株価と商品価格の相関

 よく「株価と商品価格」の相関についてコメントがされることが多いが、実際のところどの程度相関があるのだろうか?ここで先に私の結論を言うと、商品価格と新興国株価の間には明確な相関があり、平時においては両者の間には非常に高い相関が観察されることがわかっており、商品市場へ資金を投資する=エマージングマーケットに資金を投資する、と同じといってもいいかもしれない。

 2000年以降のデータを元に、LME銅価格と株価との相関を調べてみた。この時、先進国株式の代表選手であるDow平均と、新興国株の雄、インドSensexを指標として用い、LME銅価格は3M先渡し価格を用いた。
 結果、銅価格とDowの相関は0.75、Sensexとは0.96であった。このことはいろいろな説明ができると思う。新興国はこれからインフラ整備のために銅やアルミといった非鉄金属が必要なので、新興国株が上昇すると非鉄も買われるのだ、とか、私が指摘しているように投機家からすれば非鉄金属新興国株も同じである、という観点から資金を運用している人もいる、とか。正直現時点においてどちらかが正しい、という結論は出せないが、明らかに新興国株と非鉄金属は相関をしている、ということは動かしがたい事実であるといえる。ちなみにアルミニウムと株価の相関を調べてみたところ、Dowとは0.81、Sensexとは0.98であった。
 しかし2006年の夏はこの正の相関関係が崩れ、相関がネガティブになったときがある。これは記憶にも新しいが銅価格が著しく上昇して、素材価格の高騰を背景としたインフレ不安で株価が大きく調整したときである。つまり、常に非鉄金属新興国株は正の相関である、というわけではないのだ。そのときの市場環境がどのようになっているか、ということが重要なのである。このことは、たとえてみると、天気がいいと夏休みのディズニーランドの来場者数が増えるが、気温が30度を超えると逆に減少してしまう、ということに似ている。何事も「ほどほど」がよい、ということなのだろうか。

 今のところ世界経済は米国初のサブプライムローン問題で先行きが不透明になりつつある。そうなると、真っ先に影響を受けるのは流動性が低い市場であり、新興国株式市場や商品市場がこれに当たるといえる。よって今後の商品価格の上昇は株式市場の下落を誘発し、その下落が元で今度は商品価格が下落する可能性があることを意味しており、新興国株と商品市場の動きは細心の注意を払っておくべきであろう。