続・飛行機に乗るとツイてない-その5

【商品市況概況】
ギリシャ支援策発動」
 昨日の商品価格は上昇した。ギリシャEUIMFに対し、支援策の発動を要請したためである。これに伴い先週から下落が続いていた商品には買い戻しが入り、穀物等、一部の上昇していた商品には逆にポジション解消の売りが入り下落している。先々週末のGS提訴の問題を受け、殆どの投機筋はロング・ショートポジションとも解消売りを行っている(穀物は割安であったこと、中国の輸入増加観測等で一時的に投機資金の受け皿になっていた可能性はある)。これはCFTCのデータにおいて、ロング・ショートともポジションが減少していることからも明らかだ。昨晩はこの動きの逆が起きた訳だ。
 ギリシャ問題は初めて具体的に一歩踏み出したことになる。その一方で、今回IMFに支援を要請した、ということは同域内の問題を域内で解決できないということを意味し、ユーロ自体の存続、という大きな問題を市場に投げかける結果となった。このコラムで主張している「ポストギリシャEUの枠組み構築」が大きな課題となるだろう。

 先進国の中で米国の景気回復が顕著であることは明らかであり、バーナンキ議長の発言を受けて「一歩後退」していた夏〜秋の米国の利上げ観測が再度浮上してくることになる。中国の金融引き締めの可能性は高く、やはり商品価格はさらなる高値を狙うには難しい環境になってきたと言えるだろう。ただし、金融引き締めに伴う商品相場の下落は、ファンダメンタルズが改善してきている以上、一時的なものに留まると考えておいた方が良いだろう。
 相場にネガティブな要因を上げるとすると、ギリシャ問題とかぶるが各国の財政不安が挙げられる。政府の信用力の低下が商業取引を含む取引量の低下をもたらし、株安や金利上昇を映じて景気に極めてマイナスのインパクトを与えることは、ギリシャ問題で既に経験済みである。わが国もフィッチに「ネガティブウォッチ」されている状態であり、欧州の火事は対岸の火事ではない。



【経済関連ニュース】
ギリシャ、450億ユーロの救済策の発動を要請。EUIMFに。
・4月独IFO景況感指数 101.6(前月改定98.2(速報比+0.1))。
G20共同声明、「緊急景気刺激策の解除に向けた、信頼性のある出口戦略を求めるべき。銀行資本規制を今年の年末までに確立し、2012年末までに導入。」
・2月ユーロ圏鉱業受注 前月比+1.5%(前月改定▲1.6%)。
・3月米耐久財受注 前月比+2.8%(前月改定+1.7%(速報比+0.8%))。
・3月米新築住宅販売 前月比+27.0%の41.1万戸(前月改定32.4万戸(速報比+1.6万戸))。
・英フィッチ・レーティングス「日本国債の自国通貨建て債務格付け、AA-に下押し圧力がかかる可能性がある。」


【為替(FX)・株】
NY Dow  :11,204.28(+69.99)
S&P500   :1,217.28(+8.61)
NIKKEI225 :10,914.46(▲34.63)
JPY/USD :93.97(+0.48)
USD/EUR :1.338(+0.0089)


・ドルは対ユーロで下落した。ギリシャ政府がIMF/EUに対して久作作の発動を要請したことから、投機筋等の買い戻しを誘った。しかし、IMFに支援を要請せざるを得なくなるなど、「ユーロシステム」全体の維持が可能であるかどうか、問うことに対する疑問も残り戻り幅は限定された。実際ユーロがなくなることはないと思うが、他国の救済負担が重くなる場合、ユーロ圏も盟主、ドイツがユーロを離脱するという可能背もゼロではなくなってきた。円は殆どの通貨に対して下落している。
日本株は続落。ギリシャ問題等、好材料に乏しい中弱トレンドの中小幅の続落。米株は上昇。米国株は上昇。夜間発表された住宅関連統計が50年来の水準になったことが材料となった。企業決算の好調が続いていることも材料となった。



穀物市場サマリー】
Cbot Soybean :1,000.00(▲4.25)
Cbot Wheat :493.25(▲5.25)
Cbot Corn :353.00(▲9.25)
CSCE Sugar :15.66(▲0.41)

・大豆価格は大幅に下落した。ギリシャ支援策の発動に伴いドル安が進行、多くの商品が買い戻される中での大幅な下落であった。これは他の穀物にも共通して言えることであるが、年初からの豊作予想を受けて下落、その後中国の需要の増加観測や他のコモディティと比較した場合の相対的な割安感から買われていたが、そのアンワインドが起きたものと考えている(そうでなければ、ギリシャ支援策発動直後から急落した意味が説明できない)。 先週のCFTC Non-Commercialポジションは、ロングが261,211(前週比 +9,865)、ショートが213,843(前週比 ▲19,877)となったことから、ネットで47,368(前週比 +29,742)となった。インデックスファンドのポジションは466,733(前週比 +7,874)となっている。

・トウモロコシ価格も大幅に下落。 先週のCFTC Non-Commercialポジションは、ロングが119,947(前週比 +13,894)、ショートが63,655(前週比 ▲13,170)となったことから、ネットで56,292(前週比 +27,064)となった。インデックスファンドのポジションは175,098(前週比 +2,417)となっている。

・小麦価格も下落。 先週のCFTC Non-Commercialポジションは、ロングが75,068(前週比 ▲1,656)、ショートが119,474(前週比 ▲7,905)となったことから、ネットで▲44,406(前週比 +6,249)となった。インデックスファンドのポジションは224,725(前週比 +2,611)となっている。


非鉄金属・貴金属】
Comex Gold :1,153.10(+10.8)
Nymex Platinum :1,740.2(▲2.5)
Baltic Dry Inex :3,013.00(+7)
Iron Ore :184.8(+0.1)


・NY金は上昇した。ギリシャ支援策の発動を受けてドルが下落したことが材料となった。金は短期的には先進国の中で最も早いと考えられる米国の利上の影響で一旦調整すると見ているが、結局1,100ドル近辺ではETF等を通じた投機の買い意欲も旺盛であり、各国中央銀行が今度は「ユーロの信認低下懸念」を受けて金を準備として選好する可能性があることからやはり強いパフォーマンスを維持することになると考えている。引き続き、ターゲットは1,400ドルで変わらず。昨日の引けは(東京時間0:00価格) 1,153.10(+10.8)。

 銀価格は上昇した。金と同様の相場展開で。昨日の引け(東京時間0:00価格)は 1,819.20(+18.3)。

 先週のCFTCポジション報告によるNon-Commercialポジションは、金はロングが251,244(前週比 ▲11,355)、ショートが40,593(前週比 ▲1,264)となったことから、ネットで210,651(前週比 ▲10,091)となった。銀はロングが46,960(前週比 ▲11,355)、ショートが8,098(前週比 ▲1,264)となったことから、ネットで21,052(前週比 ▲4,710)となった。




・NYプラチナ価格は下落した。アジア〜欧州のかけて軟調な推移となり、10日移動平均線のサポートラインとの乖離を埋める動きとなっていたが、ギリシャ支援策の発動を受けて買い戻され、下げ幅を削った。今後は、自動車向け触媒需要の回復期待、生産者サイドの生産障害(特に南アフリカは電力事情を背景に回復は緩慢)、の強弱材料が混在するが、総じて需給は供給不足の状態が続くとみられることから上昇すると考えている。また、ETFを通じた資金の流入が相場を押し上げるだろう。現に、年初までは比較的維持されてきたユーロとの相関性であるが、大幅に乖離しており、もし従来通り回帰直線が使用可能であれば、1ユーロ1.3ドル程度でなければ説明がつかない水準まで上昇している。ターゲットは1,800ドル。価格の下振れリスクは金融政策急速な変更の可能性と、スクラップの増加であるが、景気悪化に伴う車の使用年限の長期化を材料に、十分な回収品がマーケットに出てくるには時間がかかると予想され、おそらく5〜7年後には大きな規模を締めることになるだろう。昨日の引け(東京時間0:00)は1,740.2(▲2.5)。

 パラジウムは下落した。プラチナと同様、自動車向け需要の増加観測やETF導入に伴うマネーフローの変化から大幅な上昇となっている。昨日の引け(東京時間0:00)は563.2(▲1.9)。

 先週のCFTCポジション報告によるNon-Commercialポジションは、プラチナはロングが25,017(前週比 ▲2,997)、ショートが2,070(前週比 ▲443)となったことから、ネットで22,947(前週比 ▲2,554)となった。パラジウムはロングが50,461(前週比 ▲2,997)、ショートが29,547(前週比 ▲443)となったことから、ネットで22,265(前週比 +1,773)となった。



Copper 3M :7,750.00(+60:36C)
 昨日の銅価格は上昇した。ギリシャIMFEUに対し救済策の発動を要請したことから財政危機問題の解決に一歩近づいたと判断されたことが材料となった。しかし足元、8,000ドルが心理的な上値として意識されていることや、LME在庫の水準が高止まりしていることが嫌気され上値は重かった。今週は中国の貿易統計が発表され、精錬銅・粗銅とも輸入量が増加、昨年過去最高を記録した6月のレベルに迫る勢いである。こうした国内景気の過熱に対応するため中国は金融引き締めに動く公算であり、短期的に銅価格は下値余地を探る動きになると考えている。LME在庫は+25Mt増加、(FSCは10.3日)、(キャンセルワラント率は4.4%)。売買高は12,120枚。イールドカーブは期近の上げ幅が大きく、ブルスティープニング。C-3(Cash vs 3M Fwd)は36ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは7,750.00(+60:36C)。
 3月の中国の銅関連品輸入は1,250.53(前月比+182.38, 前年比+160.07)、輸出は2.13(前月比▲0.11, 前年比+1.62)となっている(単位はいずれもKMt)。
 先週のCFTCポジション報告によるNon-Commercialポジションは、銅はロングが50,461(前週比 ▲2,997)、ショートが29,547(前週比 ▲443)となったことから、ネットで20,914(前週比 ▲2,554)となった。
Zinc 3M   :2,405.00(▲13:34C)
 昨日の亜鉛価格は下落した。軟調な推移となっていたが、ギリシャ問題を背景にユーロが買い戻されたことから買い戻しが入り下げ幅を削った。足元、LME在庫、上海在庫の積み上がりもあって地合いは悪い。中国の金融引き締めの効果もあり当面は下値余地を探る動きになると考えている。しかし、世界の粗鋼生産は増加を続けており今年年末から来年にかけて上昇するとの見通しを変更するものではない。LME在庫は▲825Mt減少、FSCは18.4日(キャンセルワラント率は2.0%)。売買高は4,805枚。イールドカーブは略パラレルに低下している。C-3は34ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは2,405.00(▲13:34C)。
 3月の中国の亜鉛輸入は31.0(前月比 +9.77, 前年比 ▲99.7)、輸出は5.46(前月比 ▲0.42, 前年比 +4.67)となっている(単位はいずれもKMt)。

Lead 3M   :2,300.00(▲8:27.5C)
 昨日の鉛価格は下落した。アジア時間から軟調な推移となってたが、ギリシャEU/IMFに対して支援策の発動を要請したことから買い戻しが入り、引けにかけて下げ幅を削った。今後はLME在庫の積み上がり、冬場の終了に伴うバッテリー向け需要の減少といたマイナス材料を受けて下落すると考えている。また、今週発表された中国の貿易統計では、中国は国内生産の急回復によって、ほぼ2年ぶりに鉛の「輸出国」に復帰してた。こうした供給環境の変化も、鉛価格を下押しすることになるだろう。LME在庫は+625Mt増加、(FSCは8.0日、キャンセルワラント率は0.5%。)。売買高は3,082枚。イールドカーブは期先の下げ幅が大きく、ベアフラットニング。C-3は28ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは2,300.00(▲8:27.5C)。
 3月の中国の鉛輸入は3.66(前月比 +1.34, 前年比 ▲25.87)、輸出は4.09(前月比 +2.37, 前年比 +3.54)となっている(単位はいずれもKMt)。

Aluminum 3M :2,334.00(+14:31.5C)
 昨日のアルミ価格は上昇した。アジアから軟調な推移となっていたが、ギリシャEU/IMFへの支援策発動要請によってユーロが買い戻される中、原油価格も上昇、アルミも結果的に上昇することとなった。今後は、アルミの主要生産地区における中国、南アフリカ、欧州のエネルギーコスト上昇に伴う生産コストの上昇が、アルミの下値を堅くしよう。また、長期金利の上昇がイールドカーブコンタンゴに維持しており、在庫のファイナンス関連取引が継続すると見られ、実質使用可能在庫の減少も相場の押し上げ材料になると考えている。さらに、米国の景気回復が鮮明になりつつあることから、北米での在庫積み増しの動きが予想されることも相場を堅調にしよう。LME在庫は▲5,900Mt減少、(FSCは45.4日)。(キャンセルワラント率は6.2%)。売買高は15,537枚。イールドカーブは期近の上げ幅が大きくブルフラットニングしている。C-3は32ドルコンタンゴコンタンゴ幅を縮小した。昨日の引けは2,334.00(+14:31.5C)。
 3月の中国のアルミ関連製品の輸入は795.92(前月比+182.23, 前年比+267.15)、輸出は42.28(前月比+14.1, 前年比+33.87)となっている(いずれも単位はKMt)。

Nickel 3M :27,050.00(▲45:61.5C)
 昨日のニッケル価格は下落した。他の非鉄金属と同様であるが、アジア〜欧州時間にかけて下落し、その後、ギリシャを材料にドルが下落したこと、米経済統計が好調であったことから買い戻された。今後についてはカナダ生産者の生産再開の遅れやステンレス需要(主に在庫の積み増し)の回復、さらに今週発表された中国の貿易統計におけるネット輸入量の大幅な増加を受け、引き続き高値での推移が続くことになるだろう。ただし同時に中国の金融引き締めや、2年ぶりの高値水準28,000ドルが結果的にシーリングとして意識されていることからう上値は重かろう。LME在庫は▲1,092Mt減少、(FSCは42.8日)、キャンセルワラント率は3.3%。売買高は1,835枚。イールドカーブは小幅低下している。C-3は62ドルコンタンゴコンタンゴ幅を拡大した。昨日の引けは27,050.00(▲45:61.5C)。
 3月の中国のニッケルの輸入は19.14(前月比 +6.9, 前年比 +6.52)、輸出は7.31(前月比 +4.49, 前年比 +6.7)となっている(いずれも単位はKMt)。

Tin 3M   :19,000.00(+100:70C)
 昨日の錫価格は上昇した。アジア〜欧州時間にかけて下落していたが、ギリシャの救済策発動を受けて買い戻された。今後は、LME在庫は年初をピークに減少に転じており(昨晩も減少量は大きい)、ファンダメンタルズが徐々に改善していることから高値での推移が続こう。LME在庫は▲835Mt減少、(FSCは21.6日)、キャンセルワラント率は6.12%。売買高は441枚。イールドカーブはパラレルに上昇している。C-3は70ドルコンタンゴと前日と変わらず。昨日の引けは19,000.00(+100:70C)。
 3月の中国の錫の輸入は1.83(前月比 ▲0.35, 前年比 ▲0.63)、輸出は0.0(前月比 ▲0.06, 前年比 ▲0.01)となっている(いずれも単位はKMt)。



【エネルギー関連ニュース】
WTI :85.12(+1.42)
Brent :87.25(+1.58)


 昨日のNY原油価格は上昇した。ギリシャEU/IMFに対する支援政策発動要請を受け、ギリシャ問題が解決に向けて一歩前進したと判断されたことから大幅な買い戻しとなった。今後は世界景気の回復を受けてじりじりと水準を上げる相場展開を予想している。一部のアナリストは90ドルがレンジの中心になる、と指摘するようになってきた。しかし、私は現在の経済環境(引き続き雇用情勢は良くない)では94ドルを超えて上昇するとは考えていない。ただし景気の回復や中長期金利の上昇を先取りする形でWTIの短期/長期スプレッドは拡大傾向にある(クッシング在庫の急速な積み上がりもこのスプレッド拡大を助長しているが)。さらなる価格上昇は、先進国の中で最も早いと考えられる米国が利上げをした後に、足元相関性が高まっている株価が現在の水準に維持されるか否かがまずポイントとなるだろう。イールドカーブは期近の上げ幅が大きくブルフラットニングしている。直近限月の騰落率は+1.6%。昨日の引けは85.12(+1.42)。
 Brentは上昇した。イールドカーブは期近の上げ幅が大きい。直近限月の騰落率は+1.8%。昨日の引けは87.25(+1.58)。
 WTI/Brentのスプレッドは-2.13のポジティブスプレッドとなっている。

 RBOBは上昇した。生産調整の影響でFSCは略過去5年のレンジに入るレベルまで回復しており、ドライブシーズンに向けて徐々に上げ基調を強めていたRBOBであるが、昨晩は原油価格がギリシャ問題を材料に大幅に上昇したことから連れ高となった。このコラムで随分昔(春前)に指摘したが、ファンダメンタルズの改善を受けてRBOBは当面堅調な推移となると考えている。イールドカーブは期近と期先の上げ幅が大きくベアフラットニングしている。直近限月の騰落率は+2.2%。昨日の引けは235.31(+5.29)。
 ヒーティングオイルは上昇した。イールドカーブは期先の上げ幅が大きい。直近限月の騰落率は+1.6%。昨日の引けは225.05(+3.55)。
 ICEガスオイルは上昇した。イールドカーブは期近の上げ幅が大きい。直近限月の騰落率は+1.8%。昨日の引けは718.50(+13.0)。"
 先週のCFTCポジション報告によるNon-Commercialポジションは、原油はロングが283,157(前週比 ▲12,139)、ショートが161,682(前週比 ▲20,250)となったことから、ネットで121,475(前週比 +8,111)となった。RBOBは、ロングが84,218(前週比 ▲5,768)、ショートが13,959(前週比 +598)となったことから、ネットで70,259(前週比 ▲6,366)となった。ヒーティングオイルは、ロングが60,154(前週比 ▲3,982)、ショートが24,820(前週比 ▲365)となったことから、ネットで35,334(前週比 ▲3,617)となった。天然ガスは、ロングが105,630(前週比 ▲2,309)、ショートが310,785(前週比 +7,534)となったことから、ネットで▲205,155(前週比 ▲9,843)となった。



【ひとりごと】
地図、いや路線図を見ていたのだが
関西空港から電車ないしはバスで神戸まで行くと1時間程度はかかる
しかし、私は見つけてしまった。



関西空港から神戸港に伸びるブルーの点線を



はッ!!これはッ!?



よくよく見てみると「水上高速船」と書いてある。
しかも。しかもですよ。



「所要時間15分」



と書いてあった。
このとき生まれて初めて神様って、いるんだなと思った。


9:40に到着、9:45の水上船に乗れば上手くすれば10時に神戸港に到着
港から15分ぐらいのところなので、一番初めのアポキャンセルは何とか免れそうだ。
と、半分安心、半分緊張のまま、まんじりともせず1時間近くを過ごした。


関西空港に到着。
理由は無いが、とにかく走らなければならない気がした。
こんなとき、手荷物を預けないでよかったと心から思う。
ダッシュで飛行機を飛び降り、全力で高速船出口のほうに。
普段は方向音痴の私であるが、運良く看板が出ていた為、間違えずに済んだ。
あのときのダッシュは、当時の世界一のベン・ジョンソンよりもはるかに早かった自信がある。
走りながら「水上船の時刻表」がはるかかなたに見える。



よくよく目を凝らすと「1時間に1本」
しか出ていない。
すなわち、



「9:45の高速船を逃すと、自動的に次は10:45になり、1つ目のアポは完全にだめになってしまう」



わけだ。
足が千切れ、心臓が破裂しそうであったがそんなことは言っていられない。
全力疾走。
恐らく生まれてからもっともダッシュした瞬間だったと思う。


怪獣映画を見ていて、怪獣が出てきて逃げ惑う人々の中に


「転ぶ人」


がいるが、たいてい見ている側は「こんなときに転ぶかよ」と思ったりするが、
ころびます。はい。


実際に転んだ。
激痛が走る。
遠く朝もやにかすむ高速船。
無事に乗り込む事が出来るのだろうか...
(続く)