統計速報(2009年7月8日発表分)

 今回の米在庫統計は原油ブル、石油製品ベアな内容であった。ここ数週間、原油に関して生産・輸入・製油所の稼働率調整は上手く行っていると見られ、過去5年レンジを維持している。しかし、今週の統計でポイントとなるのは、ディスティレート需要の著しい減少であろう(前年比▲20%を超える需要減少が観測されている)。年初に予想した、秋口にかけての景気悪化(二番底付け)の動きが現実のものとなりつつあるようである(実態経済、消費は思った程回復していない)。詳しく見てみよう。
 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少、稼働率が略横ばいであったことから先週に続き大幅な在庫減少となった。生産は5,171KBD(+8KBD)と過去5年の略下限での推移となっている。輸入は9,224KBD(▲139KBD)と先週と打って変わって東側での減少が顕著である。輸入は引き続き過去5年の最低水準よりも低いレベルであり、米国原油需要は引き続き低迷している。結果、総供給量は14,395KBD(▲131KBD、前週比0.9MBの在庫減少要因)となった。製油所の稼働率はP1、P5で改善したがその他の地区では低下しており、稼働率は全体で86.8%(▲0.2%、前週比0.2MBの在庫増加要因)。地区ごとの稼働率の変化はP1から順に、+0.4%,▲0.6%,▲2.2%,▲5.3%,+6.3%となっている。計算上在庫は前週比で▲0.7MBの▲4.35MBの在庫減少(先週の在庫増減は▲3.7MB)となるが、若干計算よりも在庫の減少幅は小さく▲2.9MBとなった。結果、在庫水準は347.3MB(▲2.9MB)となった。在庫は西側地区で増加、東側地区で大幅に減少している。在庫量の変化はP1から順に、+0.4MB, +0.9MB, ▲2.1MB, ▲0.1MB, ▲2.1MB となっている。FSCは22.6日(▲0.1日)と悪化。石油製品の在庫水準をFSCベースで過去5年のレンジに収めるオペレーションは継続しており、5年レンジの上限での推移が続いている。今週はSPRは変わらず。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は30.2MB(+1.6MB)と大幅に増加、イールドカーブコンタンゴ化に十分寄与するものと見られる。統計としては市場予想比ニュートラル、統計の内容自体若干ブルな内容であった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫増加となった。得率が改善が稼働率の低下を相殺、輸入が大幅に増加、需要は横ばいであったことから大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し、得率が+0.2%と改善したことから9,254KBD(+13KBD)となった。総じてFSCを過去5年のレンジ内に留めるオペレーションを継続させている。輸入は1,207KBD(+228KBD)と大幅に増加し、過去5年平均程度まで回復した。結果、総供給は10,461KBD(+241KBD、前週比1.7MBの在庫増加要因)となった。需要は4週平均ベースで10,461KBD(+241KBD、前週比1.7MBの在庫増加要因)、直近需要ベースで9,191KBD(+22KBD, 前週比0.2MBの在庫減少要因。過去5年平均 9,413KBD, 過去5年最高 9,553KBD, 過去5年最低 9,253KBD)となった。需要の前年比での減少率は小幅な水準に留まっており、ドライブシーズン中でもあり需要は比較的堅調な推移を続けている。前年比ベースの需要の減少は▲1.6%とマイナスの状態、需要の前週比での変化率は+0.2%(例年+0.4%)と例年並となっている。7月上旬に発表された雇用統計の悪化を受け、ガソリン需要は徐々に頭打ちとなる可能性が高いと考えている。、価格がこのままの水準であれば需要は夏場のピークを境に減少することになるだろう。以上を合計するとバランス上は在庫は+1.5MBの+3.9MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.3MB)となるが、計算を下回る+1.9MBの在庫増加となった。在庫変化の内訳は、Conventional84.7MB(+9.0MB)、Blending126.7MB(+6.5MB)となっている。この結果、FSCは23.2日(+0.2日)と先週から上昇しているが、引き続き過去5年の上限レンジ程度での推移となっている。需要がこのまま堅調に推移するかどうかは今後発表される経済統計の内容によることとなろう。統計としてはFSCの上昇もあって、先週に続きベアな内容であった。

 ディスティレート在庫は大幅な在庫増加となった。生産は稼働率が悪化し得率が▲0.9%と悪化したことから4,030KBD(▲154KBD)と減少。生産の内訳はULSD2,980KBD(▲80KBD)、ディーゼルオイル559KBD(▲29KBD)、ヒーティングオイル491KBD(▲45KBD)。尚、生産レベルは過去5年の最低水準近辺。在庫の著しい積み上がりを受け、生産調整を余儀なくされているが、今週は得率の調整で生産が減少している。輸入は221KBD(+56KBD)と小幅増加し、過去5年の平均水準程度と、引き続き輸入の必要がないことを示している。この結果、総供給は4,251KBD(▲98KBD、前週比0.7MBの在庫減少要因)となった。4週平均需要は4,251KBD(▲98KBD、前週比0.7MBの在庫減少要因)、直近需要は3,266KBD(▲133.25KBD, 前週比0.9MBの在庫増加要因。過去5年平均 4,072KBD, 過去5年最高 4,142KBD, 過去5年最低 3,937KBD)と、4週平均ベース需要は前年比▲20.5%と先週から減少幅を拡大した。前週比ベースでも▲3.9%(例年+0.3%)と明らかに需要に減速感が出てきている。全体のバランスでは前週比+0.2MBの+3.1MBの在庫増加(先週の在庫増減は+2.9MB)となるところであるが、+3.7MBの在庫増加となった。総在庫は159MB(+3.7MB, 過去5年平均 119.4MB, 過去5年最高 127.3MB, 過去5年最低 113.2MB)となり、過去5年最高レベル127.3MBを遥かに上回っている。世界的にディーゼルオイルの在庫水準は高く輸送需要が減少しているといってよかろう。当面は、原油価格が上昇する以外にディスティレートの買い材料は存在しないと言っても言い過ぎではないが、7月の米雇用統計以降原油価格は調整色を強めており、ファンダメンタルズの弱いディスティレートは下落する可能性が高い。製品毎の在庫の内訳はULSDが92.2MB(+8.9MB)、ディーゼルが21.2MB(+3.4MB)、ヒーティングオイルが45.3MB(+13.9MB)。FSCは48.6日(+3.0日)となった。これは過去5年の最高水準である31.1日をはるかに上回るレベルであり、多過ぎであることは、皆の知るところであろう。統計としては明確にベアな内容であった。