統計速報(2008年3月26日発表分)

 昨日の米在庫統計は市場予想比ブルな内容であったが、詳細に見るとニュートラル〜ベアな内容であった。ひとえに、前年比での石油製品需要は明確な減少が示されているためである。投機資金のせいだ、とか中国の需要が、といわれてきたが結局この数年間、米国の特にガソリン需要は総じて増加してきたがそれが減少に転じていることから、エネルギー価格は下落してもおかしくないと考えている。但しそうなっていないのは、もちろん新興国からの需要増加の影響もあるが、ドル安水準が維持されていることも無関係ではあるまい。詳しく見てみよう。

 原油は生産が横ばい、輸入が大幅に減少、稼働率が悪化したことから小幅な在庫増加となった(市場予想比では在庫増加幅は少ない)。これで在庫の増加は3週連続となった。生産は5,103KBD(+3KBD)と小幅増加。原油生産は非常に安定している。輸入はP3以西の地区全てで減少したことから全体で8,898KBD(前週比▲570KBD)となった。結果、総供給量は14,001KBD(前週比▲567KBD,▲4.0MBの在庫減少要因)となった。稼働率はP3, P5で前週比▲3.4%、▲4.0%と大幅に稼働率が低下した影響から、前週比▲1.6%と大幅に悪化。この時期は稼働率が回復し生産が増加するのが通例であるが、原油価格の高騰に伴う調達コストの上昇や石油製品需要の減少により、稼働率の改善が見られない。すでに過去5年の最低水準88.0%を大きく下回る82.2%まで低下してしまった。稼働率の悪化は改善は+1.7MBの在庫増加要因となる。供給量減少、処理量の増加で在庫は前週比で▲2.3MBの▲2.2MB(先週の在庫増加は+0.1MB)となるが、実際は在庫は前週比+0.1MBの311.8MB(過去5年平均レベル305.6MB)となった。在庫の増加率は例年は前週比+1.2%であるが、今週は横ばいであった。その数字だけを見ればブルな内容といえなくもないが、輸入減少に伴い供給が大幅に減少しているにも関わらずこの程度の在庫減少(むしろ増加)にとどまっていることから考えれば、やはりニュートラル〜ベアなないようであったといっても良かろう。FSCは在庫増加・処理量減少により前週比+0.4日の21.8日となった。略横ばいであった。過去5年の平均である20.4日を大きく上回っている。イールドカーブの形状に大きな影響を与えると考えられるCushing在庫は17.2MB(前週比▲289KB)となった。

 ガソリン在庫は予想を上回る在庫減少となった。稼働率の悪化に伴う生産の減少と需要の増加によるものである。生産は稼働率の悪化はあったものの得率が+0.2%と小幅改善したことから全体で8,539KBD(前週比▲139KBD)と大幅な減少となった。生産は緩やかに増加するタイミングであるが、今年に関して言えばこの数週間、如実に生産が減少しており、過去5年平均レベル(8,352KBD)まで徐々に生産の水準が切り下がってきた。輸入は前週比+62KBDの963KBDとなった。結果、総供給は9,502KBD(前週比▲77KBD、前週比で▲0.5MBの在庫減少要因)となった。需要は4週平均ベースで9,097KBD(前週比+18KBD、過去5年平均8,967KBD、▲0.1MBの在庫減少要因)、直近需要ベースで9,116KBD(前週比+45KBD)となった。この需要増加率(+0.2%)は例年(+0.3%)と略同じ増加率であるものの、前年比で見た場合の需要はこれで9週連続の前年比マイナスが続いており、米需要は明確に減速している状態であるが、季節性が壊れてしまういわゆる「危機的な需要減少」とはなっていない。以上を合計するとバランス上は在庫は前週比▲0.6MBの▲4.0MBの在庫減少(先週の減少+▲3.4MB)となるのだが、実際は▲3.3MBの在庫減少にとどまった。在庫増加の内訳は、RFGを除く全てのガソリンが減少している。この結果、FSCは25.2日と先週から▲0.4日悪化。過去5年の最高水準である24.6日を大きく上回る状態が続いており、ガソリンは引き続き需給がタイトではないといえ、前年比で見た場合の需要水準が市場のテーマとなる中、予想比ブルな内容ではあったが、原油と同様ニュートラル〜ベアな内容であったといえる。

 ディスティレート在庫も予想を大きく上回る在庫減少となった。稼働率の悪化を得率の改善で相殺したが、輸入が前週比大幅に減少したことから、需要の大幅な減少はあったものの市場予想を上回る在庫減少となった。生産は、稼働率が悪化したが、得率が+0.9%と大幅な改善となったことから3,858KBD(+47KBD)と小幅増加。製品生産の内訳はULSDを除く製品で生産が増加している。輸入は前週比▲52KBDの242KBDと大幅な減少となった。この結果、総供給は4,100KBD(前週比▲5KBD、在庫変動要因とならず)となった。4週平均需要は前週比▲0.1%の4,228KBD(前週比▲6KBD、在庫変動要因とならず)と、例年の▲1.5%を大きく上回る増加となった。ただしガソリン同様、前年比では8週連続の前年比大幅マイナスの状態が続いている。気温の低下などで昨年に比べれば需要の下支え材料があるにも関わらず、である。全体のバランスでは前週比変わらずの▲2.9MB(先週の在庫減少は▲2.9MB)となるところであるが、計算を大きく下回る▲2.1MBの在庫減少となった。但し事前の予想▲1.7MBを上回る在庫減少となった。総在庫は111.3MBとなり、過去5年平均レベルは維持している。在庫減少の内訳はULSDが▲1.1MB、ヒーティングオイルが▲1.3MBとなった(P1、P2地区での在庫減少が顕著)。FSCは26.3日(前週比▲0.5日)の大幅低下となった(過去5年の平均水準26.6日をとうとう下回る)。今回の統計もディスティレートは市場予想比ブルな内容であったが、前年比の需要を見た場合ではやはりニュートラル〜ベアな内容であったといえる。