統計速報(8月8日分):遅くなりました...

 昨日の米在庫統計は先週回復していた製油所の稼働率が再び低下し、予想を上回るブルな統計であった。引き続きFSCベースで見た場合の製品在庫は依然として低く、株価が回復していることや労働賃金の上昇、足元の価格低下から石油製品の消費は下支えされると見られることから、中期的には価格が上昇するという見とおしに変更はない。では個別に少し詳しく見てみよう。
 原油は、稼働率が市場予想を裏切る大幅な低下となった。実にP2以外の地区での稼働率が軒並み低下するに至っている。にも関わらず、生産・輸入とも大幅な減少となった事から結果的に在庫水準は▲4.1MBの大幅減少となった。先週のコメントで障害やメンテナンスからP2以外が復帰した、とコメントしたが今週は全く逆の事が起きている。これに伴い漸く過去5年平均を上回る水準まで稼働率が改善していたのだが、再び下回る結果となった。稼働率の低下によってFSCは21.4日と先週から0.3日改善したが、良い種類の在庫増加とは言えまい。このままでは引き続き石油製品主導で原油価格が高止まる、という事が続く事になろう。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は19.3MB(▲1.48MB)と12週連続で減少しており、WTIのバック形状維持に貢献している。以前、このコラムで指摘したが、Cushing在庫の減少はWTIとBrentのネガティブスプレッド解消のための必要条件であるが、今の所期近と期先のWTIとBrentの価格不均衡は解消に至っている。"
 ガソリンは市場予想に反し、大幅な在庫減少となった。稼働率の低下と得率の低下に伴い生産が大きく減少したことから、輸入の増加、需要の減少はあったものの前週比▲1.7MBの大幅な在庫減少となった。生産は概ねP3とP5で減少している。要因は稼働率の低下と得率の低下である。一方で、P1のガソリン輸入が前週比+219KBDの大幅な増加(過去5年の最高水準)となったものの、供給サイドは前週比▲106KBDとなった。需要は直近ベースで9.58MBD(前週比▲87KBD)、4週平均ベースで9.66MB(前週比▲22KBD)となっており、直近ベースではとうとう過去5年の最高水準を下回ることとなった。これは先週の株式市場の混乱に伴い、消費者の買い手控えが起きたためと考えられる。引き続き4週平均ベースでは同じ時期の過去5年の最高水準を上回っていることから、消費は堅調であるといえる。以上よりFSCは21.0日と引き続き過去5年の最低水準22.4日にも満たない。ガソリンの得率57.5%は同じ週の過去5年の最高レベルであり、更に得率を引き上げる事は困難であると見られることや、ガソリン輸入が不安定であることから、ガソリン在庫の増加のためには原油在庫を取り崩しながら稼働率を増加させて生産を増やすしかないといえ、やはり需給がタイトな状態が続く事になろう。
ディスティレート在庫は予想を下回る在庫増加となった。稼働率の低下と得率の定価によって生産が先週から一転、減少に転じた事(前週比▲229KBD)、輸入も▲36KBDと減少に転じた事から総供給量が前週比▲265KBDと先々週の水準に逆戻りした。一方で需要は横ばいであった事から在庫水準は+0.9MBと、予想を下回る在庫増加に留まった。尚、4,110KBDという需要の水準は、同じ週の過去5年の最高レベルである4,073KBDを上回るレベルである。FSCも31.2日と前週比+0.1日と増加したものの5年平均の33.2日を下回っている状況が続いている。株式市場の混乱がガソリンと同様、消費の足かせになる可能性は高いが、再び製油所の稼働率が低下したことから、需給がタイトな状況が継続すると見られ価格の下支え要因となろう。