監獄実験

(商品市況概況)
「調整」
 昨日の商品価格は概ね下落している。今まで大きくクローズアップされていなかったが、先進国、欧米の国債の格付け引き下げ観測が台頭、各国の財政収支悪化に伴う金利上昇懸念で株価が下落、合わせて商品価格も下落することとなった。一昨日日本の国債の格付けが引き上げ(円建ては引き上げ、ドル建ては引き下げ)られたが、今度は英国債の見通しがネガティブに引き下げられたことが米国債の格付け引き下げの観測を呼んだ形である。但し実際のところ、新興国ではなく先進国、特に日・英・米の国債がデフォルトを起こす可能性は低いと予想され、昨日に関してはとりあえず素直に格下げ報道に反応した格好だ。
 目先の商品市場の注目材料とすると、昨年から続いている米GMの処理問題が挙げられるが、本日の日経新聞によれば9割の債権者の合意を得るのは困難であり、Chapter11の申請は避けられない、との見方が大勢を占めつつあるようだ。実際にChapter11が申請された場合には影響は大きいと見られるが、市場はある程度時間をかけて本件を織り込んできている経緯もあり、取り返しのつかない深刻な事態は回避されるのではないかと見ている。いずれにしてもGMの債務を米国政府が保証(支援)しきれるかどうかがポイントとなろう。そういった中での国債格下げの可能性であるので、インパクトが大きかったようだ。

(経済関連ニュース)
・Q109台湾GDP 前年比▲10.24%(前期改定▲8.61%)、市場予想▲9.26%。
・米週間新規失業保険申請者数 守秘▲12千人の631千人(前週改定643千人(速報比▲4千人))、市場予想625千人。
・4月米景気先行指数 前月比+1.0%(前月改定▲0.2%(速報比+0.1%))、市場予想+0.8%。
・5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 ▲22.6(前月改定▲24.4)、市場予想▲18。
・与謝野財務大臣「為替介入は現時点では想定していない」

・ドルは対ユーロで続落。米財政赤字の拡大懸念でドルが売られた。ドルは対円でも大幅に続落している。
日本株は続伸。資源価格の上昇を受けて資源関連株が買われた。米株は下落。FOMCで景気後退が更に深くなる可能性があることを示したことが嫌気された。

非鉄金属関連ニュース)
・NY金は大幅に続伸。米財政悪化への懸念と株価の下落で安全資産物色の流れが加速した。この結果、3月20日の高値である9767ドルをトライする動きとなった。このコラムでも何回か説明しているが、現時点では金は株と逆相関の関係にあり、株価が上昇(下落)する局面では売り(買い)が入り易い。但し過剰な質への逃避への動きが終了した後に、ドルユーロとの従来の関係が回復したとすると800ドル程度までの下落はあってもおかしくない。但しQ209の間は金価格の急落は想定していない。昨日の引けは 951.20(+13.8)。
 銀価格も金の上昇に連れ高となった。昨日の引けは 1,443.50(+16.5)。

・NYプラチナ価格は続伸。ドル安の進行と金価格の上昇が材料となった。但しGM問題のリミットが近づく中、大幅な上昇にはなっていない。しかしながらアジア地区の宝飾品需要が旺盛であることも指摘されており、1,100ドルを下値に堅調な推移が続いている。昨日の引けは1,154.7(+9.3)。
 パラジウムは小幅下落。昨日の引けは235.5(▲0.35)。

・電線工業会 4月銅電線出荷速報 前年比▲26.3%の52,200Mt。

(非鉄金属)
 昨日の銅価格は下落した。LME在庫の大幅な減少が継続しているが、株価の下落が端的に嫌気された。ここに来て格付け機関国債格下げの動きが見られているが、財政悪化に伴う追加景気対策の余地減少等が商品市場にも影響を与えているようだ。また、GM問題のリミットが近づく中、景気回復への期待を前取りする形で上昇していた相場が一旦調整を余儀なくされている。ファンダメンタルズについては先々コンセントレートが継続的に不足する可能性が高い環境に変りはなく、各国政府の追加経済対策への期待や中国政府による市中在庫買い上げへの期待が高まっていることや相次ぐ景気対策の発表に伴い、市場参加者のセンチメントも好転しており価格は底を打った可能性が高い。但し、景気が回復しているわけではないこともあって、上値は限定されよう。目先は200日移動平均線を挟む攻防になると考える。この水準が維持できれば5,000ドルが視野に入ることになると考える。但し繰り返しになるが、現時点において5,000ドルを更に上回るほどの強い材料は存在しない。LME在庫は▲5,400Mt減少、(FSCは71.3日)、(キャンセルワラント率は15.4%)。売買高は10,809枚(※現時点で確認できる前日の3Mの出来高)。イールドカーブは期近が下落し、ベアスティープニングしている。C-3(Cash vs 3M Fwd)は18ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは4,470.00(▲170:18C)。
 昨日の亜鉛価格は下落した。LME在庫の減少は続いているが、銅とストーリー展開は同じく、景気対策の息切れや株価の下落が材料となった。また中国の4月の粗鋼生産が前月比マイナス(▲172KMt)になっていることも地合いも悪化させているようだ。しかし当面は1,400ドルを大きく下回る材料は見当たらない。需給はイールドカーブが示すようにタイトではなく、生産調整の進捗の効果もあって価格の行き過ぎた下落が修正される形で上昇していたのだが、今度は上げピッチが早かったことから下値を固める動きになっていると言える。LME在庫は▲300Mt減少、FSCは10.7日(キャンセルワラント率は2.0%)。売買高は4,476枚。イールドカーブは期近の下げ幅が大きく、ベアスティープニングしている。C-3は27ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは1,443.00(▲75:26.5C)。
 昨日の鉛価格は下落した。LME'在庫の小幅減少はあったが、株価の下落が地合いを悪化させた。株が調整する中GM問題の解決があと10日に迫っていることも調整圧力を強めたようだ。当面は4月16日の高値である1,570が上値として、200日移動平均線が下値として意識されよう。中国の貿易統計を見るに、国内の環境基準に配慮して輸入が増加しており、鉛価格の下支え要因となっている。尚、大手生産者の生産再開やそもそも景気回復に至っていないことから、上値は限られるとの見方は変更していない。LME在庫は▲75Mt減少、(FSCは3.3日、キャンセルワラント率は0.3%。)。売買高は2,423枚。イールドカーブは期近の下げ幅が大きくベアスティープニング。C-3は8ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは1,391.00(▲72:7.5C)。
 昨日のアルミ価格は下落した。LME在庫が大幅に増加したことや株の下落、GM問題の期限が後10日を切ったことなどから、一旦手仕舞い売りが入った模様。この結果長らく維持してきた50日移動平均線を2ヶ月ぶりに下抜けしてしまった。今後は一時の景気回復先取りで株価が上昇する中、上昇余地を探る展開となっていたが、FOMCでの経済の先行き見通し下方修正を受けて一旦調整に押されると見ているが、コストベースで見た場合の限界レベル(弊社の2009年見通しは1,358ドル〜1,454ドル)を固める動きになると考えている。また、コストベースとして一般に意識されている1,750ドルまでの価格修正があってもおかしくない状況。LME在庫は+34,950Mt増加、(FSCは41.1日)。(キャンセルワラント率は1.1%)。売買高は15,139枚。イールドカーブは期近の下げ幅が大きくベアスティープニングしている。C-3は35ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは1,450.00(▲43:35C)。
 昨日のニッケル価格は下落した。株の下落とLME在庫の減少が一旦止まったことが材料視された。結果、30日移動平均線でサポートされて引けている。このコラムでもコメントしているが、ニッケルの主要需要であるステンレス需要の回復が見られておらず、コストベース(2009年のニッケルの限界生産コスト予想は7,289〜9,729ドル)を下回って下落するのは難しいと考えている一方で上値も追いにくいと見ている。LME在庫は+30Mt増加、(FSCは29.4日)、キャンセルワラント率は4.0%。売買高は1,352枚。イールドカーブは期近と期先の下げ幅が大きく、イールドカーブは期近の下げ幅が比較的大きく、ベアスティープニングしている。C-3は78ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは12,125.00(▲545:78C)。
 昨日の錫価格は下落した。LME在庫がシンガポール・マレーシアで大幅に増加したことから取引序盤から地合いは悪く、その後の株下落を受けて200日移動平均線を割り込むこととなった。しかし需給は依然としてタイトであり、バックが継続している。LME在庫は+245Mt増加、(FSCは13.6日)、P596は5.12%。売買高は196枚。イールドカーブはパラレルに低下している。C-3は195ドルバックとバック幅を拡大した。昨日の引けは13,300.00(▲400:195B)。


(エネルギー)
 昨日のNY原油は下落した。一昨日発表されたFOMC議事録で、米経済の先行きに悲観的な見方が示されたことを受けて株が大幅に下落したことが材料視された。但しチャート上は10日移動平均線を割り込まず、比較的下げ幅は限定されている。イールドカーブは期近の下げ幅が大きく、ベアスティープニングしている。直近限月の騰落率は▲1.6%。昨日の引けは61.05(▲.99)。 Brentも上昇。イールドカーブは略パラレルに低下している。直近限月の騰落率は▲1.1%。昨日の引けは59.93(▲.66)。 WTI/Brentはポジティブスプレッドは縮小。
 石油製品も下落。RBOBは米株の続落を嫌気してNY時間に大幅に水準を切り下げたが、10日移動平均線でサポートされたこともあって引けにかけては下げ幅を削る動きとなった。イールドカーブは期近の下げ幅が大きいが、概ねパラレルに低下している。直近限月の騰落率は▲0.5%。昨日の引けは179.97(▲.98)。 ヒーティングオイルも下落。同様に原油の下落が嫌気されたものの、10日移動平均線のサポートを確認後、下げ幅を削る動きとなった。イールドカーブは期近の下げ幅が大きくベアスティープニング。直近限月の騰落率は▲0.8%。昨日の引けは152.94(▲1.17)。 ICEガスオイルは上昇。イールドカーブは期近の下げが大きくブルフラットニング。直近限月の騰落率は▲1.0%。昨日の引けは476.75(▲4.75)。


(ひとりごと)
昨日、入札状況を見たらまだ100円だった。
テレビだともっと高い値段で売れていたのに...
まぁ、いいや。


さて。


皆さん、スタンフォード大学の監獄実験をご存知だろうか。
この実験はスタンフォード大学で実際に行われた実験で、大学構内に模擬刑務所を設置し
囚人役と監守役に別れた被験者が、2週間共同で生活する、というものである
実験の趣旨は、「人は与えられた地位や肩書きによって行動が支配されてしまう」ことを実証しようと言うものであったのだが
余りにも危険な状態に被験者が陥ってしまったため、2週間の予定が半分の6日で終了した、ちおういわくつきの実験である。
(詳細はこちら↓)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E7%9B%A3%E7%8D%84%E5%AE%9F%E9%A8%93

読んでいると「本当にそんなことが起こり得るのか?」と思ってしまうが
実際にそういったことが起こり、以降、この類の実験は行われていないとのこと。

うーん。

確かに、地位や肩書きを与えられると人は行動が変るような気がする。
特に思うのが、相撲。
横綱になったとたん、あまり負けなくなるんですよね。
それを八百長だ、という人がいるがそうではなくてやはり地位や肩書きが実際に横綱を強くしてるんでしょう。
それだし、「横綱は強いもの」という既成概念があるから、横綱に昇進すると実際に暗示がかかって強くなるんじゃないだろうか。


足許、景気が回復していない。
企業の努力だけでは、なんともしがたい状態になっている。
となると、頼れるのは政治家だ。
しかしながら、この数十年「政治家主導で日本の構造は変えられない」「官僚支配が変らなければ景気は回復しない」
という、既成概念が頭に刷り込まれてしまったのではなかろうか?
もちろん、個人も企業も政治家も官僚も、皆一緒になって頑張らなければ上手くいないとは思うのだが
上の実験と同じではないが、「景気が良くなる、日本が良くなる」と信じることがまずは大切なのかも知れない。

え?違いますか、そうですか。