日)と略変わらず。過去5年レンジの上限を上回る状態が継続しており、原油供給は十分と言える。今週は1.9MB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は30.0MB(▲0.9MB)と減少、イールドカーブのフラット化に寄与することとなろう。統計としてはニュートラル〜ベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想に反し在庫増加となった。稼働率が低く推移したものの得率が改善したことが輸入の減少を相殺、需要が横ばいであったことから先週と略同水準の在庫増加となった。生産は稼働率が改善し、得率が+1.3%と改善したことから8,966KBD(+233KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。ここ数週間の生産増加の影響で、FSCは、過去5年レンジの上限に徐々に近づいてきており、需給が緩和する傾向にある。輸入は1,006KBD(▲205KBD)と減少。結果、総供給は9,972KBD(+28KBD、前週比0.2MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで9,972KBD(+28KBD、前週比0.2MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,051KBD(+13KBD, 前週比0.1MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,112KBD, 過去5年最高 9,285KBD, 過去5年最低 8,961KBD)となった。経済対策の影響等もあり、消費は比較的順調に回復をしてきたが、ここ数週間の価格上昇の影響などもあって、徐々に鈍化してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲1.2%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率は+0.1%(例年の+0.2%)となった。比較的ガソリンの需要は堅調であると考えているのだが、景気回復の足取りが重い中での価格上昇が、季節性を意識した消費の動きを阻害し始めていると予想される。以上を合計するとバランス上は在庫は+0.1MBの+2.3MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.2MB)となるが、略計算どおりの+0.7MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional85.9MB(▲0.1MB)、Blending130.1MB(+3.9MB)となっている。この結果、FSCは24.0日(+0.0日)と先週から上昇し、過去5年の上限レンジに近づいてきた。最終需要動向は景気対策の影響等で徐々に回復してきていたのだが、ここ数週間の価格上昇の影響もあって一服、という感じである。統計としてはベアな内容であった。

 ディスティレート在庫も市場予想を大きく上回る在庫減少となった。生産は稼働率が改善し得率が+0.1%と改善したことから3,918KBD(+36KBD)と小幅増加。生産の内訳はULSD2,896KBD(▲18KBD)、ディーゼルオイル604KBD(+23KBD)、ヒーティングオイル418KBD(+31KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均水準を若干上回るレベル。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は161KBD(▲102KBD)と大幅に減少し、過去5年レンジを下回った。この結果、総供給は4,079KBD(▲66KBD、前週比0.5MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,079KBD(▲66KBD、前週比0.5MBの在庫減少要因)、直近需要は3,842KBD(+70.25KBD, 前週比0.5MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,226KBD, 過去5年最高 4,394KBD, 過去5年最低 4,039KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲8.6%と大幅な悪化、また前週比+1.9%(例年▲1.1%)と増加。ドライブシーズン入り目前であるが、寒波の影響が弱まる中での極端な需要の減少の反動増の側面が強い。全体のバランスでは前週比▲1MBの▲0.7MBの在庫減少(先週の在庫増減は+0.2MB)となるところであるが、▲3.4MBの在庫減少となった。総在庫は141MB(▲3.4MB, 過去5年平均 111.6MB, 過去5年最高 121.6MB, 過去5年最低 103.4MB)となり、過去5年最高レベル121.6MBを大きく上回っている。この時期、ディスティレート在庫は減少するのだが、年明け以降増加トレンドを維持している。ガソリンのFSCが低く、得率の引き上げで対応しているが62.0%はこの時期の過去最高水準であり、「欲しくないがディスティレートが生産されてしまう」状態が続いている。但し、FSCは徐々に5年レンジの上限に近づいており、来週以降は徐々に稼働率が低下、生産が調整されると見ている。製品毎の在庫の内訳はULSDが83.5MB(▲20.2MB)、ディーゼルが20.4MB(+4.9MB)、ヒーティングオイルが37.0MB(▲8.2MB)。FSCは36.6日(▲1.6日)となった。これは過去5年の最高水準である29.2日を大きく上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としては市場予想比ブル、統計自体は引き続きベアな内容であった。