今回の米在庫統計は原油ブル、ガソリンブル、ディスティレートニュートラル な内容であった。原油輸入量が大幅に減少、石油製品在庫の高さを映じて稼動率を大幅に引き下げた結果、石油製品在庫は大幅な減少となった。景気対策の効果が剥落しつつあり、かつ新型インフルエンザの影響で輸送需要が低迷するなど、消費環境があまり良いとは言えない状況になってきた。今後の問題は著しく積みあがったディスティレートをどう処理していくのか、ということになりそうである。詳しく見てみよう。
原油は生産は横ばいであったが輸入が大幅に減少したことから、稼働率の低下はあったものの市場予想を上回る大幅な在庫減少となった。生産は5,306KBD(+26KBD)と過去5年の平均水準を維持。輸入は8,708KBD(▲1212KBD)とP2、P3、P5の輸入が大幅に減少。結果、総供給量は14,014KBD(▲1186KBD、前週比8.3MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP3とP5の稼働率悪化が全体の稼働率を押し下げ、稼働率は全体で83.7%(▲2.0%、前週比2.0MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+5.2%,+0.6%,▲4.3%,+3.3%,▲1.7%となっている。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるため輸入量・稼働率の調整を要求されているが、今週は輸入量が調整弁となった。計算上在庫は前週比で▲6.3MBの▲5.70MBの在庫減少(先週の在庫増減は+0.6MB)となるが、計算を下回る▲4.6MBとなった。結果、在庫水準は370.6MB(▲4.6MB)となった。在庫はP4を除くすべての地区で大幅に減少している。在庫量の変化はP1から順に、▲0.4MB, ▲1.3MB, ▲2.3MB, +0.1MB, ▲0.7MB となっている。FSCは25.1日(+0.2日)と増加。過去5年レンジの上限を上回る状態が継続しており、原油供給は十分、むしろ余っていると言える。今週は0.9MB、SPRが積み増しされた。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は28.8MB(▲1.0MB)と減少、イールドカーブのフラット化に寄与すると見られる。統計としては先週に続き市場予想比ブルな内容であったものの、統計の絶対的な内容は引き続きニュートラル〜ベアな内容である。
ガソリン在庫も予想に反し大幅な在庫減少となった。稼働率低下と得率悪化に伴う生産量の減少が、需要の減少を上回った。生産は稼働率が悪化し、得率が▲0.3%と悪化したことから8,710KBD(▲208KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。ここ数週間の生産増加の影響で、FSCは、過去5年レンジの上限を上回ってしまっているが、今回は生産量・輸入量とも大幅に調整させている。輸入は747KBD(▲76KBD)と小幅減少。結果、総供給は9,457KBD(▲284KBD、前週比2.0MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,457KBD(▲284KBD、前週比2.0MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,030KBD(▲8.25KBD, 前週比0.1MBの在庫増加要因。過去5年平均 9,187KBD, 過去5年最高 9,263KBD, 過去5年最低 9,132KBD)となった。経済対策の影響等もあり、消費は比較的順調に回復をしてきたが、ドライブシーズンではあるものの新型インフルエンザの影響等で頭打ちの状態。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲2.5%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率は▲0.1%(例年▲0.2%)となった。需要は明確に低迷しているが、夏場に向けてインフルエンザ問題は解消すると見られることから需要の極端な増加はある意味一時的なものであると見ている。以上を合計するとバランス上は在庫は▲1.9MBの▲2.1MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲0.2MB)となるが、計算を大きく上回る▲4.2MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional84.1MB(▲1.5MB)、Blending122.4MB(▲26.9MB)となっている。この結果、FSCは23.1日(▲0.4日)と先週から低下し、過去5年の上限レンジを若干下回るレベル。景気対策による最終需要の押し上げ効果は徐々に剥落してきているとみられ、インフルエンザ問題等もあり、ドライブシーズンではあるものの当面は低調な推移が続きそうだ。統計としては市場予想比ブルな内容であった。
ディスティレート在庫は市場予想を小幅下回る在庫増加に留まった。生産は稼働率が悪化し得率が+0.0%と改善したことから4,130KBD(▲77KBD)と減少。生産の内訳はULSD3,110KBD(▲89KBD)、ディーゼルオイル539KBD(▲68KBD)、ヒーティングオイル481KBD(+80KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均水準を若干上回るレベル。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は206KBD(+41KBD)と小幅増加しているが、過去5年レンジの下限での推移が継続している。この結果、総供給は4,336KBD(▲36KBD、前週比0.3MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,336KBD(▲36KBD、前週比0.3MBの在庫減少要因)、直近需要は3,491KBD(▲36KBD, 前週比0.3MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,142KBD, 過去5年最高 4,278KBD, 過去5年最低 3,969KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲16.6%と大幅な悪化、また前週比▲1.0%(例年▲1.8%)と減少している。新型インフルエンザ問題もあって、輸送需要は明確に減少している。但し夏場にインフルエンザ問題は終息すると見られることからこの需要減少は一時的なものに留まろう。全体のバランスでは前週比▲0MBの+2.4MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.4MB)となるところであるが、+0.9MBの在庫増加となった。総在庫は147MB(+0.9MB, 過去5年平均 109.8MB, 過去5年最高 118.8MB, 過去5年最低 102.3MB)となり、過去5年最高レベル118.8MBを大きく上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加を始めるのだが、既に高い水準まで在庫が積み上がっており、むしろ在庫圧縮をせねばならない状態であるにも関わらず、在庫増加に歯止めが掛からない。これはドライブシーズンであることからガソリンのFSCを高く維持するオペレーションがULSD、ディスティレート在庫の水準を高止まりさせているようだ。よって更に稼働率を引き下げにくい環境になっておりしばらくは、ディスティレート価格の下押し材料となろう。製品毎の在庫の内訳はULSDが87.1MB(+1.5MB)、ディーゼルが20.7MB(▲2.4MB)、ヒーティングオイルが39.6MB(+7.4MB)。FSCは42.2日(+0.7日)となった。これは過去5年の最高水準である28.2日をはるかに上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としては引き続きベアな内容であった。