統計速報(2009年6月3日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ベア、ガソリンブル、ディスティレートベアな内容であった。原油稼働率の大幅改善はあったが、輸入量の大幅な増加もあって略FSCは先週と同じ水準となった。一方ガソリンは今週に関しては需要が大幅に減少しており、来週以降の需要動向に注目する必要があることを示唆している。ディスティレートは在庫水準の高さと需要の不冴えから総じてベアな内容のままである。今後は需要が景気底打ちに伴い本当に回復するかどうかがポイントとなるが、足許の価格上昇ピッチが速すぎるため、一時夏場に息切れとなる可能性が高いと予想している。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に増加、稼働率が大幅に上昇したものの市場予想を下回る大幅な在庫増加に留まった。生産は5,358KBD(▲6KBD)と過去5年の平均水準を維持。輸入は9,646KBD(+868KBD)とP3とP5の輸入が大幅に増加。結果、総供給量は15,004KBD(+862KBD、前週比6.0MBの在庫増加要因)となった。製油所の稼働率はP2とP5の稼働率が大きく悪化しているが、規模の大きいP1,P3の稼働率が大幅に改善していることから、稼働率は全体で86.3%(+1.4%、前週比1.4MBの在庫減少要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+4.1%,▲0.7%,+1.9%,+1.8%,▲0.4%となっている。計算上在庫は前週比で+4.6MBの▲0.80MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲5.4MB)となるが、計算を下回る+2.9MBとなった。結果、在庫水準は366.0MB(+2.9MB)となった。在庫増加はP3で特に顕著であった。在庫量の変化はP1から順に、+0.3MB, ▲0.6MB, +4.7MB, +0.2MB, ▲1.7MB となっている。FSCは24.0日(▲0.1日)と増加。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるオペレーションは継続していると見られるが、原油在庫の水準は引き続き例年よりも高い水準に張り付いている。今週はSPRは増減なし。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は29.9MB(▲0.8MB)と比較的まとまって減少しており、足許の景況感の回復と相俟ってイールドカーブのフラット化化に寄与すると見られる。統計としては市場予想比ベアな内容であった。

 ガソリン在庫は予想と裏腹に減少した。稼働率は改善したものの得率が大幅に悪化したため生産が減少、輸入も減少したことから、需要が前週比で大幅に減少したものの、在庫減少となった。生産は稼働率が改善し、得率が▲4.6%と悪化したことから8,797KBD(▲581KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。輸入は949KBD(▲56KBD)と小幅減少。結果、総供給は9,746KBD(▲637KBD、前週比4.5MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,746KBD(▲637KBD、前週比4.5MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,175KBD(+24.25KBD, 前週比0.2MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,308KBD, 過去5年最高 9,417KBD, 過去5年最低 9,226KBD)となった。新型インフルエンザ問題が下火になったことから、ドライブシーズン中でもあり需要が回復してきている。前年比ベースの需要の減少は引き続き▲1.8%とマイナスの状態が続いている。需要の前週比での変化率は+0.3%(例年+0.6%)となった。今後需要の増加が継続するか否かは、景気回復の初期段階における価格上昇に消費者がどれだけついてこれるかに拠ると見られるが、現在の経済環境は決して価格の高騰を容認できる環境にあるとはいえないため、価格がこのままの水準であれば需要は若干頭打ちとなる可能性が高いと考えている。以上を合計するとバランス上は在庫は▲4.6MBの▲5.2MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲0.5MB)となるが、計算よりも少ない▲0.2MBの在庫減少となった。在庫変化の内訳は、Conventional80.6MB(▲4.1MB)、Blending120.5MB(+2.9MB)となっている。この結果、FSCは22.1日(▲0.1日)と先週から低下し、過去5年の上限レンジを若干下回るレベルに落ち着いた。需要がこのまま堅調に推移するかどうかは繰り返しになるが今後の価格水準次第、ということになろう。統計としては若干ブルな内容であった。

 ディスティレート在庫は市場予想を上る在庫増加となった。生産は稼働率が改善し得率が▲0.3%と悪化したことから4,052KBD(+16KBD)と減少。生産の内訳はULSD3,134KBD(▲29KBD)、ディーゼルオイル561KBD(+45KBD)、ヒーティングオイル357KBD(▲0KBD)。尚、生産レベルは過去5年の平均水準を若干下回るレベル。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされている。輸入は208KBD(+5KBD)と横ばいで、過去5年レンジの下限での推移が継続している。この結果、総供給は4,260KBD(+21KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)となった。4週平均需要は4,260KBD(+21KBD、前週比0.1MBの在庫増加要因)、直近需要は3,589KBD(+2.25KBD, 前週比0.0MBの在庫減少要因。過去5年平均 4,098KBD, 過去5年最高 4,181KBD, 過去5年最低 3,990KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲13.4%と大幅な悪化が続いているが、前週比+0.1%(例年±0.0%)と著しい需要減少に底打ち感が出始めている。全体のバランスでは前週比+0.1MBの+0.4MBの在庫増加(先週の在庫増減は+0.2MB)となるところであるが、+1.7MBの在庫増加に留まった。総在庫は150MB(+1.7MB, 過去5年平均 112.7MB, 過去5年最高 120.4MB, 過去5年最低 105.7MB)となり、過去5年最高レベル120.4MBを大きく上回っている。この時期、ディスティレート在庫は増加を始めるのだが、既に高い水準まで在庫が積み上がっており在庫圧縮をせねばならない状態である。これはドライブシーズンであることからガソリンのFSCを高く維持するオペレーションを取らねばならず、結果的にULSD、ディスティレート在庫の水準を高止まりさせることとなっている。よって更に稼働率を引き下げにくい環境になっておりしばらくは、ディスティレート価格の下押し材料となることが予想される。製品毎の在庫の内訳はULSDが88.8MB(+7.3MB)、ディーゼルが20.5MB(+6.0MB)、ヒーティングオイルが40.8MB(▲1.7MB)。FSCは41.8日(+0.4日)となった。これは過去5年の最高水準である29.0日をはるかに上回るレベルであり、明らかに多すぎである。統計としては引き続きベアな内容であった。